発覚
そろそろ物語を進めないといつまでたっても話が終わらない……。少しでも進むよう頑張ります!
それではどうぞ!
こちらの世界へ来てから約半年たった。
あれから、アマーレンはだいたい2・3日に一度のペースで魔法を教えに来てくれている。
彼がこちらへ来る日はまる1日を使って修行をするので、そんなにマメに、そして長時間(それこそ、朝昼晩と共に食事をする程)こちらで過ごしてはアマーレンの仕事に支障をきたしてしまうのではないかと心配したところ、「前日のうちに大半を終わらせ、残りは帰ってからしている」との回答が返ってきた。
面と向かっては言われなかったが、アマーレンなりにこの森で1人暮らしをする僕を心配しているらしく、少しでも長い時間を一緒に過ごそうとしてくれているらしい。
彼のその想いに、嬉しくも少々むず痒く思う。
余談だが、料理中に材料を尖った石で捌いていたところ、それに衝撃を受けたアマーレンが王都へ一度帰り包丁を持ってきたのには驚いた。
曰く「いつか怪我をしそうで怖いし、なにより肉を切っている時など視覚的面で見ていられない」だそうだ。
ならばと、ついでにサバイバル用ナイフも要求してみたところ、次の修行日になかなか良い代物を革のホルスター付きで貰うことができたのには驚いた。
「今日の修行だが、まずは最初に光魔法と闇魔法の検査をやろうと思う。本来なら、皆子どもの頃に終わらせているものなんだが……」
「……受けたことない」
「だろうな」
これまでは、基礎魔法の土魔法から始まり、水、火、風、雷と順に修行してきた。
覚えてからは修行の一環として日常生活でも使うようにしていたので、今では基本的な魔法は意識しなくても使える程になっている。
(水魔法は魚を獲ったり飲み水を確保するのに使えるし、火魔法は料理の時に便利だ。風は洗濯で使えるだけでなく、狩りや獲物の解体にも応用できる。雷も狩りでは便利だな)
またまた余談だが、魔法の修行を数回した頃に「ハッキリとしたイメージさえあれば魔法は発動する」いうことに、ならば物は試しと家の修理を行ってみたところ、見事に成功したことはこの世界に来て一番の感動モノだった。今では雨漏りの心配をせずにすんでいる。
まあ、そんなことはどうでもいい。
この世界の生活は魔法に支えられていると、『私』の記憶で知っていたが、ここまで便利なモノだったとは……。これだけ利用しておいてなんだが、あまり魔法に頼りすぎるといざという時に魔法なしで生きられなくなりそうだと感じてしまった。
しかし、今はそれよりも残り2つの魔法のことだ。
この国では、子どもが魔法を使えるようになった頃に一度、光か闇の魔法の才能があるかどうか検査を受けなければならない決まりがある。だいたいの子どもは5から8歳で魔法を使えるようになるので、検査はそのぐらいの年にやるのだが、僕は今まで別の世界で暮らしてきたわけだし、魔法自体もここ半年で使えるようになったのだ。
よって、この世界の常識に少々当てはまらなくても仕方ないだろう。
「まあ、別に『何歳までに受けなければならない』なんて決まりはないからな。『検査をした』という事実が大事なわけで、今から受けても何も問題ないから安心しろ」
そう言って、彼は懐からピンポン玉サイズの透明の玉を取り出すとこちらへ投げて寄越した。
「検査用の水晶だ。それに魔力を流すと判定できるようになっている。水晶が白く染まれば光魔法の素質があり、黒く染まれば闇魔法。反応がなければ素質無し。希に、両方使える奴が現れるが、その場合は両方の色が水晶内で渦を巻いて示してくる」
「アレンはどっち?」
以前の話から、アマーレンが光か闇の魔法を使えるだろうことはわかっている。なんとなしに聞いてみると、彼は一拍の後に「両方」と小さな声で答えた。
「アレンって、魔導師って時点で優秀な人なんだろうなとは思ってたけど……」
ある程度の予想はしていたが、本当に当たるとは思わなかった。どちらか片方だけだったとしても、数でみれば片手に少し余る程度でかなり希少だといえるのに、両方ともなればその数は更に激減する。というか、『私』の記憶を足してみても2つ持ち(ドゥーソント)はアマーレンが初めてだ。
「俺のことはどうでもいい。それよりも――」
視線で「早くしろ」と急かしてくるので、僕は水晶を両手で包むように持った。
滝をイメージし、体に流れる魔力の川が手のひらから水晶という池に僕の体を離れて流れていく光景を思い浮かべる。
干上がった池(水晶)が水(魔力)で満タンになったところで、滝の頂上(手のひら)にダムを作ってから手を開いく。
「えッ!」
水晶の中には、白と黒の煙のようなモノが喧嘩することなく調和し渦を巻いていた。
その様子は、まるで2匹の蛇が力を合わせてこの狭い空間から外へ飛び出そうと必死に動き回っているようにも見える。
「両方、か」
その呟き声に目を向けると、アマーレンが僕の手の中をジッと見て何かを考え込んでいた。
(これって――)
この世界に来て最初の頃。今後の方針を決めるためにとこの世界のことを考えていた時のことを思い出す。
――調査で『使える』又は『可能性がある』とわかれば、国からの保護という名目で城内にある魔法宮(王宮努めの魔導師、魔術師が働いている場所)に連れて行かれ、専門の指導者がつけられる――
『城内へ強制居住』
そんな言葉が頭を横切った。
この地を離れることに異論はない。最初から、時がきたら王都へ行くつもりだったのだ。連れて行ってもらえるというなら願ったり叶ったりというものだろう。
しかし、問題は『魔法宮に連れていかれる』というところだ。魔法宮ということは、つまり『城の中』ということになる。
城内は国の王族が住んでいることから、出入りする人間は厳しく制限され、身元のハッキリとした者以外は近づくこともできない場所だ。
光魔法と闇魔法の関係で魔法宮に集められた者は、王宮に近づくことはなくとも一般人が城内に入るということで出入りを制限される。城の外に出られるのは親族に関する緊急時の際と、年に数回の里帰りの時くらいで、その時も護衛という名目で城内のことを漏らさないか監視が付く。
そんな状況で、目的である男の子たちを探し出し幸せを見届ける(状況によって手伝いをする)なんてことができるわけない。
(さて、どうするか)
必死に今後の対策に思考を巡らせていると、アマーレンの僕を呼ぶ声が聞こえて目を向ける。
「おまえも知っていると思うが、光魔法及び闇魔法の使える者、また使える可能性のある者は強制的に城へ集められ、専門の教育を受けることになっている。今現在をもって、おまえはまだ使えないものの、可能性のある者として城の方への移動が決定した」
淡々と、しかしハッキリと告げていきた彼に僕は黙って頷く。
「が、しかし、いきなりのことで戸惑いもあるだろう」
「え?」
「王都へは次に俺がこちらへ来た時に共に行くことにする」
「なんで……」と、そんな呟きが口から漏れた。
本来なら、そんな期間を設けず今すぐにでも連れて行くものだろう。しかし、アマーレンはほんの少しだが時間をくれるというのだ。
「なんで、そこまでしてくれるの?」
疑問に思い聞くと、彼は「さあな」と詳しいことは一切言わずに誤魔化すだけだった。
「それよりも、今日の修行を開始する」
アマーレンの言葉に、これ以上聞いても無駄だろうと溜息を付き意識を次へ入れ替える。
「今日は、今まで教えてきた魔法の復習をしようと思う。城へ行けば光と闇の魔法を中心とした修行をすることになるだろう。他の魔法を教えないこともないが、そこまで深くはやらん。なので、今日中に使えるようになった魔法の確認をしておこう」
「うん」
その言葉通り、今日1日は今まで教えてもらった魔法や、僕自身が考えて使えるようになった魔法を淀みなくスムーズに使えるかの確認をしただけで修行を終えた。
夕食、彼は帰り際に「3日後の朝、迎えにくる」と言い残してさっていった。
「腹、決めないとなぁ」
いくら城の中に行くのが嫌だからといって、逃げてしまってはここまで面倒をみてくれたアマーレンに悪い。
なにより、ピアスに彼の印がある限り逃げられないだろう。原因のピアスを捨てれば可能性があるだろうが、ソレを気にいっているという時点で捨てるという選択肢はない。
(まあ、ただで王都まで行けると思えば……)
男の子たち捜しについても、『私』が住まわせてもらっていた屋敷は彼らの別邸か何かだったらしく正確なことはわからないが、たぶん彼らはかなりの身分の子息だったはずだ。城にいる方が王都で地道に捜すよりも情報を集めやすく見つけやすいだろう。
(確か、名前はソーレインとルーナルクだったはず)
『私』は普段、彼らを「ソーレ」「ルーナ」と愛称で呼んでいたのでフルネームは少々曖昧だ。それに、彼らが名乗らなかったこともあり家名まではわからない。が、しかし名前がわかっているだけマシなのだろう。
貴族の子なら名前を出せば多少なりともわかることがあるかもしれない。
接触できるかは別として、見つけやすくなったと思えば、光と闇の可能性持ちだったのは逆にラッキーだったのかもしれないとさえ思えてくる。
3日後の移動のため、明日からはこの森を離れる用意をしようと今後の予定を立ててから布団に入った。
感想、指摘いつでも受け付けております。
「ここおかしいんじゃない?」「前の話と矛盾してない?」と思うところがありましたら遠慮なく仰ってください。その都度確認、訂正させていただきます!