表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
董卓の孫娘はお爺ちゃんを救いたい!〜悪役令嬢、竹簡の予言で滅亡回避〜大悪党の董卓ファミリーが闇堕ちする前に、私が全部救います!  作者: 雨咲 しゆみ
第二章──毒の予言と夜宴の蝶

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/83

#56 涼州の友人

 ***


 割れる人波を進む李儒に、私たちは続く。


「失礼、通ります」


 李儒が目の前の女官達に声をかけた。

 話に興じていた彼女達は、私たちの接近に気が付かなかったらしい。


「ちょっと何……よ」

 怪訝そうに振り返ったその一人が、李儒を目にした瞬間口を閉じる。

 その後すぐ、彼女らは頬を赤らめて道を譲った。


「感謝する」

 そう李儒が声をかけると、その女官はまるで糸が切れたみたいにその場にへたり込んだ。

 李儒はそれに目もくれず、またゆっくりと歩みを進める。

 その振る舞いは、まるで物語に出てくる“王子”のよう。これって……もしかして──


(小紅さま小紅さま)

 小声で文姫が呼びかけてくる。


(なに?)

(私、やっぱりあの人嫌いじゃないかもしれません)

 少し頬を赤らめてそう言った文姫。


(ちょっと……いまは集中なさい)

 私は、ほんの小さな圧を乗せて言った。


 これから一番大事な役目を果たさないといけないのは、間違いなく文姫だ。

 いつもなら可愛いで済ませられるが、浮ついた状態であの場に立たれるとこっちが不安になる。


(えへへ。すみません)

 ペロリと舌を見せて笑った文姫。

(もう……)

 まあ、緊張でガチガチになるより……少しはマシか。


 左右に割れた大衆から、次々と吐息混じりの感嘆が聞こえ始める。


「おお……あれが噂の」

「音に聞こえし“黒赤蝶”……」


「とんでもない美女だ」


「しかし、もう“手付き”だと聞いたぞ?」

「構うものか。で、誰が行く?」


「その栄誉は其方に譲ろう」

「馬鹿を言うな、衆前で恥をかくのは御免だ」


 李儒が人の海を割り、大衆がお母さまを見て噂する。

 会場の注目は、いまや完全に私たちに集中している。


(小紅さま……)

 その視線に気がついた文姫も、さっきまでの惚気はどこへ行ったのか。不安そうに袖を握りしめる。


(大丈夫、見られているのは“貴女”じゃない。私たちは“これから”に集中してればいい)

(うう……はいぃ!)


 私の言葉でなんとか気を持ち直す文姫。

 本当に申し訳ないけれど、頑張って欲しい。文姫なしじゃ、この作戦に成功はない。


 もしかしてバレるんじゃないか。そんな不安もあったけれど、ついに私たちは雛壇の真下に到着した。

 その時、大きな二つの影が私たちの横に進み出る。

 一人はお爺ちゃん──でも、もう一人は“知らない”。


「おお、やっと来たか赤麗。もう怖気づいて来ないかと心配したぞ」

 お爺ちゃんが大きな笑い声と一緒にそう言った。


「もう、馬鹿なことばっかり言って。そんな風だから、部下に誤解されるんですよ?」

「な、なんじゃ? どんな風に?」


「仲穎さまの言っていることは、“冗談か本気かわからない”……って」

「な、何!? わしはいつも本気じゃぞ!?」

「“戦場”では……そうかもしれないわね」


 その答えを聞いて、お爺ちゃんの笑みがさらに深くなった。

「わはは。その様子であれば、緊張はしておらんようじゃな。全力で牙を剥け」


「ふふ、言われなくとも」

 お母さまが妖艶に微笑む。側で見ていた大衆から「おお」と声が漏れる。


「赤麗、久しいな」

 お爺ちゃんのそばに居た男が話しかける。

 騎馬民族風の衣装で、背は高く、黒髪を短く切りそろえている。


「お久しぶりです“文約(ぶんやく)”殿」


「はっは、気にするな。昔のように“韓遂(かんすい)”でいい。大きくなったな」

「あら、いま幾つだと思ってらっしゃるの? それより、“オドヴァル”は元気?」


「元気だとも! 今年また子が産まれた」

「あら、それは本当におめでとう。涼州に行った時には、ぜひ顔が見たいわ」


「ああ、ぜひそうしてくれ」


 “韓遂”──私は自分の記憶を紐解く。

 確か涼州で長く土地を治めた地方豪族だ。お爺ちゃんも涼州出身。顔見知りだろうか?


「おい、わしも行くぞ」

「ははは、そうだな。ぜひ来てくれ。一族皆んな、お前達を好いているからな。そうだ、さっき話していた“自慢の孫娘”とやらにも挨拶したい。その時は、必ず連れてきてくれよ」

 

 二人の間の空気は、まるで古い友人と会った時のよう。

 お母さまも、彼の妻を知っているようだったし、いつか涼州に挨拶に伺うこともあるかもしれない。


「黒赤蝶さま」

 そんな三人に向け、李儒が感情のない声で呼びかける。

 彼女はいつの間にか、軽く両手を広げて大衆との間に立っており、お母さま達に声が掛かるのを防いでいたようだ。


「もうお時間がありません。壇上におあがりください」

「ありがとう。悪いわね」


 そう礼を告げて、お母さまは雛壇に続く階段をゆっくりと登り始める。


(文姫、私たちも行こう)

(……はい)


 まだ少し緊張はしていたけれど、文姫の目にはしっかりと覚悟が宿っている。

 いよいよその時だ。


 漢詩大会が始まる──運命の時が来た。


 ***

面白かったらブクマ&★評価をもらえると

明日の更新の励みになります( ๑❛ᴗ❛๑ )♪

まだまだお付き合いくださいね☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ばちょーーー!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ