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董卓の孫娘はお爺ちゃんを救いたい!〜悪役令嬢、竹簡の予言で滅亡回避〜大悪党の董卓ファミリーが闇堕ちする前に、私が全部救います!  作者: 雨咲 しゆみ
第二章──毒の予言と夜宴の蝶

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#45 感謝の意味

 ***


 あの後少し冷静になり、私たちはすぐに離れた。

 いや、だって嬉しかったんだもん。身体が勝手に動いたんだよ! あ、言っとくけど……私はショタの趣味はないからね。

 陛下は恥ずかしかったのか、私に背を向けたまま眉根をほぐしている。まだ、耳が赤い。

 やっぱり少し、やりすぎたかな?


「あの……陛下?」


 劉辯の身体がびくりと跳ねる。


「うわっ、今度はなんだ?」


 そっと肩に手を伸ばしただけで警戒されてしまった。

 なによその態度……。さっきはちょっと大げさに感謝してあげただけじゃない。

 謝ろうかなって思ったけれど、今のですっかりその気が失せた。


「いいえ。なんでもありません」


 私はふいと顔を背けた。だってなんかむかつくんだもん。

 こんなの子供っぽい。わかってる。でも、何だかもやもやする。


「……」


 沈黙が痛い。ちょっと、何か話したら? こっちの方が恥ずかしいじゃん。


「……董白」


「……なんですか?」


「……ありがとう」


 振り向いたけれど、その顔はこちらを向いてない。

 小さな声。でも確かに、彼の感謝の声が聞こえた。


「それ、何に対してですか?」


「いや、それは……」


 劉辯は一瞬だけ、言いづらそうに口ごもった。


「余に、約束を守らせてくれて」


 彼はまだこっちを見ない。でも、どんな顔をしているかはわかってる。

 耳が、また真っ赤になっていたから。


 ***


 劉辯との会話が終わると、私たちは再び印を結んで『透過の術』を解いた。

 少しずつ、身体に色が戻っていく。その色が完全に戻りきる前に、私たちはお互いに握っていた両手を離し、静かに距離をとった。


「ああ! やっと戻ってきてくださいましたか! まさか、ほんとに消えちゃったのかと……って、あれ?」


 姿を現した私と劉辯に、すぐに駆け寄って来ようとした文姫。でも、何かに気づいたのか、不意にその足がピタリと止まる。

 文姫は劉辯の方を見て、少し不思議そうな顔をした。


「どうかしたの?」


「いえ……なんか、陛下の顔色が少し良くなっていらっしゃるような……」


 劉辯に振り返れば、彼は目を逸らしつつ指で眉の辺りをかいている。

 それを見た文姫はにやりと口を歪めて笑った。


「もしかして……さっき消えてる間に、なんかあったんじゃないですか?」


「ない!」「ないわ!」


 劉辯と声が重なる。

 この侍女……。もう陛下にまでこんな口を叩くなんて……。

 口が悪いのは可愛いけれど、相手は皇子よ? 一歩間違ったら大変なことになるんだから。

 はあ、またあとでしっかり教育しておかないとね……。


 少しの沈黙を挟んでから、劉辯が話しかけてくる。


「ともかく……これで其方の推察が正しいことは証明できたな。……で、次はどうする?」


 その視線はやや鋭い。彼の言う通り、これはまだ第一段階だ。

 ここからは、少し無理なお願いになる。


「お願い、文姫にも……この娘にも仙術を教えてくれないかしら」


 私はしっかりと頭を下げる。続けて文姫もぺこりとお辞儀した。


「……やっぱりそう来るか。だが、其方たちは少し勘違いをしている」


「……?」


 私と文姫は顔を見合わせて考える。何かまずいことを言ったろうか?


 でも帰ってきた言葉はそうではなかった。


「教えるのはいい。覚悟も受け取った。だが、“教われば誰でも使える”と思ってるんじゃないか?」


 その言葉にはっとする。そうだ。私は“朱雀”との相性が良すぎて、本来誰もが時間をかけて行うはずの工程──“仙力を高める修行”をしていない。


「だからいいか、その文姫とやらに仙術が使えるかどうかは……」


 そこまで言って劉辯は、部屋の隅にあった棚からあの水晶玉を取り出した。


「その娘の──素質次第だ」


 机に置かれた水晶がごとりと音をたてる。


 銀の瞳が、また文姫を射抜く。

 こくりと喉を鳴らし、彼女は小さく頷いた。


 ***

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