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董卓の孫娘はお爺ちゃんを救いたい!〜悪役令嬢、竹簡の予言で滅亡回避〜大悪党の董卓ファミリーが闇堕ちする前に、私が全部救います!  作者: 雨咲 しゆみ
第一章──破滅の予言と滲む未来

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#10 茶会の誘い

 ***


「小紅さま、こちらが行政宮ですよ! よく頑張りましたね!」

 行政宮の前でパチパチと手を叩き、先導していた文姫が私を迎える。


「はぁ、はぁ……ありがとう文姫、とにかく……助かったわ」 


 勢いよく駆け出したまでは良かったが、よくよく考えたら私は行政宮までの道がわからなかったのだ。


 文姫が道を知っていて助かった。それはそうと、ここでもう一つわかったことがある。

 それは、私の体力がゴミクズだということ。たった1キロほどの距離を走った(実際はほぼ歩いた)だけなのに、心臓はドキドキしてるし膝は笑ってる。さすがは箱入り娘、頭はいいが身体能力は尋常じゃないほど低い。


 途中、「なんで馬車を使わなかったんです!?」とか、「今からでも引き返した方が早いんじゃ……?」とか、「ナメクジより遅いです。そんなんじゃ日が暮れちゃいますよ!?」なんて言われながらも、ようやくここまで辿り着いた。


 門の前までくると、門兵と談笑していた男が気がついてこちらに走り寄ってくる。


「お嬢!? もしかして、歩いてきたのか!? ひどい顔してるぞ」


「はぁ、はぁ。いや……ええ……それが……」


 無精髭(ぶしょうひげ)を盛大に伸ばしたその男は、ギョッとした顔でこちらを覗き込んで尋ねる。お爺ちゃんに負けずとこいつもデカい。しかし名前がわからん。そしてまだ息が戻らないから待って、話すのつらい。

  

「お久しぶりです“華雄(かゆう)”さま。いやそれが、小紅さまってば急に駆け出すもんですからお止めする間もなくって」

 文姫が割って入って徒歩で来た経緯を説明する。


 ……この大男が華雄か!

 確か、呂布(りょふ)と並んで董卓(とうたく)軍きっての猛将だった気がする。って言っても、まだ呂布さんは仲間になってないんだろうな。いや、あいつこそお爺ちゃんを殺す張本人なんだから、仲間になってもらわない方がいいのかもしれないけれど……。いずれはそれも阻止しなきゃならんのか。


「おお! お嬢もついに身体ぁ鍛える気になったか! 阿樂(あれく)にも言ってやってくれ。あの野郎、私は文で生きていくので武はお任せしますなんて気取って、全然訓練に参加しやがらねぇんだ。董一家にそんな軟弱者はいらねぇってな!」


 華雄は何やら勘違いしているが、私は別に身体を鍛えたかったわけじゃなく、この世界の勝手がわからなかっただけだ。とは言っても、さすがにこんなに低体力では先が思いやられる。彼の言うとおり、もう少し身体を鍛えたほうがよさそうだ。


「ええ。お父さまにも頼んでみます。今度訓練に連れて行ってくださいって」

 そう返事した。


「ガハハ! そりゃいいや。お嬢の頼みならアイツも断れねぇだろうしな!」

 豪快に笑い、華雄は上機嫌だ。


「それはそうと、わざわざ私たちを待っててくれたのですか?」


「おう! ……と、言いたいところだが、実は用事を頼まれててな。これから出るところだったんだ」

 そう言って、華雄は懐から一枚の紙を取り出す。もしかしてそれは……


「手紙?」


「そうだ。なんでも、茶会の誘いの返事とかなんとか……」


「な!? ちょっと見せなさい!」

 私は咄嗟に飛び跳ねて華雄の手紙を奪い取ろうとしたが、流石に手元までは届かない。


「おおっと! だめだぜお嬢! 紙は“竹簡と違って破れやすい”んだ。子供が触るもんじゃねぇ」

 華雄はびっくりした様子で手紙を高く掲げると、すぐに懐にしまった。


 しばらく睨めっこしていた私たちだったが、彼は董卓軍の中で最も信頼の厚い部下の一人である。

 例え私が董卓の孫でもそう易々と渡してくれそうにはなかった。


 ちぇ、破いたりしないのに。

 いや、やっぱりごめん書かれている内容次第では破くかもしれないけど。


「わかりました。じゃあ、なんて書いてあったのかだけでも教えなさい」


「んん? なんて書いてあったかだ?」


「そうよ」

 私は有無を言わせぬ圧を出しながら言う。


 こっちは腐っても悪役令嬢、威圧のかけ方は身体が覚えてるもんね!

 何だか渋い顔をしていた華雄だったが、やがてその圧に負けたのか、彼は懐からもう一度手紙を取り出した。

 そしてこう言った。


「んん〜〜、読めねえな。なんて書いてあるんだろうな?」


 華雄は文字が読めなかった。


 ***

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