変わった世界
ライフルで標的を撃ち抜いた田代は、間髪入れずに次弾を装填した。
その動作のまま、視線を森の奥に向けたまま口を開く。
「スラッグ弾を装填してるか? してないなら今すぐ替えろ」
「え?何?」
レイナは戸惑い、周囲を見渡す。
だが何も見えない。
気配も、音も、異変らしい異変は感じ取れなかった。
それでも、田代は厳しい視線を向けていた。
レイナは言われた通り、弾をスラッグ弾へと交換し始める。
その横で、田代は一点を睨み据えたまま無線を取った。
「お客が来たようだ」
彼だけが確信を持っていた。
そこにいる。
ベテラン猟師ともなれば、獣の臭いで近くにいる、こいつはイノシシ、この臭いは熊など嗅ぎ分ける事が出来る。
スキルや加護ではない。
田代が積み重ねてきた経験がまだ見ぬ敵を見つけ出した。
ゆっくりと、ライフルを向ける。
獲物が視界に入ったら撃つ。
レイナは田代がライフルを向けている場所に銃口を向けた。
「こっち?」
「静かにしろ。」
葉が擦れる音。
落ち葉を踏みしめる、重い足音。
田代の表情が険しくなる。
緑熊の頭が出てきた。
それを確認した瞬間、田代は引き金を引く。
続けてレイナも慌てて撃つ。
次の弾を装填し再び狙いをつける。
うめき声とともに緑熊は倒れた。
「やった?」
だが倒れた緑熊は、まだ微かにもがいている。
田代は無言で再び引き金を引いた。
うめき声が、完全に途絶える。
それでも田代は動かない。
田代は沈黙を保ったまま暫く見つめる。
10秒ほど見つめた。
ピクリとも動かない。
銃口を向けたまま距離を詰め、先端で目を軽く突く。
反応はない。
「やったみたいだ。」
「お〜。大物だね。」
嬉しそうにしているレイナを放って、田代は緑熊の前でしゃがみ、身体をじっと見つめる。
「一発目だな。」
「何が?」
「致命傷だ。一発目が喉を貫いてる。」
一瞬の戦い。
その一瞬を制した方が生きる。
猟師とはそんな戦いをしている。
「それじゃ、私が血抜きしますんで、田代さんは勝樹さんの加勢に行ってください。」
小さく分かったと話、田代は無線で話しながら勝樹たちのもとに急ぐ。
「こちらは終わった。そちらは?」
『こちらも今終わりました。怪我は?』
「無傷だ。」
田代は一度、レイナへ振り向く。
レイナは手際よく血抜きを始めていた。




