9.同じ花でも違う花 3
新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
・・・いつまで続くかわかりませんが(笑)
食事を終えたルディ達一行は双子姉妹が止まっているという宿屋に部屋を借り、そのうちの一部屋(ルディの部屋)に姉妹を除いて集まっていた。
姉妹はいったん自分たちの部屋へと戻り、準備が出来たらこの部屋に来ることになっていた。
「なんだか変なことになったなぁ」
ルディは相変わらず姉妹が怒った理由がわからず、なぜこうなったのかと先ほどから自問自答していた。
「あんなにそっくりな双子なのに簡単に見分けがつくなんて適当なことを言うからいけないのよ」
シーダは呆れたようにそう言った。
「恐らくは今までお互いに間違われたことが多かったのでしょうね。もちろんそれを利用したことはあるでしょうけど誰にも正しく見分けてもらったことがないならルディの言葉はさぞ無責任な挑発の言葉に聞こえたでしょうね」
「まさか?親ならわかるものじゃないの?」
ルディは生まれた時から孤児院育ちで親を知らない。だから親ならばどれだけ子供が似ていても間違えることなどないという幻想を抱いていた。
そんなルディにウルザは自らの見解から来る推測を説明した。
「確かに親ならわかるかもしれない。だけどあの娘達の場合はあまりにも似すぎていたからね。特徴の出にくい子供のころだと親でもわからなかったのではないかしら?そしてそういう子供の頃の出来事ほど大人になっても消えない傷になる事は多いと私は思うわ」
そんな話をしていると、扉が控えめにノックされた。
「はい、いま開けますね」
ソフィが扉を開けると、そこには同じ衣装を着て、同じ髪形をしたまるで人形のように美しい姉妹の姿がそこにあった。
「これは……!」
「凄いわね。まさかここまで同じ姿になるなんて……」
いつも落ち着いているアーデですら息をのみ、シーダも驚きを隠せない。
「うっすらと化粧も施して、本当に美しい人形のようね」
「服も体型のわかりにくい緩やかなものを着ていますから区別がつきません!」
「服だけでなく互いの体型も同じになるように何か詰めるか抑えるかしているみたいですね。これは難しいです……」
ウルザにソフィ、サラまでもが二人の区別のポイントに頭を悩ましている中でルディだけがなんてことの無いように正解を答える。
「右がアヤメで左がリリオでしょ?女の子は化粧をすると一気に大人びるね!」
その言葉に無表情だった二人の顔に感情が宿る。
「どうしてわかったのよ!」
「凄いです本当に……どうして?」
アヤメはいたずらがバレた子供のように、リリオは隠していたことに気付かれたかのように、それぞれ驚きを口にする。
「なんならもう1度か2度、挑戦してもいいよ?今度はもっと上手にね!」
「……行こうリリオ!」
「うん、お姉ちゃん!」
二人は悔しそうに顔を赤くすると部屋から出て行った。
「本当にどうしてわかったの?あんなにそっくりだったのに……」
「ルディ兄様凄いです!」
「まぁまぁ、種明かしはすべてが終わってから二人の前でね。種明かしって程のものでもないんだけどね」
そういうルディはむしろ何故わからないのか?というような顔で首をひねっているのだった。
この後、姉妹は2回ほどやり方を変えて現れた。
1回目は先ほどと同じく同じ姿で。ただし今度は身振り素振りに声まで似せて自分が本当のリリオだと、姉が自分の真似をしているのだという形の物まねで。
2回目は「降参よ」と言いながら現れておきながら姉と妹の立場を置き換えて、姉が妹を妹が姉を演じる形で部屋に入ってきた。
しかしどちらもルディだけは「こっちが本物」「降参と言って油断させておきながらひっかけ問題を出してくるのはズルくないか?」とすぐに看破した。
「本当にどうしてわかるの!今まで本気でだまそうと思ったら友達や親族、それどころか両親にだってバレたことが無かったのに!」
「私も、姉の真似をするのは結構自信があったのですが……。ルディさんはどうして私たちの事を見分けられるんですか?」
シーダ達からも早く答えを教えろとの視線が強く送られてくるので仕方なくルディは説明をした。
「昼間話しただろう?師匠は東方で人体の構造について学んできて、僕も徹底的に仕込まれたと。要は人間観察の結果だよ」
大道芸人は自分の芸の技の完成度よりもまず客を見ろ!とはルディの師匠の言葉らしい。
どれほど高度な芸をしても観客に受け入れられていなければ意味がない。たとえ失敗に終わってもそれで客が笑っているならそれが正解なのだ。
だから芸人は常に観客の事を意識する。楽しんでいるかつまらなそうにしているか、飽きていないか他に気を取られていないか、など。
それだけではなく誰ならどの芸のサポーターとして選んでいいか、客層はどういった人物が多いかなど様々に観察する。
その時に役に立ったのが人体の構造から推測する動きの癖である。
人の動きというものは自然な動きであれば大体どんな人物でも同じような動きになる。しかしもしもそうではなく不自然な動きがあったとしたらそれはその人の心理状態から来るその人自身の癖なのである。
しかもそう言った動きの癖というものは大抵無自覚に行う事が多い。それ故に相手が何をどう考えているかの予測の判断材料にもなりうるのである。
「どれほど姿かたちを似せたところで細かい癖までは隠せない。立つ時の重心の位置や目の配り方、指先の動き一つとってもその人物がどういった人物であるかはわかるものだよ」
「まさか、そんなことって・・・」
「達人ともなれば地面に残った足跡から身長や体重、職業、男性か女性かと言った細かいこともすべてわかるものらしい。流石に僕はそこまでは出来ないけれど、立っている時に重心がどうかかっているかくらいはわかるつもりだよ」
疑うアヤメにルディが詳しく説明すると、活発に動くアヤメよりもいざという時にすぐに動き出せるようにしているのは実はリリオの方らしい。
ルディはリリオを「普段は確かに姉の背中に隠れていがちな女の子だが、覚悟を決めた時の心の強さはリリオの方が強い」と考えていた。
アヤメは自ら拳法で戦いもするし相手を恐れずにまっすぐ突き進む所があるから人はアヤメの方が強いと判断しがちであるが、実はそれらの姿はリリオの前でだけ見せるものであり、妹を護りたいという気持ちの強さが本来のアヤメの姿を押し隠しているのだと。
現に最初に現れた時もリリオの真似をした時も、アヤメの姿に不自然なところは無かったとルディは言う。
むしろ姉を護りたい!という気持ちが強くあるリリオの方がその気合の分、わずかではあるが不自然さがあったと。
「姉は強くあることで妹を護ろうとし、妹はいざという時には姉を護るために日ごろから気を配っていた。その根底にあるものはお互いを大切に思う美しい姉妹愛だったというわけさ。いい話だね」
「良い事を言っているのはわかるけど……ルディ、ちょっと気色悪い」
「なんでさ!?」
シーダの一言にひどく傷つくルディ。
「だってさ、何であったばかりの女の子の気持ちがそんなにわかるのよ?細かい癖にしたってそんなの相手の事をじっくりねっとり見てないとわかるわけないじゃない!この変態ルディ!」
「変態はひどくない!?」
「こっち見ないで!嫁入り前なのにルディに裸にされちゃうわ!」
「まるで犯罪者扱い!?」
「まぁまぁ姫様、落ち着いて」
そう言いながらもシーダとともに距離を開けながらアーデが疑問をぶつける。
「だがルディ、お前のその注意力は確かに異常だ。しかしよく考えるとサラを見つけた時もお前は誰も気づかなかった茂みの異変に気付いていた。運動能力も生前に比べて格段に上がっているようだし、女神から何らかの力を授かったのではないか?」
「なに生前って?」
「女神さま?」
事情を知らないアヤメとリリオにはアーデの言っていることがよくわからない。
その時である。
「……その質問には私が答えましょう……」
それまで黙っていたソフィスティアの体が急に光り輝き出したのであった。
次回投稿は1月10日(日)13時の予定です。そして今回のお話は終了です。
その後の予定は未定です。……なるべく頑張ります(笑)




