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6.踊り子さん拾いました

お久しぶりでございます。リハビリ兼ねての作品なので色々間違いがありましたらご容赦ください

 ルディ一行が王都を出て二日が経った。

「今日も平和ねぇ・・・」

 シーダがうーんと背伸びをしながらのんびりと言う。

「平和が一番です。そうですよね、兄様?」

 ルディの横を歩きながらソフィスティア(愛称ソフィ)がルディに微笑みかける。

「そうだね。平和が一番・・・。しかし凄いものだねウルザの認識疎外の魔法というのは。王都を出る時も出た後も、みんなが君達を見ているのに誰も勇者一行だと気づかないのだから」

「当り前よぉ。そうでなければあの魔王城潜入の時、もっと大変だったはずよ?まぁ私の才能をもってすれば大した手間ではないけどね」

「だが正直に言って助かる。ここまで何人か私の元・部下たちともすれ違ったりしたが誰も私に気付かなかったからな。・・・隊長としては部下の能力に不安を覚えるが」

「今のあなたは近衛騎士団の団長ではないのだから気にすることはないわよアーデ。それを言ったら本来守るべき対象であるはずの姫の私よりも騎士たちの方が弱いことの方が問題になるもの」

「シーダに勝てとかそれ死刑宣告も同然だろう?しかし本当に君達が城を出てきて良かったの?なんかみんな、必死に探しているようだけど・・・」

 ルディはシーダ達から旅の理由を「魔王討伐後の情勢不安の調査と魔王軍残党の殲滅」と聞かされていた。

 国でも動いてはいるが国とは別に秘密裏に動くことで隠れた魔王軍の残党を洗い出すのが目的だと。

 もちろん真の理由はルディの身の安全を護るためとルディへの好意をはっきりと自覚したが故にひと時も離れたくないという乙女の思いからくるものであった。

「大丈夫よ。むしろ私達がいない方が色々やりやすいんじゃないかしら?人間はどうしたって派閥を作りたがるものだから」

 実際城にいる間にも秘密裏に接触を試み現王を排斥しシーダに女王として戴冠するように言ってくるような輩はいた。

 相手にせず放置したが何かの折に王に手紙で報告は入れようとシーダは思っていた。

「ルディ兄様は何も心配いりません。私はルディ兄様とまた一緒に旅ができて嬉しいです!」

 そう言ってソフィはルディの腕にしがみつく。13歳の少女としては発育の良すぎるものがルディの腕を柔らかく包み込む。

「あ、ソフィ!そうやって自分だけ抜け駆けしない!」

「ベー!です!!」

 こうして始まるこの旅が始まってから定番となった二人のやり取りを見ながらルディは改めて、あの時みんなを助ける事が出来て良かったと心の中で思うのだった。


 そんなやり取りを続けながら明日には最初の街に着くだろうと話をしながら今晩の寝床になりそうな場所を探しているとルディは違和感を感じた。

「ルディ?」

 ルディの様子が変わったことをシーダがいぶかしむと、ルディは道路に沿って続く林の中におもむろに入っていった。

「ちょっとルディ!どうしたのよ?」

 どこに暗殺者が潜んでいるかもわからないので勝手な行動は慎んで欲しいのだがそれを言うと理由も説明しなければならなくなるので仕方なくすぐに対応できるように身構えながらルディの後を追う。

 他の三人も同様だ。


 ルディの姿はすぐに見つかった。どうやら行き倒れを見つけたらしくルディは状態を確認している。

「旅のコートを着ているけど女性みたいだ。外傷も乱暴された後もないし物色された様子もない。息はしているし熱もなさそうだ。どうしてこんなところで倒れているのだろう?」

「ルディ下がって!」

「相手が何者かわからないのに不用心に近寄りすぎだ!」

 シーダとアーデに叱られて相手が女性でもあることから二人に任せようと思ったその時だった!


 グゥ~キュルキュルキュルグゥ~


 女性のおなかの辺りから盛大な腹の音が鳴り響いた。

「お、お腹すいた・・・」

 女性はかすれた声でそれだけを口にすると気を失ったのだった。


 結局ウルザが女性を診断した結果、空腹による栄養失調状態にあると判断された。

 街まではまだ距離もあるし女性をこのままにしておくわけにもいかないとルディが言うので今晩はこの辺で野営する事となった。

 とりあえず女性にはソフィが回復魔法をかけて体力を回復させた。女性は未だ眠り続けている。

「いきなり固形物だと胃が驚くから今日は鳥のスープをメインにした鍋物にしよう。仕上げにお米を入れれば消化の良いおじやにもなるし」

「美味しそう!」

「ルディ兄様の料理は本当に美味しいです」

「鳥のスープは美容にも良いし悪くないわね」

「では火の準備は私がしよう」

「・・・褒めてくれるのは嬉しいけど君達も少しは料理を覚えようよ」

 ルディの言葉に女性陣は一斉に顔を背けるのであった。


「これ、すごく美味しい!」

 料理が出来上がるころになると、匂いにつられたのか行き倒れていた女性が目を覚ました。

 ルディが鍋からスープをお椀に移しスプーンと一緒に手渡すと女性は警戒しながらも一口目をすすり、目を見開くと瞬く間にスープを飲み干してしまった。

「おかわりはあるからそんなに慌てないでゆっくり飲んで。胃が落ち着いたらこのスープでおじやもあるから」

 女性はフードを外すと一心不乱に食事を始めた。

 フードを外したその下から現れたのは月の光を集めて梳いたような長い銀髪と対照的な褐色の肌。

 顔のつくりはとても整っており、ウルザとも違った妖艶さを醸し出している。

 コートの隙間から見えるその体つきはとても健康的で女性美にあふれている。

 胸は大きいが大きすぎることはなく、腰はきわめて細く、全体的にとてもバランスの良い体型をしていた。

「ルディ?」

「兄様?」

「あ、そろそろお米の準備もしないと!」

 シーダとソフィから底冷えするような冷たい声を浴びせられたルディは慌てて視線を外して鍋にいれるお米の準備にかかる。

「二人とも・・・嫉妬が過ぎると嫌われるわよ?」

「べ、別に嫉妬とかじゃないし!」

「わ、私そんなつもりじゃ・・・」

 強がるシーダと慌てるソフィを見てウルザは思わず頬を緩ませるのであった。


「助けてくれてありがとう。ご馳走様でした」

 よほどお腹がすいていたのかおじやも鍋の半分を一人で平らげる勢いで消化した女性は名前をサラと言った。

 年齢は17歳。職業は踊り子だという。

「お腹も一杯になったし良かったらお礼に一曲踊るわね」

 そう言って立ち上がりコートを脱ぐと、その下は砂漠地帯で見かけたベリーダンサーという踊り子たちが着ていた装束そのままの露出度の高い衣装が現れた。

 背はそれほど高いわけではないが腰の位置が高いので足が長く、すらっとしていながら肉付きの良い体つきは酒場で酔漢たちを相手に踊ればいくらでも金を稼げそうな感じであった。

 踊りは静かに、そして滑らかな動きが特徴的なものだった。

 だがその動きは時に大きく時に大胆に。手に持ったショールがまるで天の御使いが持つという美しい羽衣のように時に流れ時にまとわりつく。

 空のかなたに思いを馳せるようなまなざしが、不意に観衆の目を射抜いて視線をくぎ付けにする。


「素晴らしい『舞』だね。本人の見た目の美しさもさるものながらそれに驕ることなく仕草の優美さを意識して頭の先から足のつま先まで常に神経を張り巡らせている。

 それぞれの体の動きが持つ意味をちゃんと理解したうえでそれぞれの動きを地道に、何回も繰り返し反復することで体に覚えこませている。

 まだ若いのにこれだけ表現豊かに踊れるのはきちんと努力してきた証拠だよ」

 ルディは女性の美しさ以上に彼女の舞の動きに感動し、一挙一動も見逃さないとばかりに集中して見ていた。

 それとは別に緊張した面持ちで舞い踊るサラを見ている者がいた。

「アーデ、気づいてる?」

「はい。彼女の踊りは確かに素晴らしいものですが、それだけではありませんね」

「明らかに剣を意識した動きだわ。それも私たちが使うような直剣ではなく反りの入った片手剣。

 攻撃を受け流しつつ要所要所で必殺の斬撃を入れてくる。体が柔らかいからこちらの予想の枠外から攻撃を仕掛けてくる。

 かなり強いわよ、あの娘」

「もしもの時は私が受けますので姫様はその隙に無力化を」

「わかったわ」

 月光の光を体中に浴びながら、サラはひたすら舞い踊るのであった。


 サラの舞が終わるとルディを始めとする全員から拍手が沸き起こった。

「ありがとう。こんな踊りがお礼になったかはわからないけれど・・・」

「素晴らしかったよ!いいものを見せてもらったしこちらこそありがとう!」

 ルディは少し興奮気味にそう言うと、未だ自分たちが自己紹介に気付いていないことに思い当たる。

「そういえばこちらからの自己紹介がまだだったね!俺の名前はルディ。彼女たちは俺の仲間さ!」

 シーダ達が口止めするよりも前に自己紹介をしたルディを、サラは信じられないものを見るかのように見つめた。


「ルディ?もしかしてトリックスターのルディ!?でも確か彼は死んだはず・・・」


「アーデ!ルディを護りなさい!」

 シーダは即座に反応するとサラの喉元に剣を突き付ける。

 アーデはルディの前に出ると大楯を構え、ルディの横にソフィとウルザが待機する。

「聖剣?ということはあなたはシーダ姫?大楯を構えるのが近衛騎士団長のアーデということは残りの二人は聖女ソフィスティアと賢者ウルザ?本物の勇者パーティ?」

「自己紹介の必要はなくなったわね。さて、あなたは何者?ルディの名前どころか『トリックスター』を知っているあなたは?今更ただの踊り子だなんて言わないわよね?」

 サラは状況を冷静に判断するべく周囲を伺った。

 本物の勇者一行ならばたとえ戦っても勝ち目はない。もっとも戦うつもりも今はもう無かったが。

 むしろ選択を過てば即座に命を落とすこの状況をどうするか?

(・・・ああ。でももういいのか。誤魔化そうとしても無理そうだしここは素直にすべてを話すことが一番か・・・)

 少し前までであれば命を絶っても秘密を口にすることは無かったのだが今の彼女はその立場になかった。

「わかりました。すべてお話しします。なので剣を収めてもらえませんか?」


 ルディを護る形でシーダとアーデがルディの横に座りソフィとウルザはルディの後ろに座る形となった。

 正面には姿勢を正して座るサラの姿が。

「まず私の名前はサラ。偽名ではなく組織からはそう呼ばれていました」

「組織?」

「皆さんは『ダンス・マカブル』という組織をご存じですか?」

「ダンス・マカブルだと!ではお前はあのダンス・マカブルのサラだというのか!?」

「アーデ、説明して」

 パーティの中では騎士団として活動中に様々な事件を見てきたアーデが一番そういったものに詳しかった。シーダに請われてアーデが説明する。

「ダンス・マカブルというのはその筋では有名ないわゆる暗殺専門の組織です。そしてダンス・マカブルのサラとはその組織の有名な殺し屋です」

「事の発端は任務で潜入したとあるパーティの事でした・・・」


 サラは人買いに売られて組織で育てられた少女だった。

 組織は多くの子供を集めては暗殺者として適性の高いものを見つけ、育てていた。

 サラはソーダダンサーとしての才能を見出され、組織で英才教育を施されていた。健康管理や食事の管理まで組織が厳しく行っていた。

 サラは組織で出された物以外の食べ物を食べた記憶がなかった。そして組織の食べ物とは栄養価や利便性のみを追求した味を考えないものであったという。

 サラは組織の命令でとあるパーティに潜入し、パーティの出席者全員を殺害したのだが事を済ませたときに空腹を覚えたのだという。

 今まで組織のものしか食べてこなかったサラは迷いながらも少しだけ料理に手を付けることにした。

 初めて組織以外の料理を食べたサラは衝撃を受けた。


(美味しい!なに、これは?)


 他の皿の料理も手に取り口に入れる。サラにとってはどの料理も初めて味わうとてもおいしい料理であった!

 そこでサラは今まで組織が食べさせていたものがいかに不味いものであったかを初めて知ったのだった。

 本来であれば組織に戻らねばならないのだが料理の美味しさを知ってしまったサラはもう組織の食事では我慢が出来なくなっていた。

 だからサラは組織には戻らず、正体を隠しながら路銀を稼ぎ、旅をしながら美味しいものを食べ歩いていたのだそうだ。

 しかし正体を隠しながらの旅は路銀を稼ぎにくく、ついに路銀が底を尽きて何も食べられなくなり空腹で倒れてしまったところをルディが見つけ助けられる事になったのだという。


「あなた、バカなの?」

 シーダは思わずそう口にしていた。

 ちなみに『トリックスターのルディ』については組織にいた頃に話を聞いたことがあったのだという。

「勇者パーティ唯一の男性メンバー・・・組織はただの荷物運びの筈がないってずいぶん前から調べていたみたい。ただシーダ姫たちが戻ってきた時にパーティに姿を見かけなかった事から死んだと思われてすぐに関心がなくなったようだけど・・・」

(トリックスターのスキルを知っているのはそう多くはないはず。という事は国王のすぐそばにいる人間が情報を流しているという事。いったい誰が?)

(シーダ姫、どちらにしてもルディの生存をサラに知られたままというのは不味いわ。こうなれば例の計画に引き込むかこの場で処罰をしないと・・・)

 ウルザの忠告に我に返ったシーダはルディにしばらく席を外しているように告げた。


「え、なんで?」

「これから女同士で重要な話し合いがあるのよ。すぐに済ませるからしばらく離れてて」


 かくしてルディを遠ざけた勇者パーティの面々は振り返ってサラを見る。

「悪いけどあなたをそのまま放置は出来ないわ。だからこうしましょう」

 正面からサラを見つめて

「あなた、ルディのハーレムに入りなさい!そうしたらあなたの命は保証してあげる。嫌ならこの場で殺すわ!」

 サラは少し悩んだ後にはっきりと答える。

「わかりました。私もルディさんのハーレムに入ります!」

「本当にいいの?裏切りは絶対に許さないわよ?」

「裏切らないから構いません!ハーレムに入れてもらえば命は助かるし、追ってから身を護ることも楽になります。食事も美味しかったですし!

 それに・・・」

 そこでサラはルディのいる方を見ながら言う。

「今まで、私の外見を褒めてくださる方はそれこそ沢山いましたが私の努力しているところを正確に見抜き認めてくれた方はルディさんが初めてでしたから。組織は誰もが出来て当たり前で出来ないやつが悪いという考え方だったので今まで誰にも褒められた事なんて無かったんです。だからでしょうか?こんな気持ち、初めてで・・・」

「・・・ならあなたは今日から私たちの仲間で、ライバルよ。仲良くやりましょうサラ」


 かくしてルディのハーレム(本人知らず)に新しいメンバーが加わったのだった。

 ルディにはサラはこれまでの罪を償うためにシーダ達の監視下に入る事となったと説明した。

「これからは皆さんのお役に立てるように頑張ります!」

 ルディは正直言ってサラの生い立ちを聞いた時に同情を禁じえなかったのでパーティメンバーとしてこれから共にしながら罪を償うという考え方は大賛成であった!

 これ以降、ルディとサラは踊り子と楽師という組み合わせで街で路銀を稼ぐことが多くなり、二人の息の合ったやり取りに他の女性陣が負けずと対抗するようになりルディは大いに振り回される事となるのであった。


 戦闘について言えばサラの戦闘力は驚くべきものがあった。

 元・暗殺者らしく正面からの戦いではシーダに劣るのだが実戦を意識した戦い、もしくは実戦ともなるとその戦闘力を大いに発揮した!


 後にサラはルディ・ハーレムの諜報担当(主にルディの浮気調査)として辣腕を振るうようになるのだった。

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