49.兄妹アタック
その恐ろしい外見と殺気の塊に、体の反応が遅れてしまった。
手首を蹴られ、思わず銃を落としてしまう。
拾おうと手を伸ばすあたしの翼に、奴は手をかけた。
「とりあえず、毟り取るか」
グランツは軽くそう言うと、言葉通り腕に力を込めた。
背中に引きちぎられそうな激しい痛みが走る…!
その時、カッと眩しい閃光が生まれ、背中の痛みがなくなった。
体を起こすとそこにはルウがいて、気が緩み涙が出そうになる。
ルウの攻撃によって、グランツは少し離れた岩場まで吹っ飛んでいた。
「ルウ、みんなは…?」
「大丈夫だ、心配ない。立てるか?」
ルウはあたしの両手を引っ張って立たせると、銃も拾って渡してくれた。
「シャロ!」
「メル!」
メルが凄い勢いで飛んできて、あたしに抱きつく。
「メル、大丈夫?」
「かすり傷だ」
メルの白い毛並みは黒く汚れ、血が滲んでる箇所もある。
「あいつなんなの、超キモいんですけど!」
そして、同じく傷だらけのクロエとアコードもあたしたちのそばへ降り立つ。
良かった、見た目は痛々しそうだけど無事だ。
「で、どうするの。ファイナルフラッシュ兄妹アタックでもやる?」
セスは今にも口笛でも吹きそうなそぶりだ。
「何よ、それ。知らないけど」
すぐさまクロエが冷たく言い放つ。
「まあ、近いな」
意外にもルウが肯定する。
「アイツを動けなくさせて、シャーロットの銃で浄化する。それが全てだ」
「なるほど。やはりここは、ラストチャレンジ兄妹ビックバンをかますべきか」
「さっきと変わってるじゃないのよ!」
「…あのぉ、赤の他人の自分はその攻撃に参加していいんですかね?」
セスに激しく突っ込むクロエと呑気に質問するアコード。
「…魔族ってやつらは本当変な種族だな」
メルがあたしに耳打ちする。
…確かに。
「どっちにしろさぁ…平和が続いてたから、自分の実力ってどの程度なのかわからなかったんだよねぇ。存分に発揮できるってことだよね!」
セスはそう言うと一瞬でグランツとの距離を詰め、光を激しく打ち込んていく。
「結局、スタンドプレーじゃないのよ!」
クロエの突っ込み通り、セスはイキイキした様子でグランツに攻撃を続ける。
魔族本来の戦闘本能に火がついたみたいに。
「…オレはグランツの右腕を狙う。アコードは左足、クロエは右足だ。アコード、力は残ってるか?」
「なんとかいけます。セス様は左腕ですか?」
「そういうことだ。シャーロットとメルは待機だ」
「わ、わかった」
あたしが頷くや否や、ルウとアコードが参戦していく。
クロエは取り出したクマのぬいぐるみを獰猛化させ、放つ。
それぞれが自分の手足を集中して攻撃してくるので、グランツはやりにくそうにしている。
みんな…頑張って!
グランツはくまのぬいぐるみを切り裂き、アコードを蹴り飛ばす。
その隙をついて、ルウとセスが迫る。
クロエはすぐさま獅子のぬいぐるみを放ち、アコードが斬りかかる。
それらが目紛しいスピードで展開していく。
「…嬢。シャーロット嬢」
誰かがあたしを呼ぶ。
振り返ると岩場の陰から、シェルダンとニコラの姿が見えた。
「2人ともどうして!?ここは危ないから…」
「良いものができたんです。女王陛下にも協力してもらいました」
「そうだぞ!」
あたしの心配をよそに2人はニタリと笑う。
「…良いもの?」
グランツが四方八方に光を放ち、ルウたちは一旦距離を置く。
グランツは攻撃の手を緩めず、皆は近寄ることができない。
あたしはハラハラとその様子を眺めながら、2人に尋ねる。
「どういうこと?」
「ゾーアンに伝わる、花の事です」
「花?」
シェルダンは一体、なんの話をしてるのだろう。
あたしには全くわからなかった。




