44.細工
猛スピードで下降しながら、あたしは魔物の背中に銃口を向ける。
引き金にかけた指に力を入れた瞬間。
「はい、残念」
あたしと魔物の間にグランツが出現した。
そう認識するや否や、黒い光を放たれる!
その時、体の右側に強い衝撃を感じ、次に感じたのは地面に転がったという事だった。
「…馬鹿」
すぐ近くでルウの声がする。
「…ごめん」
ルウがグランツの攻撃からあたしを遠ざけたんだとすぐにわかった。
グランツはその隙に地面の裂け目に続けざまに光を放つ。
結界が薄くなったその場所に魔物が入り込んでいく!
あわてて立ち上がろうとするあたしの腕をルウが掴む。
「落ち着け」
「でも…!」
「落ち着いた方がいいですよ」
そんなあたしたちの隣に、ひらりとアコードが降り立つ。
「そうしないと、あっという間にヤツの餌食ですよ」
柔和な笑顔で恐ろしい事を言う。
「どうします、ルウナリィさま?」
「…とりあえず、魔物が邪魔だな」
ルウは立ち上がると、
「アコード、シャーロットを見てろ」
「かしこまりました」
上空へと羽ばたいていく。
そんな彼の元へ、魔物たちが群がり囲んでいく。
「アコード、助けにいかないの?」
「いや〜久しぶりにルウ様の本気が見れるなんてワクワクしますね〜」
不安がこみ上げるあたしと違って、アコードの声は弾む。
ワッと一斉に黒い集団がルウに飛びかかり、こちらからはその姿が見えなくなる。
そして。
ルウの身体中から光が生まれ、魔物たちが吹っ飛んでいった!
追い討ちをかけるように、大きな音を立てながら雷撃のような光が魔物を追いかけ、その体を射抜いていく。
魔物の体はあっという間に消え失せ、この場にはあたしたち3人とグランツの姿だけとなった。
凄い…ルウの力…。
肌をビリビリと刺すような魔力を感じる。
これが魔王…。
「いやいや、お見事!」
緊張感が全くなく、アコードが拍手してる。
…この人、ちょっと変わってるよなぁ。
「アコード!」
グランツから目を離さず、上空からルウが怒鳴った。
「かしこまりました!」
それだけでアコードは何かわかったらしく、
「地下へ行きましょう」
あたしの手を引いて囁いた。
「はい!」
そこへグランツの光が降ってきて、アコードが剣で弾き返す。
「グランツ、お前の相手はオレだ」
あたしたちから目を逸らさせる為、ルウが言う。
「勘違いするな。オレとお前が同格だと思ってるのか?」
グランツはあたしたちへの攻撃を繰り返しながら、せせら笑う。
「オレにとっては、あのちょろちょろしてる二人や地下帝国のチビどもとお前は何も変わらない。禁術を使ったんだ。ただの魔族とは比べものにならない、死の魔力を」
ルウの攻撃を交わしながら、こちらへの攻撃の手を緩めないので、あたしたちは足止めをくってしまう。
地下帝国のみんなは…メル、シェルダン…!
ジリジリした気持ちを抱えてると、地下から爆発音が聞こえてきた!
「地下に侵入した魔物は魔王サマが倒したやつとは違って、ちょっと特殊な細工をしたやつでね」
その音に顔が強張るあたしたちとは反対に、グランツは優雅に微笑む。
「自爆したら有害なガスが出る。結界を張った地下帝国で、そんなことが起きたら大変だね?」




