33.儀式
「さあ、ジムニー。魔王とシャーロット嬢にご挨拶をするんだ」
「はい!」
ジムニーという名のサイ男はつぶらな瞳で、あたしとルウを見つめた。
「この度は大変なご迷惑をおかけ致しまして、申し訳ございませんでした!」
そう言って、大きな体を2つに折り、深々と頭を下げる。
「これが面白いもんでしてねぇ」
その様子を愉快そうに眺めながら、シェルダンが口の端をあげる。
「ジムニーの細胞や血液を調べたら、魔族よりも天使の数値に近くなってたんですよぅ」
「なに?」
突飛な発言に思わずルウも眉間に皺を寄せた。
「そうそう、驚きますよねぇ。ご存知の通り、元々、魔族と天使は違うもので出来ております。猫と犬が違うみたいにね。それがシャーロット嬢の一撃で、体の仕組みが変わってしまった。銃の力なのか、シャーロット嬢の魔力によってなのか…わかりませんがね」
ルウは説明を求めるようにあたしを見るけど、自分でもそんなこと、わからない。
あたしは首をプルプル振って、メルに助けを求める。
「…魔族に全力で愛の力を撃った天使なんて聞いたことないからなぁ。普通は人間相手だろ。正反対の性質を持つから…余計に効いた…ってことかな」
メルは歯切れ悪く発言した。
「ジムニー、お前にグランツが依頼した時の様子を知りたい」
ルウは刺すような視線をジムニーに向ける。
「は、はい」
ジムニーは緊張した面持ちになり、話し始めた。
「グランツは私たち下級魔族を集めました。今の王家を倒した暁には、私たちの地位を向上させる、沢山の金も渡すと言って。私たち力自慢の下級魔族はその話に飛びつきました。今の王家に不満があるわけではありません!ただ、刺激が欲しかったというか、暴れたかったというか…」
「本来魔族の血はそういうものだ」
段々と声が小さくなるジムニーだったけれど、ルウがさらりと言うと、少しホッとしたようだった。
「グランツの屋敷には50人くらい、集まりました。彼の演説は上手く、私たちはその言葉に酔ったようになりました」
「50人?」
あたしは思わず口を挟んだ。
「あの時城に攻めてきたのは、ジムニーとあと2人の計3人だったよね?あとの人はどうしたの?」
「それが…不思議なんですけど」
ジムニーも首を傾げる。
「集まった中でも魔力が弱い、力しか取り柄がないような私たち3人に城へ向かうように言ったんです。私たちは使えないと思ったんですかね…?残った者たちはグランツに呼ばれ、1つの部屋に入って行きました」
「…魔王、ひょっとするとこれは」
シェルダンは薄い笑いを浮かべた。
「ヤツは『儀式』を行おうとしてるのかも知れませんなぁ」
「…すでに行った後かもな」
ルウは呟いた後、部屋に声を響かせた。
「クロエ!この部屋の様子を見てるんだろう。すぐに来い」
水晶玉で見ていたであろう、彼女はすぐにやってきた。
「ルウくん、儀式ってもしかして…」
「『指切りの儀式』を行った可能性がある。セスと一緒にグランツの屋敷を調べてきてくれ」
「…っ」
彼女の白い顔が青ざめた。
『指切りの儀式』??
「それは当たりかもねぇ」
そこへ、欠伸をしながらセスもやってきた。
「シェルダンが来てるっていうから、挨拶にきたんだけど」
「これはセス様。ご機嫌麗しゅう」
「相変わらず不気味な面構えだなぁ」
「恐縮です」
「当たりって…?」
挨拶を交わす2人の間にクロエが入る。
「聞いた話。グランツの屋敷に沢山魔族が集まったみたいだけど、入ったけど出てきてないってさ。そういう情報をつかんだの」
「そういう事は早く言え」
不機嫌そうにルウが言う。
「聞いたの昨日だもん。明け方帰ってきて、さっきまで寝てたし」
「じゃあ目を覚ましてきてもらおう。グランツの屋敷に指がない死体がゴロゴロしてるかも知れないからな」




