24.胸のど真ん中に愛を
一方的に帰れ、ではなく、帰るか?という尋ね方にあたしの心は暖かくなった。
あたしの気持ちを尊重しつつ、ここで争いに巻き込まれる心配もしてくれてるんだろうか…?
「あたしは、それでも…ここに残りたいと思って…」
「シャロ」
メルがなんとも言えない声であたしの名を呼ぶ。
「じゃあ、決まりだな」
やけにきっぱりとルウが言った。
ん?
「ここで魔界の役にたってもらう」
ん、ん?
魔王らしく、堂々とした宣言だった。
「オレの役にたってもらう」
そして、妖艶とも言える微笑みを見せる。
あれ?
クロエを見ると、彼女は顔を引きつらせている。
セスを見ると、あ〜あ、みたいな表情をしている。
メルは無表情であたしを見つめている。
ぽかぽかした胸はスーッと冷めていき、改めて魔王の笑みを見つめ返す。
「えっと…それってどういう?」
「グランツとの戦いは避けられないが、オレは下々の者が巻き込まれたり、土地が荒らされるのはごめんだ。影で魔王らしからぬ平和主義者と揶揄する者もいるが、どうでもいい」
「それは素晴らしい考えだと思うけど…」
まだ真意がわからず、あたしはおずおずと同意する。
「グランツの胸に、お前の言う『愛』とやらを撃ち込め」
「えぇっ!?」
ルウの言葉にあたしの声はひっくり返った。
「ラブ&ピースな解決方法だねぇ」
食事を再開しながら、セスがのんびりと言う。
「いやいやいやいや…」
あたしは激しく首を振る。
あんな強い人に撃ち込んだりできるだろうか…?
そもそもあの人に愛の力なんて届くの…?
「魔界でキューピッド活動をしたいんだろ?この世界で一番荒れてるやつに愛を届ける。素晴らしいことじゃないか」
ルウは機嫌の良い猫のように目を細める。
「あんまりシャロを刺激するなよな」
メルが魔王に臆せず声を上げ、
「シャロ、落ち着け、良く考えろ」
動揺するあたしをなだめてくれる。
確かにあたしはその為に魔界にきた。
他の人がやらないことをしたかった。
あたしが弓矢じゃなくて銃を授かったのはこのため…?
あたしの使命は…。
いろんな考えがぐるぐる回る。
「ルウくん、今日のところはこの話は置いとこ?」
クロエがたまらず、助け舟を出してくれた。
「アタシもシャロも怖い思いして、今日は大変だったんだから。シャロは天使なのに、アタシを庇って戦ってくれたんだから!」
テーブルから身を乗り出す妹に、ルウは素直に従った。
「…そうだな。妹を庇ってもらって感謝する。少し休んで考えろ」
そうして、また静けさに包まれた食事会が再開された。
デザートのシャーベットを食べる頃でも、あたしの気持ちはまだ落ち着いていなかった。




