23.連続正解
カチャカチャ、カチャ。
ひたすら、銀色の美しいフォークとナイフの音が響く。
黙々とお肉を切り、口に運ぶ。
洋酒の香りのソースがかかっていて、とても美味しいんだけど…。
目の前にいるのは、涼しい顔の次男に眉を下げてる末っ子。
ちらちらと様子を伺っていた長男は重い空気に耐えられず、大きな伸びをした。
「あ〜あっと!シャロたん!シャロたんは魔界大戦についてご存知かな?」
そして、あたしの方に体を向けた。
「えっと…あまり詳しくは。天魔大戦ならわかりますけど」
ナプキンで口元を拭って答えながら、ルウに視線を送るけど、彼は表情1つ変えず食事を続けてる。
「魔界の歴史は戦いの歴史でもある。魔力の強い一族がその頂点に立つべく争いを起こし、魔王となる。すると今度は違う一族がその魔王を倒すべく、争いを起こす。その繰り返し。不毛だねぇ」
セスは明るく続ける。
「ある時代の魔界のトップはモーチアスト一族だ。魔界でも自分たちの一族以外は奴隷扱い。好き勝手残虐な行為を繰り返した。いくら魔界で、魔族だとしてもないわ〜引くわ〜、となるくらいの暴れっぷりだった」
「そして、天界にも攻めてきた…」
「正解。それが天魔大戦だね」
あたしが言うと、こくりと頷く。
「魔界で暴れるだけでは収まらず、天界にもちょっかいを出し始めた。これはいかん、と立ち上がったのが…」
「ヴォトルザーク一族。うちの家系よ」
クロエが顔を輝かせて、得意げに口を挟んだ。
「正解。モーチアスト一族をねじ伏せ、天界とも協定を結んだ。魔界中皆んなが喜んだわけ。そして、代々、ヴォトルザーク家が魔界を治める事となった。めでたし、めでたし」
なるほど、そうなんだ…ん?
「もしかして、さっきのグランツって男は、モーチアスト一族?」
「はい、正解」
セスはあたしの質問に笑顔で答える。
「一族全部、根絶やしにしてやれば良かったのに」
忌々しげにクロエが吐き捨て、乱暴にパンをむしる。
「大元の奴らは戦争で死んだが、父は女子供の命は見逃した」
そこで初めて、ルウが話し出した。
「監視下のもと、魔界の隅で暮らさせた。長い歴史の中、復讐に来る者もいたが大したことはなかった」
「グランツは…」
「あの男は別だ」
お皿だけに視線を注いでいたルウは、強い瞳であたしを見た。
「突然変異なのか知らんが、あの一族で一番の魔力を持っている。監視は続けていたが、やつがチャンスを伺ってるのは感じていた。…チャンスをやったな、クロエ」
その語り口調が思いの外優しくて、それが…とても怖い。
妹はびくっと体を硬直させた。
「アタシ…そんなつもりじゃ…」
「こっちもチャンスって言ったら、チャンスじゃん。ルウ、グランツをぶっ飛ばしちゃえよ〜」
クロエを庇うようにセスが間に入る。
「争いになれば、いろんな所に被害が出る。父は未来永劫、魔界の安定と発展を願っていた」
「そう、オレじゃ無理だから、ルウに託した」
わざと拗ねるそぶりのセスを気にせず、ルウは続ける。
「…天使。天界に帰るか?魔界は再び戦場になるかも知れないんだぞ」




