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らぶがん いず べりぃぐっど。  作者: 源小ばと
21/52

21.恐怖

「なんの悪い冗談なんだ?」


男性は続けて話しかけてくるけれど、親しみなんてゼロだ。

肌がビリビリする程の敵意、悪意を感じる。


あたしが黙ったままなので、軽く肩をすくめて部屋を見回した。


「天使に部屋を与えてキューピッド活動?魔王の三兄妹は揃いも揃ってバカばかりだな。そんなやつらが魔界を仕切ってるなんてゾッとするね」


「…あの。何のご用ですか?」


放っておいたら三兄妹の悪口が延々と続きそうなので、素っ気なく口を挟む。


瞬間。


男はあたしの前髪を片手で握り、力を込めた。


「お前はセスの女なのか?それともルウナリィの女か?」


髪を引っ張られた痛みで顔をしかめていたあたしは、その言葉で長身の男を睨みつける。


「…どっちでもないけど?」


「天使のくせにそんな顔もできるのか」


男がニヤリと笑ったその時、あたしと彼の間に何かがするりと入ってきた。


そしてそれは眩しい光線となる。


「!」


男の手が離れ、あたしも数歩後ろへ下がった。


「なんでアンタが城内にいるのよ!」


まだ目が開けられないけど、声でわかる。

クロエだ。


激しいけれど、緊張の色もにじませている。


「どっちの女でもないが、クロエのお人形さんってところか?」


男のあざ笑う声も聞こえた。


そっと瞼を開くと、中央にくまのぬいぐるみが落ちている。

これがクロエの力で強く光りを放ったんだろう。


「早く出て行きなさいよ!」


クロエは続けて怒鳴る。


「ガキは向こうで遊んでろよ」


男が手でしっ、しっ、と追い払う真似をした。


「ふざけんな」


白い肌を怒りで赤く染めたクロエに呼応したように、転がっていたぬいぐるみが2メートルくらいの大きさに変化をした!


そして威嚇をするように体を震わせ、牙を剥く。


「こっちのセリフだよ」


男が動いた、と思ったその時。


ぬいぐるみはバッタリ床に倒れ、たちまち元の大きさに戻ってしまった。


何をしたか、全く見えなかった…

と、ゆっくり驚いてる暇もなく、男はクロエに向かっていく。


「メル!」


あたしの意図に反応して、メルはすぐさまクロエに防御魔法を放つ。


ギリギリ間に合ったけど衝撃が強かったのか、クロエの小柄な体は壁にぶつかる。

男が何をしたのか、早くて全く見えない…!


男はしゃがみ込んだクロエになおも近づく。


頭で考えてる暇はない、体で反応するしかない!


そう思った瞬間、あたしの力が内側で高まった。


クロエを抱え、脇に飛びのき、銃を取り出すと光線を放つ。


「!」


男はそれを咄嗟に避け、あたしから距離を置く。


クロエが先程いた壁はヒビが入り、ボロボロと崩れ落ちていた。


…危なかった。

といっても危ない状況は続いている。


銃を握る手が汗で湿ってきた。


クロエは瞳に強い光は相変わらず宿っているけど、力の差を痛感してるだろう。


「銃…?最近の天使は弓じゃなくて銃が流行りなのか?」


男はあたしの机に腰掛け、首を傾げる。


「…隙をついて逃げるしかないぞ」


メルが囁くけど…そんな隙もあたしたちにくれるだろうか?


少し弱気な気持ちが浮かんだ瞬間、強い衝撃にあたしは床に転がった。視線を走らせると、メルの体も右の壁に飛び、クロエは左側に飛んだ。


男は机に座ったまま、ニコニコしている。

その笑顔にゾッとした。


全身に鳥肌をたつのを感じた。


あたし…今まで生きてきて、初めて。

恐怖を感じているんだ…!




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