表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バイト先は異世界転生斡旋業 ~えっ、スタッフにはチートも魔法も無いんですか!?~  作者: 笠本
第一章 【募集】異世界転生斡旋業(現地派遣スタッフ) 勤務地:ファンタジー世界◎ チート・魔法スキル不要! 愉快な仲間が待ってます♪
4/61

第4話 初戦闘

 チンピラに対して背後から右手を突きつけた形の少女。

 背丈は僕と同じ程度。少し茶色がかったショートヘアは左側だけ三つ編みのおさげに纏められている。やや大きめな黒縁メガネは美人と言って間違いのない整った顔に、愛嬌を加えている。


 どこか不敵さというか期待感を含ませた笑みを浮かべる少女。非常時だというのに思わず見惚れてしまう。僕の視線を追うようにチンピラが首を回す。

「あん? 何だテメエは!」

 チンピラが僕を掴んでいた手を離し、少女を恫喝。


「何だその手は! ボコられてえのか!」

「警告するまでもなく強盗ですよね、これは。うんうん、不可抗力ですよこれは」

 相手に腕を突きつけたままの姿勢。まったく怯む様子もない少女に、男が怒りをあらわに迫る。


 マズイ。勝てるとは思えないけど、せめて少女を守るくらいはしなければ。

「逃げて!」

 叫びながらチンピラの背中にしがみつく。


 その瞬間、「ファイヤ!」という少女の叫び。と共にジジッと音がして視界の隅に青白い光が発生した――――突如身体に走る衝撃。足の先から背骨、頭までにビリッと電気が流れたような。

 そのショックに僕は意識を手放す…………

 ゆっくりと地面に倒れ込みながら「ああっ!」と大口を開けて慌てる少女の顔を見たような気がする…………



     ◇◇◇◇◇


「はっ」

 目が覚めて、視界に入ってきたのは毎日自宅で目にしていた板張りで所々穴が空いた天井ではなかった。ずっと高い位置にある正方形の内装ボードが組まれたホワイトカラーの天井。ボードの接合部分には火災報知器。

 

「知らない……子がいる」


 違う世界に来たからにはとりあえずテンプレやっとこうとした僕の意識は、横側に引きつけられた。

 僕はどこかのオフィスの片隅、簡易的な応接室という感じのエリアの長いソファに寝かされていた。隣接する一人用ソファには携帯ゲーム機に興じる幼女がいる。


「おらぁあ! ハリセンと44マグナムを抱えたグッ○・ジッへの走りは誰にも止められんのじゃあ!」

 勇ましい喚声(かんせい)をあげるのは青色の上下一体化したローブに身を包み、長い銀髪を赤いリボンで括り、黒いサングラスをかんざしの如くに後頭部に挿し込んだ、見た目は可愛らしい幼子。


 ゲーム画面を覗き込むと手足が付いた青色の針刺し(ピンクッション)がハリセンとマシンガンで、敵キャラらしいモヒカンや武者を惨殺していた。アクションゲームらしいがどういう世界観なんだ。


「うぬ? 気づいたようじゃの」

 半身を起こした僕に顔を向けた幼女は、そのまま首をひねり部屋の奥へと声をかける。

「おーい、ゆづー。こやつ目が覚めたぞい」

 まるでアニメキャラみたいな喋りかたをする幼女。ただ、見た目とは裏腹に堂々とした態度。何というかその奇妙な喋り方が板についていた。

 それから幼女はゲーム機をローブの中にしまいこむと、てくてくと部屋の外へ出ていった。


「お待たせですよ~」

 入れ替わるように給湯室らしき一角から近づいてきたのは、先程チンピラに絡まれていた時に現れた少女。


「君は!」

「あら、おはようございます」抱えていたペットボトルの水やお茶をデスクに置きながら微笑む少女。

「街中で突然倒れちゃうから、ここまで運ぶのに苦労しましたよ」


「やっぱり。あそこでチンピラに立ち向かってくれた人だよね。あれから大丈夫だった?」

「ふふぅ、あんな不良くらいどうってことありませんよ。一撃です。道の隅に寝かせて、近くに落ちてたビールの空き缶を添えて酔っぱらいに見せかけておきました。しばらくするとどっかからやってきた人達に身ぐるみ剥がされてましたよ。街中なのに治安が悪くて怖いですねえ」


 語られる予想外なチンピラの末路。少女の手で倒されたらしいが、それが意味するのは……

「あれってスタンガンとか?」

 僕がチンピラにしがみついた時の衝撃。あれはこの子が反撃した巻き添えをくらったんじゃないか。


 すると少女からは意外な言葉。

「その反応。やっぱり真上さんは他所から来たんですね」

「僕の名前! それに他所からって……」

 思わず身を乗り出した僕に、彼女は今から説明しますよと言いながら対面するソファに座る。


「まずは自己紹介です。私の名前は藤沢弓槻(ゆづき)

「真上圭一です」


「さてさて。色々疑問があるでしょうけど。もう察しているようですが、ここは真上さんのいた世界とは別の世界です」

 僕は頷く。でも彼女がこの状況を知ってるのは何故だろう、その疑問はすぐに判明する。


「失礼ながら財布とスマホを預かっています。真上さんの名前や、分枝世界出身というのもそこから割り出しました」

 言われてポケットをまさぐって、持ち物が無くなってるのを確認。藤沢さんが後から返しますからと一言。


「お札の肖像が違うのと、会員証やレシートからは元号のズレと、住所が番地レベルで違いが発生しているのを確認しました。総合すればお札が切り替わった1984年以前で枝分かれした分枝世界でしょうね。データベースに照会中ですが、おそらく未発見の世界です」


「ぶんし? データベース?」

「分かれる枝って意味で分枝です。平行世界やパラレルワールドって言いかえれば通じますか?」

「うん、分かるよ。よく似てるけど少し違う世界ってことだよね」

「はい。それでデータベースというのは、真上さんのような他所の世界からの漂着者……事故による転移者って意味ですが、そういう方達の元の世界の情報をまとめてるんですよ」


 驚きである。僕の突飛な状況があっさり受け入れられるだけでなく、それへの対処体制まであるなんて。

「じゃあ、その僕の世界への戻り方ってのは分かるかな?」

「残念ながら新規の世界ですし、瞬間的な穴でしたから肝心な座標が取れていません」

「穴? 座標?」

 何となく分かる気もするけれど。


「穴は自然現象、稀に人為的に……で時々開く他所の世界へ通じるトンネルだと思ってください。この世界では限定的ですが穴を感知できますし、規模によっては相手の世界の位置座標が取れて、転移できる可能性もあるんですよ」

「僕はその穴ってのを通ってここに来たってことなんだね」


 だが藤沢さんはそこで首をかしげる。

「状況からするとそうなんですよね…………。警告が出た区域にドンピシャリで真上さんがいたわけですから、無関係って事はないはずなんです。でも時間もサイズも、検知されたスケールからすると人や生物が通り抜けてくるはずないんですけど…………」

「僕の感覚だとほんとに瞬きする間に、って感じで世界が切り替わってたんだけどね」


「まあ詳しくは専門部門で調べるでしょうけど…………確定なら監視体制の組み直しですね。早百合さんキレそう」

「早百合さん?」


「ええ、私の上司で先生で……」

 そこで部屋の反対側でガチャっとドアが開く音。


「ほい、連れてきたぞい」

「あら、あなたが圭一君ね」

 ひびきのよい女性の声。顔を向けると開かれたドアのそばには先程の幼女と、長身の美女が立っていた。楕円の縁無しメガネの奥から青い瞳が僕を興味深げに見つめている。


 うわあ、心の中で感嘆のため息。

 後部で結われ丸く纏められた、やや暗みがかった金髪。白い長袖ブラウスからスラリと伸びる白い手指。豊かな胸部はブラウスのリボン状の前立てで美しく仕上がり。

 僕を見下ろすかのような長身を支えるのは黒いタイトスカートに薄手の黒タイツに覆われた脚線美。まさに教師や敏腕秘書といった佇まい。


「んっ?」

 見惚れて返事もできないでいる僕に、違ったのかしらと小首をかしげる仕草も優美。

 

「早百合さんです」

 藤沢さんが冷めた声で告げる。


「岡島早百合よ。よろしくね」

 早百合さんはそう言って愉快そうに微笑み、藤沢さんの隣に腰掛けた。


「さて、圭一君。いきなりのことで混乱してるでしょうけど、それでも私の所で保護できたのは不幸中の幸いね。あなたが遭遇した穴は通常ならスルーしてるスケールだったんだけど、偶々出勤途中のゆづちゃんが通りがかって、ちょこっと確認してくれたのよ」

「ご褒美期待してますよ」

 藤沢さんはそう言って大きな胸を張った。


「あの、穴が感知できるとか聞きましたし、データベースが作られてたりとか、この世界って僕みたいな存在は珍しくないんですか」

「そうよ。実際はあなたの世界でも表に出てないだけで、同程度には漂着者(転移者)はいたでしょうけど、受け入れ体制が作れてるとこは珍しいと思うわ」


 受け入れ体制という言葉に、どうやら最低限の保障は用意されるみたいで、ちょっと安心する。

 促されてテーブルに用意されていたお茶を飲み、一息つく。


 そうしてようやく気になったのが、この二人の立場。藤沢さんは外見は女子高生だけど穴を確認に来たり、漂着者のデータベースに当たったり。岡島さんはそんな彼女の上司だか先生だかと言っていたが、どういう関係だ?


「岡島さんっていったいどういう立場の方なんですか?」

「早百合で良いわ。大抵の世界でサユリで通してるから」

「大抵のって、ああ、平行世界……えっとこっちでは分枝世界って呼んでるんでしたか。そういう他所の世界と実際にコンタクトとってるんですね」


 結構気軽にすごいこと言ってるぞ。そう思ったけど、続く藤沢さんの補足にさらなる衝撃が。


「そっちもありますけど、早百合さんの場合は異世界に勇者とかで派遣されてるパターンが多いんですよ」

「異世界!? 勇者!?」


「ええ、分枝世界は基本的に地球の上で現代文明築いてる世界ですけど、異世界はもっと全然違う文化で、土台の惑星や物理法則から違ってるような世界ですね。分かりやすいとこだとゴブリンやドラゴンみたいなモンスターがいて魔法で倒せるような世界です」

「あるの異世界!?」

 目を見張る僕に、藤沢さんがさらなる驚愕を()ぎ足す。


「そもそもここ、異世界への転生を斡旋する組織ですよ」

「ええええっっ!!!!」

『岡島早百合』『藤沢弓槻』――――

 早百合の名前は少女漫画家竹本泉先生の平行世界放浪わちゃわちゃSF「さよりなパラレル」の主人公の岡島さよりからお借りしました。主人公の真上の姓もさよりが気になる男の子、真上シリーズ(各平行世界に真上の名を持つ少年が存在)から。

 藤沢弓槻はセガのゲーム機メガCDで出た竹本先生のインタラクティブコミック「ゆみみみっくす」の主人公、吉沢弓美から。

 作者が初めて読んだ竹本作品であり、最も繰り返しOPを見たゲームタイトルであります。


 第一話で「縫い子の『ぶぶぶ ぶるる』さん」というフレーズがありましたが、それもゆみみみっくすに出てきた異世界の人の仮名(?)です。 正式名が皆上手く発音できなかったという展開が。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on 【長編】

『バイト先は異世界転生斡旋業 ~えっ、スタッフにはチートも魔法も無いんですか!?~』

『めざせ9999pt! 冒険者はなろうランキングを登る ~よーし皆! 今日は『パーティー追放』に挑戦するぞ!!~』

異世ばと! ※スーパーなろう大戦に作者オリキャラが参戦する話です(ハーメルン掲載)

皇帝ハルトの理想都市 ~大陸統一のご褒美に全種族をあつめて街まるごとハーレム築いてみた~(ノクターン掲載)

デスです! — フルダイブ型VR・RPGでデスゲームに巻き込まれたので実況配信しちゃいます! なおR18タイトルなのですでに社会的に死亡Death —(カクヨム掲載)

【短編】【中編】

さめ!サメ!鮫!? -魚類最強は異世界でも最強だった-

乙女ゲーの主人公になりました/ていうか押しつけられました

勇者パーティーから追放されたうえ幼馴染に奪われた話(NTRフリー作品:安心してお読み頂けます)

外れスキル『努力』はひらめき一つでチートへと昇華する!

不遇職『ニート』になった俺は家族から罵倒され追放されたが辺境の地でチートに目覚めてスローライフを満喫中……だから、今さら戻ってこいと言われてももう遅い……遅いからな!

クラス召喚された僕らは魔力判定オーブに挑む

ゲーム風な異世界に鍛え上げた最強軍団でやってきた ※ただし全員俺(複アカ)

この泉に落ちた幼馴染は『お姉さんぶってあなたを甘やかしちゃう世話焼き系』ですか? それとも『無自覚装って密着してきちゃう からかい系』ですか?

魔王です。勇者に倒されたはずが決戦前に戻ってて、勇者パーティーが内紛中。なんでもクリア後に結ばれるヒロインを全員分制覇しようとしたのがバレたとか。お前も隠しヒロインだと言われ私も参戦。悪は倒された。

クククッ、勇者よ。ヤツは我らの中で(あみだくじ)最弱よ ~魔王と四天王のサバイバル戦略~

ギャルゲーの主人公の親友キャラに転生したら、俺がヒロインとして狙われていた

このデスゲームはR18に指定されました ~冒頭でモニターにA◯を放送事故ったせいで全員がエッチなスキルを取得してしまった!~

無実の断罪婚約破棄からの追放ルートにのった私は最高の修道院を用意しました

スマホを落としたメリーさん

同人ゲーム(R18)の悪徳貴族に転生したのでジャンルを純愛に変更しました ※なお原作は大好評につき新ヒロイン追加でシリーズ化してる模様

男女爵カール・ホイスラーは町娘の結婚式で初夜権を行使さる

男女比1:30世界でパパ活男子やってます(ノクターン・カクヨム)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ