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バイト先は異世界転生斡旋業 ~えっ、スタッフにはチートも魔法も無いんですか!?~  作者: 笠本
第二章 神様にもらったスキル鑑定・奪取・譲渡のチート3点セットで異世界でスキル屋さんやってます
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第36話 お茶会

 ファムに異世界の管理者の情報をはぐらかされたと誤解したローザさん。話を切り替えにくる。

「代わりにな、そっちの責任者、早百合はんいうんやろ。その人について何でもいい、教えて欲しいんや」

「何でもって言われても」

「出身地でも、好きなお茶の銘柄でも、贔屓の芸能人のタイプとか、そんな些細な事でええ」


「何でそんな事を? それに直接聞けばいいじゃないですか」

「連絡はもうちょい待ってや、最終的には顔つなぎしてもらうけどな。その前にオモテナシの準備をしときたいんや」

 オモテナシとな?


「そや。二つの世界が同じ異世界に出張ってきてるんや。縄張りに関して話つけなあかんやない。ウチらはこのまま調査を続けたいんやが、この世界に先にそちらさんがツバつけたんなら仁義通さなあかんやろ。ウチらも現地住民に迷惑かけるつもりはないんやけど、そちらと違って自前の商会立ち上げたりとそこそこ絡んでるからね。その辺の流儀も話あわんと」


「なら尚の事、早百合さんと直接話して下さいよ」


「早百合はんはそちらの異世界管轄事業の大立て者なんやろ。接触した時点で半分は公の交渉になってまうからね。それまでに少しでも情報が欲しい。好みの男衆を揃えて趣味のお茶でもてなして、気分良う交渉に臨んで欲しいんよ」


 ファムじゃないんだからそんなので釣られるかな。僕がとやかく言う事でもないけど、早百合さんに男を侍らす手伝いなんてしたくないぞ。


「何やのそんな顔して。こんなのハニートラップでもない外交の基本やろ。もちろんお兄ちゃん方にも相応のオモテナシはさせてもらうで」

 そう言うとローザさんが身を乗り出して僕と藤沢さんの間に身を割り込ませてくる。押し出された山崎さんが空いた席へと移動。


「どうや、こういう渉外言うんはまず現場の者同士が膝突き合わせて進めとくもんやろ」

 そう言って肩から手を回して強引に僕を抱き寄せ耳元に囁いてくる。

「ウチとも親睦深めようやないの。イロイロとな」

 狭い車内、逃げ場のない状況で僕は柔らかな身体を密着され、ただ狼狽えるばかり。

「あわわああ」


 嬉しい、嬉しい、けど今はマズイ。藤沢さんの冷たい視線が突き刺さる。

 冷静に、冷静にならなくては。そうだ、先日早百合さんに迫られたばかり。あの猛攻に比べればっ!…………


「のうのう弓槻。圭一、今こやつと早百合を比べた顔しとったよな」

「してましたね。早百合さんと比べると物足りないよなあみたいな」


「この自分を誘惑したいならDカップ以上に転生してから出直すんだなって、もう完全に上から目線じゃよ」

「…………ふんふん。ああ、こないだ早百合がブラウスのボタン外してたのって、そういうことだったんですね」

「あわ!?」


「しとったなあ。あ~、たしかに圭一からすりゃ戦場でドラゴン目撃した後にオークと対戦すると、まあこれくらいならちょろいぜ思っちゃうのも無理ないかものう」


 ローザさんの頬が引きつる…………これはさっき膝蹴りが飛んできた時の反応だ。

「何やー! そんなに男は金髪ボインが好きなんかー!」

 いきなり襟首締め上げられる。

「やっぱり! ちょ、待って待って、僕はそんなつもりは……」

 かすかなのもそれはそれでいいと思います。


 いや、待て……。今ローザさん何て言った?

「ローザさん!」

「何や」


「何で早百合さんが金髪セクシー淑女気取り痴女系メガネ女教師スタイルって知ってるんですか?」


「……いや、そこまで言うとらんよ」

「金髪……髪の色は知ってるんですよね」

「そりゃ駐在員さんから聞いとるからね」


「藤沢さん、この世界の斡旋が開始された頃って早百合さんはどういう『格好』だったの?」

「ああ……そういう事ですか。ええ、早百合さんは最初からここの担当のはずですけど、今の『格好』になったのはここ数年くらいですね。途中、別の『格好』になってた頃もありましたけど。さらに言えば早百合さんって公の場には老婆に変装して出てましたからね。普通のお客さんはそっちのイメージでいるはずですよ」


 この世界に来てスキル屋(挿し木屋)を訪れた時の事。石川さんは早百合さんの今の姿に会ったのが初めてであるらしき反応だった。各地から報告書を取りまとめる石川さんと早百合さんとは四年毎に顔を合わせていただろうが、他の国の駐在員とは対面していないという話ぶりだった。

 だったら遠くにいる駐在員が早百合さんの最新の外見をどうやって知ったっていうんだ?


 ちょうどファムの言葉でその点が補足される。

「そういやその頃の早百合って黒髪藍色袴のポニテ剣客スタイルでぶいぶい言わせとったはずじゃわ」

 東の国で帝にお世話になってた頃かな?


「ふう」とローザさんは両手をバンザイする。

「本当はね、監視しとったんはもうちょい前なんよ。帝国の駐在員から今の頃に転移してくるはずやって聞いてたから。したら一昨日ウチらのとはちゃう転移ゲートが開いた反応があったんで、街中探し回っとったんよね。承知しとるやろうけどお嬢ちゃん達の外見変える魔法、カメラ越しには効かんかったから、案外簡単に見つかったんよ」


 偽装魔法は光学機器を誤魔化せない。僕にとっては初耳だが藤沢さん達も反論はしない。そういう制限は実際にあるのだろう。


「じゃあ早百合さんにその時に声かければいいじゃないですか」


「言うたやろ。まだ方針が決まっとらんって。最悪その早百合はんに接触したら問答無用で叩き出される恐れもあったからね。まだ情報収集の段階や。本来は接触は当面先やったのにお兄ちゃんの件があったから、渋々動き出したんよ。

 調査事業の目的が神隠しに合った同胞の探索、救出ってのがあったから、お兄ちゃんの救助はその一環ですぐ動けたんやけどな」


 まさに遠い異国の地で出会ったもん同士助け合わんとな、そう言いながらローザさんは再び僕の肩に腕を回す。


「嘘……ですね」

 藤沢さんが冷めた目線でそう告げた。

「さっきからあなたの言葉には嘘ばかりです」

 ローザさんが僕の肩を抱いたまま、ほへっと半口を開ける。


「そもそもですよ………言葉も分からない世界に来て、半年で商会の立ち上げ? おまけに辺境伯領の上層部にも渡りを付けられる程に影響力を持って? できるわけないでしょう。少なく見ても年単位の時間がかかってるはず。帝国の駐在員に問題無しと報告させたからそれに合わせたんでしょうけど」


 そう……なのかな。異世界小説読んでると一週間もあれば建国くらいしてるけどな。いや、さすがに異世界言語翻訳スキルやチートスキルが無いともっと時間はかかるか。

「帝国の駐在員が裏切ったって事?」


「それは当然転ぶでしょう。過去の契約に従って見返り無しに義務だけ課した相手と、現代科学の産物を持って現地社会への介入を厭わず幾らでも利益提供できる相手。比べるまでもないですね」


「だけど早百合さんと交渉すればすぐバレちゃうんじゃ?」

「最初から交渉なんてするつもりはなかったんでしょうね。ここの時間で四年に一回しか来ない相手ならどうとでも隠せます。でもこの世界で日本語スキルが発生してしまったから慌てて辻褄合わせに走ったって所ですか」


「何や、誤解しとるみたいやけど帝国の駐在員さんは帝都に居るんやで。ウチらは帝国内でも王国(ここ)よりの土地で活動しとったんや。帝都まで調査に出向いて駐在員さんに会うたのは最近の事やで」


「どうでしょうね。そもそも真上さん救出までは手札が欲しかった――で納得できますけど、直後に私たち丸ごと攫っていくなんて、友好関係築くつもりがないのが丸わかりですよ。私たちの事も監視していたようですけど、なら早百合さんの不在も承知してた上での強行だったんでしょう」


「そない敵視せんといてや。ただ交渉の場をホームグラウンドに持ち込みたい――――」


「定時連絡の時間です」藤沢さんがローザさんの言葉を断ち切る。

「早百合さんに接触があったことだけは伝えさせてもらいますよ」


 藤沢さんはそう言って胸ポケットを開きスマホを取り出した。

 持ってきてたんだ……というよりこんなインフラ整ってない世界でこれで早百合さんに連絡とれるんだ。


 僕がそう驚いていると、ローザさんは別にどうとでもないという風に反応する。

「おっ、スマフォンやね。そちらにもあったんや」


 藤沢さんがスマホを操作し始めるや、向かい席の山崎さんがそれを引ったくるように奪い取る。

「山崎!」

「ですが!」


 山崎さんがローザさんから冷ややかな目の藤沢さん、そして僕の顔に視線を移していく。

「申し訳ありません。子供のハッタリに引っかかりました」


 そういうことか……スマホは当然ながら使えなかった。でもローザさん達が僕らに早百合さんへの連絡を許す気がないのは判明した。


 ローザさんが大げさに顔を覆い嘆く素振り。

「やっぱりウチらはこういう嘘つくんは向いてないんよ」

 そううそぶくと、抱き寄せていた僕の肩をポンポンと叩く。


「気いつけえよ、随分勘がいい娘や。お兄ちゃんもおちおち浮気は出来へんねえ」

 そう言ってすくっと立ち上がる。その時になっていつの間にか馬車が停止していた事に気づく。


「まあ元々無理があったんや、しゃあないやろ。それに……合流地点まで大人しゅうしてほしかっただけやからな。ちょうどええ。ここで乗り換えや。悪いがこのまま一緒に来てもらうで」


 従うしかなかった。馬車のドアが開かれ、目に入ったのは明らかな軍服姿の男達。その手には小銃が抱えられていた。


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