第17話 美人な先輩とデートした
「おにぃ、遅かったですね」
「……ああ」
電車を逃したこともあって、帰るのが遅れた。
玄関を開けると、頬をぷくっと膨らませた可愛い妹が。
「るー、今日勘違いしちゃってて、おにぃは部活かなーって思ってたんですけど、よく考えたら今日から部活動禁止だったんです」
「だな」
「駅で会わなかったので、おにぃが先に帰ったんだと思ってたんですけど……いませんでした」
「……」
みなと坂市は田舎なので、電車の本数も少ない。
1時間に3本もあれば多い方だ。
だから瑠璃は4時半の電車で帰ったんだろうが、俺が乗ったのは5時半。
3本逃したのでちょうど1時間の差である。
「放課後、ナニかしてたんですか?」
「え?」
もしかして、鋭い妹は何かあったのではないかと疑っているのか?
ここで何もなかったと嘘をついてしまえば、瑠璃からの信頼を失ってしまうかもしれない。だが逆に、真実を伝えてしまったら……さらに信頼を失うことになってしまうだろう。
だから俺は嘘をつかずに一部の真実だけを話した。
「実は先輩に連れられて部室に行ったら、生徒指導の先生に見つかって説教を受けることになったんだ」
「そんな……」
口をポカンと開けて驚く瑠璃。
そうだよな。優等生であるお兄ちゃんが説教を受けるなんて、あり得ないことだもんな。
実際のところ俺は悪くないが、いちいち説明するのも面倒だ。
「おにぃは絶対悪くないです。悪いのは全部、鹿内先輩なんです」
「まあ……それは否定しないけど」
「やっぱり! るーが生徒指導の先生に言いましょうか? 猪石先生は1年生の学年主任なので――」
「瑠璃は優しいな。でも、もう終わったことだから何もしなくていいよ」
「優しいのはおにぃの方です。それで、本当は何があったんですか?」
「……」
光沢の消えてしまった瞳。
どうしてしまったのか。
真顔になって聞いてくる瑠璃。
俺の言ったことを信じていないのか、それとも……。
「まさか……」
慌ててスマホを操作し、グリーンガールのツブヤキを確認する。するとそこには――。
《今日の放課後、Sを襲ってしまった》
《Sの下半身は素直だったから、このまま私の処女を捨てようと思ったけど、Sは本気で怯えてた》
《私、取り返しのつかないことをしちゃったのかな?》
《私は誰よりもSのことを愛してるのに、Sはこんな私を拒絶してた。当然だよね。そんなの、私が1番わかってる》
……なるほど。瑠璃が知っているのも、これが原因かもしれない。
「おにぃ、どうしたんですか?」
「いや……」
「もしかして、この前るーがお勧めしたゲームをやってるんですか?」
「……」
とりあえず瑠璃には全部正直に話そうと思った。
大変なことを乗り越え、テストを終えた俺。
緑子とのこと、先輩とのこと、瑠璃とのこと。
それらを一旦頭の隅に置き、テスト勉強に没頭した結果、いつも通りの結果が出せそうだ。
そしてテストが終わってやってくる日曜日。
俺は鹿内先輩との約束があるため、朝から身支度をしていた。
「おにぃ、今日はどこに行くんですか?」
「ちょっと散歩に……じゃなくて、先輩とカフェに行くつもりだ」
妹に嘘はつかない。
やましいことでもないので正直に言った方がいいだろう。
「にゃにゃ!? だ、ダメです!」
「カフェに行くとは言っても、部活の延長というか、カフェでトランプをすることになってる」
「それはおにぃとデートするための罠です! るーもついていきます!」
「大丈夫だって。瑠璃は家でゆっくりしていてくれ」
「むぅー。おにぃはるーと一緒に街を歩きたくないんですか? るーは寂しいですぅ……」
しゅんとなる瑠璃。なんだか可哀想になってきた。
「それじゃあ、今度一緒に映画でも行くか。だから来週になるまで我慢していてくれ。できるだろ?」
「……約束ですよ?」
瞳をうるうるさせるなんてズルい。
「もちろん」
「映画観た後は、一緒にカフェに行きましょう」
「わかった」
「その後は夜ご飯も食べますよ」
「そうだな」
ようやく折れてくれたらしい。
瑠璃の許可をもらわなくても行くつもりだったが、カフェまでついてこられても困る。だから少し安心した。
みなと駅前。
先輩は俺よりも先に来て待っていた。
まだ約束の時間である10時の15分前だが、もう着いてるとは……ここは奢ったりした方がいいんだろうか。経験がないからよくわからない。
デートではない。
だが、血の繋がりのない男女が二人で遊ぶのは、ある意味デートだよな?
「すみません。遅れました」
「まだ15分前だよ。あたしが待ちきれなかっただけだから、気にしないで」
鹿内先輩の私服を見たのは初めてだ。
無論、休日にこうして二人で会うのも初めて。
前回の部活では濡れたパンツを見せられ、えっちな先輩を知ったので、正直心臓はドキドキである。
白いブラウスにデニムのショートパンツ。そこから覗く長くて綺麗な脚。
「行こうか」
年上の余裕を見せる先輩は、自然な流れで手を差し出した。




