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第9話 戻ってこない紫鶴
※
夜。
九時を過ぎても、帰らない。
十時になっても、連絡はない。
「……遅いな」
俺は、玄関で靴を履いた。
※
駅前。
街灯の下に、紫鶴はいた。
ベンチに座って、スマホを見ている。
「……何してる」
「……先輩」
顔を上げる。
「……逃げてました」
「何から」
「完成から」
白鷺城のことだと、分かった。
「城、完成しましたよね」
「ああ」
「……だから」
紫鶴は、俯く。
「次は、ここを完成させなきゃって……思って」
「……ここ?」
「生活です」
※
帰り道。
並んで歩く。
「完成って、何だ」
「……分かりません」
「じゃあ」
立ち止まる。
「探せばいい」
「……一緒に?」
「ああ」
※
家。
和室に入ると電気をつける。
白鷺城が、机の上で光る。
「……ただいま」
紫鶴が、小さく言った。
「おかえり」
それだけで、部屋は元に戻った。
※
布団に入る前、思う。
城は、もう動かない。
でも、人は動く。
完成しても、
そこから、生活は続く。
白鷺城の次は、
俺と紫鶴の番だ。




