外伝:其の眼に映るは闇の中の光 その1
「どうも、ジェイド・エルンディストだ。基本的に戦闘時の作戦とか考えたり、前衛で戦ったりする。『シンエン』の皆さん、どうぞよろしく。」
ジェイドがファルタと出会うおよそ一ヶ月前、ジェイド・エルンディストはギルド『シンエン』に加入してギルドのメンバーと顔合わせをしていた。
「あぁ、よろしくな。俺はウィリック・クライシス。うちのギルドで団長やってるもんだ。まぁうちの奴らは一癖も二癖もある奴らばっかだから馴染むのに時間がかかるかもしれねえが、お前の活躍に期待してるよ。」
「団長、ほんとに良かったんですか?こんな荒くれ者入団させて。こいつの剣技や頭脳は少し前からある程度話題になってましたが.......こいつは今まで複数のギルドを追放された攻略者ですよ?いくら優れてても問題児を入れるのは.....」
ジェイドは本人の性格や作戦によるギルドメンバーとの仲違いによっていくつものギルドを脱退させられていた。何かしらの罪を犯すことでギルドを追放された攻略者は今までも数人は存在したが、ジェイドのような無罪にも関わらずあらゆる者から反感を買って脱退させられている攻略者は異例中の異例である。
「確かに、経歴だけみたら問題児かもな。だが、直接見るまではまだ決めつけるのは早いと思うんだよな。植物によってそれぞれ育つのに適した環境があるように、俺達攻略者にも才能を発揮するために必要な環境は様々だ。今までが駄目だったからって今回もそうだとは限らないだろ?」
「別に.....今までの奴らは俺の作戦についてこれない雑魚だっただけだ。お前らが弱ければ俺はすぐにでも脱退するけどな。」
副団長の苦言をフォローするつもりでウィリックは語ったつもりであったがそんなことも気にせずジェイドは堂々と悪態をつく。
「そもそもあんた、俺よりも自分が強いって思ってんのか?それこそ慢心だな。いくら経験があっても実力で勝てないやつは見下す権利を持ってねぇよ。」
「あんたじゃない。僕の名前はルーラル・メンデラルだ。ここでは実力以前に上下関係を重視している。新人のお前が俺より立場が上なわけがない。」
「立場?攻略者は実力主義だろ。強いやつが上に立つ、そういうもんだろ。」
「何だと?お前、僕に喧嘩売ってるのか?個人主義の宝の持ち腐れ君?」
「はい、そこまで。お前ら2人はもう同じギルドの仲間なんだ。これ以上言い争うんじゃねえ。見守ってる俺の身にもなれや。」
ジェイドとルーラルの言い争いに嫌気が差したウィリックは無理矢理にでも話を中断させる。
「.....団長、すみません。しかし、やはり僕はこいつの加入には同意しかねます。」
「まぁそう言うな。多分、お前もこいつの戦闘を見たらそうも言ってられなくなる。」
「.....わかりました。とりあえず様子見をします。ジェイド、ついてこい。俺達の拠点を案内する。余計な行動は慎むことだな。」
「へいへい。」
ウィリックも、ジェイドとルーラルの息がなかなか合わないのはジェイドと出会ったときから薄々感じていた。しかし、ジェイドの実力が上位であることも見抜いていたため、ウィリックは無理にでも『シンエン』の実力者であるルーラルと良好な関係を築いてもらいたかったため無理やり案内役を押し付けた。
「ま、期待するとしよう。」
ーーーーーーーーーーー
ジェイドが『シンエン』に加入した翌日。ジェイドの実力や他の団員との連携になれるためにも『シンエン』はCランクダンジョンの攻略に来ていた。ウィリックはジェイドと親睦を深めてほしかったのでルーラルを連れて行かせた。ルーラル以外にも数人の団員がジェイドと共に参加している。ちなみに、ウィリック本人は拠点で待機である。
「いいか、僕たちが今から入るダンジョンは難易度こそそこまで高くないが危険は常に隣り合わせだ。周囲の警戒を怠らずに慎重に進むぞ。」
『シンエン』は決して実力の低いギルドではないのだが、ルーラルの慎重派過ぎる性格もあり、あまりBランク以上の迷宮に入ることはない。むしろCランクでも警戒しすぎて他のギルドから弱気なギルドと思われていたりもする。
「ふぁ〜ぁ、たかだかCランクにビビりすぎだろ。そこまで焦らなくてもいいっての。」
周囲を警戒しながら慎重に進むルーラルたちに対して、ジェイドは欠伸をしながら気の抜けた声で語りかける。
「おい、ジェイド!その油断は何だ?いいか、ダンジョンではいつ何が起こるかわからない。唐突なトラップや魔物との戦闘に常に備えなければ行けないんだぞ?」
「.....チッ。これだから慎重派は好きじゃねえんだ。」
ジェイドはルーラルにひどく呆れた表情で言う。
「お前、攻略者が迷宮攻略の最中に負傷、もしくは死亡する要因でどの要因の割合が高いのか知ってるか?」
「そんなこと常識だ。おおよそ主との戦闘中に起こる割合が5割、道中の魔物や罠による割合が3割、攻略の長期化による飢えや集中力の衰えが1割、その他1割、違うか?」
「流石にそれは知ってんのな。けど、それは迷宮の難易度に関係なく調査された内容によるものだ。攻略者の中で最も攻略に向かわれる迷宮の難易度はCランク、そこそこの難易度である程度の資金を得られるからだ。」
Cランク迷宮を攻略するとおよそ5日〜7日ほどはある程度の生活ができる資金がギルド本部からもらえる。そのため攻略者の多くがCランクの迷宮の攻略に赴いている。
「主による被害割合が多いのはBランク以上の迷宮だ。Cランクの迷宮なら大きな被害にはそうそうならないから記録として報告されない。だからこの記録のほとんどがBランク以上の迷宮での記録だ。Cランク以下のギルドだけの記録なら主による被害は殆どない。最も多いのは長期化による被害だ。実際に、ギルド本部もそれほど難易度の高くない迷宮なら迅速に攻略することを推奨している。」
主にはある程度の知能が備わっている。Cランク以下の迷宮の主は自身がそれほど強力な存在でないことも自分で理解できている。それ故、攻略者に苦戦を強いられるようにするには道中で疲弊してもらう必要があると考える主が多い。そのためCランクの迷宮は主との戦闘よりも道中の攻略のほうが難易度が高いとされている。
「......そんなこと、一体どうやって調べたんだ?一般に公開されてる内容だけなら限界があるはずだ。」
「努力の差ってやつだ。冷静に分析すれば自ずと出てくる結果だ。」
(冷静に分析だと?いくら頭が良くてもそんなこと不可能なはずだ......こいつ、何を隠してやがる?)
ジェイドの言葉が半ば信じられないルーラルはジェイドに不信感を抱きつつも助言通りに先を急ぐことにした。
ーーーーーーーーーー
ルーラルは、正直ジェイドの実力に不安しかなかった。いくら周りが強いと評価しても、そのうちの殆どは誇張されているだけであると思っていたからだ。だから、ルーラルは眼の前の出来事を信じられない。
「お前、嘘.....だろ?」
ルーラルの戦闘スタイルは相手の動きや神術を冷静に分析してから計画的に行動する、チームの頭脳としては優秀な存在だった。今回も、主の動きを確認するまでは守りに徹して確実な攻略を行おうとしていた。だから、ジェイドが主と敵対と同時に突っ込んだときには即座に静止しようとした。
「ジェイド、お前馬鹿なのか!?僕もお前も、この迷宮の攻略は初めてだ!相手の行動がわからない状況で無謀にも攻め込むなんてふざけ過ぎだ!いくらお前が優秀でも死ぬ可能性だってあったんだぞ!?」
「......はぁ、いいか?この迷宮では入口からここまで罠もなければ魔力が多くこもっている場所も殆どなかった。迷宮の中の構造は主の性格や能力に似通っていることがほとんどだ。つまり、入口から最奥に来るまでの内部構造だけで、主の戦闘スタイルが魔法をほとんど使用しないであることは理解できた。だから相手の動きが鈍い序盤の段階で速攻攻撃を始めったってわけだ。」
ジェイドの言っていることは理解できる。それでも、ルーラルは理解できないことがあった。
「お前は、死ぬのが怖くないのか?」
「は?怖いだろ。そんなやついたら頭のネジぶっ飛んでるな。」
ルーラルは敵の脅威に屈しないジェイドの動きに死に対する恐怖がないように感じた。しかし、ジェイドはその問いをすぐさま否定する。
「死ぬのは怖いが、俺の実力ならCランク程度の主に負けると思ってない。今回の主は明らかに近接戦闘を好むタイプだった。お前はどちらかといえば魔道士タイプだろ。なら、呑気に詮索なんてしてたらすぐ狙われる。」
「は?じゃあ、僕のために攻め込んだってことか?僕の、戦闘スタイルを予想したうえで?」
「ああ。俺はお前が気に食わないが、強者が弱者を守れなかったなんて言われるのは嫌だからな。」
ジェイドなりのプライドというものなのだろうか。本人は嫌いでも仲間である意識はあるようだ。ただ、ルーラルはそれ以上に驚いていることがあった。
(こいつ、僕と出会ってまだ2日だぞ?ましてやまともな戦闘なんてほとんどしてない。なのに、僕が魔導士タイプでかつ相手の分析を優先するタイプなのを理解した。それにさっきも、迷宮内部の構造を見ただけで主の能力を理解した。こいつ、どんな観察眼してるんだよ。)
ジェイドが言っていることが嘘ではなかったことを理解し、ルーラルは不満を持ちながらもジェイドの実力を認めざるを得なかった。
過去のジェイドを書くと必ず超性格悪いやつになる。
今回は色々設定が出てきましたがその殆どが後付け設定なのでこれまでの話と若干矛盾してたりするかもしれませんが気にしないでください。




