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世界の終末が望むとき、神々は迷宮を制覇する  作者: 柊ヒイラギ
第二章:戦死者の魂は、狂者を奮わせる
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可能性の話

ペースを守るとは(3日期間空き)

「術者はいるとしたら多分壁の中、もしくは透明になって何処かに擬態してる可能性が高い。俺たちのことをずっと見てたとなると俺たちが視界に入ってないと効果がないっぽいしな。」


「視線は少し感じるけど気配は感じない、多分壁の中の線が濃厚だね。」


 謎の術者による無限の道へ閉じ込める魔法、気配という直感的なものではあるがさほど感じないためどこか壁や天井の中にいると考えていいだろう。


「もし壁の中を移動できるんだとしたら攻撃は殆ど当たらないぞ。視線だけじゃ大まかな位置しかわからないからすぐに逃げられるし追撃もできない....どうする?」


「でもそれって、逆に言えば場所が分かればどうにかなるってこと?なら、あぶり出せばいいだけの話でしょ。封神無法《見通すもの(サーガ)》。」


 エルナが呼び出したサーガの力は周囲にいる敵の場所を暴くというもの、実際に見えるようになるわけではなくあくまで直感的に場所がわかるようになるというもの。


「これなら行けるでしょ、ファルタ。」


「おう、任せとけよ!おい、そこにいるんだろ。隠れてないで出てこいよ!」


 勢いよく飛び出すファルタ、当然敵はその攻撃を見て避けようとする。すると、想像以上に素早く壁の中を移動し、目で追うので精一杯である。


「なんだよ、結構すばしっこいのな。でもそれは普通のやつにしか意味がないだろ。俺に速さで勝てると思うなよ。」


 相手の動きはたしかに早い、しかし爆進(ブースト)という神術がある以上生半可な速度で逃げられるほどファルタは遅くなかった。持ち前の速さで素早く動いたファルタは逃げる相手にリサナウトを突き刺した。


「出てきた....え、まさか()()()が術者?」


 ファルタの攻撃によって壁から出てきたのは人間で言う5歳前後ほどの少年だった。しかしその姿からは想像もできないほどの野太い声を上げ始める。


「なんで....なんでなんでなんでなんで....なんで!なんで場所がわかるんだよ、このままじゃボクはあの人に、オーディン様に殺されるんだぞ!大人しく迷ってろよ!そのまま朽ち果てろよ!なんでボクをたおすんだよぉぉぉ!」


 その術者はまさに子供のように理不尽な理由でわめき始めた。やっていることはかなり悪質であったが当人の本質は幼子と同等のようだ。


「もう知らない、今すぐにでもお前らをみなごろ」


「うっせえよ。」


 大きな声でわめき続ける術者に嫌気が差したファルタはその首を一気にはねた。


「そんな自己満足な理由で他人を巻き込んでんじゃねえ。何がだめだったのか、一回自分を見直してみろ。」


 一瞬で首をはねたため、おそらくファルタの声は届かなかったであろう。しかしそれでも、言わなければいけない気がした。社会という名の理不尽に耐えうる力を身につける大切さを学んでほしかったから。


「悪い、行くかエルナ。」


「うん。」


 二人の気分は正直暗かった。術者とは言え見た目も精神も子供、何が原因でこうなったのかは分からないが子供を殺したのだ。もしかしたら子供のフリだったのかもしれないけれどそんなことを考えている暇はなかった。


「こういう考え方は正直捨てたほうが良いのかもな。」


「どうだろう、少なくとも最低限は必要だと思うよ。この甘さがいつか仇になるかもしれないけど、それでも私だって助けられる命は助けたいから。」


「そうだな、ただアイツはやたらとオーディンにビビってたな。何か非人道的なことでもしてたのか?」


「今は分からない、だから倒しに行くんでしょ。ジェイドたちはもう最奥付近にいるかも知れない。急ごう。」


 ジェイドたちのことも考えてファルタたちは先を急いだ。


ーーーージェイド・レイシャ組ーーーー


(あれが、オーディン。やっぱり威圧感が今まで戦ってきたやつとは桁違いだなぁ....しかし、まさか落ちた先にいるとは流石に思わなかったな。ジェイドもまだ状況が理解しきれてなさそうだし。)


 ジェイドとレイシャが落ちた先は最奥の部屋、そこには主《オーディン》の姿があった。その姿はおよそ30代半ば頃の男性の姿だった。しかし顔つきや体つきからそこらの攻略者よりも圧倒的な実力があるのはひと目で分かる。目の前に二人の姿があるがすぐに攻撃をしてくるわけではなく、ただ一心に力強い目つきで見つめている。


「どうするジェイド?今の所は何もしてこなさそうだけど、ファルタとエルナが来るの待つ?」


「そうするのが懸命だな、今俺達二人で戦っても勝機なんてないに等しい。とりあえず距離をとって」


「騒がしいな。」


 ジェイドとレイシャが冷静に考えているとき、冷たい言葉が場を一気に凍りつけた。その一言でジェイドとレイシャも自然と身構える。その声には威圧と怒号が混ざりあったかのような深い怒りのようなものが含まれている。


「先程から我が宮殿に無断で立ち入っておきながら良くもまあ気ままに騒いでいるものだ。あの愚かな鷲も、非力な術師も、幾度も防げないことが続くのなら、結局はこうなる運命だったか。ところで貴様らは、我を討ちに来た、ということか?」


(愚かな鷲?フレースヴェルグのことか、非力な術師ってのはよくわかんないな。とりあえず受け答えしたほうが良いのかな?)


 視線をジェイドに移すと応えるようアイコンタクトをしてきたためレイシャが代表して応える。


「えーっと、あんたが言ってる通りボクたちはあんたを倒しに来た。本当はあと二人いるんだけど手違いで先に来ちゃったんだよね。もしよければあと二人来るまで待っててくれない?」


 こいつは何を言っているんだ、とジェイドは思った。そんなふざけた要求に応えるようなやつではないだろうによく言えたものだとジェイドは謎に感心する。


「ハ、正直なものだな。なに、恥じることはない、我に臆することなど当たり前であるからな。よかろう、非力なものよ、残りの者が来たるのを待てば良い。」


「え、良いのかよ。だがチャンスだなレイシャ、どうやら意外とオーディンは話がわかるっぽい。アイツラが来るのをゆっくり待って体制を立て直すぞ。」


 オーディンの思わぬ対応にホッとするジェイド、当然ファルタたちがいたほうが作戦の幅も純粋な戦力にもつながるためここは大人しく待つのが懸命であろう。しかしそれはあくまで一般的な行動を取る者の話である。ここにいるのは優秀な剣士と()()()()()()()()である。


「へえ、あんた随分と傲慢だね。それもそうか、いままで攻略者一切出してないからな。でもさ、結果が今まで通りに100%いくことなんてあり得ない。」


「ほう、何が言いたい?」


「ボクたち二人であんたを倒す未来だってあるかもしれないって話だよ。不可能かどうかなんてやってもないのに決めつけてる時点で馬鹿でしょ。少なくともボクは可能性としては有り得る話だと思ってるけど。」


 レイシャは一度ファルタに負けている。しかしだからといってレイシャはファルタが自分より強いとは決して断言しない。あのとき負けたのは当然実力の差もあっただろう。しかしその他にも要因はあっただろう。もしも最初から神物を使っていれば、もしも最初から全力で戦っていれば。非があるのはレイシャなのは自身も分かっている、しかしお互いに全力で戦ってもいないのに優劣を決めつけるのは違うと思っている。

 そんなレイシャが戦闘を好む理由の一つ、戦闘中は自身の神術で相手の動きが手に取るようにわかるレイシャ、だからこそ勝つ可能性も、負ける可能性もある、不確定要素のある戦いを好むのである。


「あんたのさっきの発言、あんたが強いのはびっくりするほど伝わってくるよ。実際少しビビってもいるしね。でも、ボクたちが弱いっていうのは撤回してほしいかな。ごめんジェイド、どうせならボクたちでこいつ倒してファルタたちびっくりさせようよ。」


 そういうレイシャの目はまさに戦闘狂という異名に沿った目をしていた。


「....はあ、お前には呆れるよ、まあでもその意見には賛成だな。ファルタたちよりも上だってこと、見せてやろるじゃねえか。」


 レイシャの発言に呆れながらもジェイドも剣を構える。その姿を見たオーディンは重い腰を上げる。


「貴様らは何がしたい。我を討ちに来たのだろう?なぜわざわざ死に急ごうとするのだ。貴様の発言にも一理あることは認めよう。だがこの世には理不尽というものがあることが理解しきれないのか。我は自身の力を過信している者を好まん。その勢いがどこまで続くか試してやろう。」





個人的にレイシャは結構気に入ってるんですけど過去を書くのは結構あとになりそう。オーディンのキャラ設定は自信家なんだけど実際クソ強いみたいな。書いてて自分でもよくわかんなくなりました。

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