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板野 11



          *



 息が苦しい。

 もう走れない。


 だけど容赦なく、白石くんはわたしの手を引く。

 もう走れない。

 走れないのに――



          *



 かわいた音が鳴り響いた。

 銃声だ。銃をもった男たちがわたしを狙っている。

 走らなきゃ。

 走って逃げなきゃ。

 でも、どこに? どこまで? いつまで?



 手が痛い。

 もう、いい。

 引っ張らなくてもいい。

 平気。

 走れる。

 自分で走れるから、

 お願い。放して。

 でも、手は離さないで。



          *



 目を閉じる。

 目を閉じて、息を潜めて、

 音を立てないように呼吸しながら、

 わたしが見たものを、体験したことを、

 ひとつひとつ思い返す。

 思い返さなきゃ。整理しなくちゃ。

 頭の中を整理するんだ。

 わたしはなにを見たのか。

 なにを経験したのか。

 なにが、一体、どうなったのか。

「大丈夫。大丈夫だから」

 ——と、白石くん。

 目を閉じたまま、

 胎児のように身体を縮こまらせて、

 暗がりの中に身体を溶けこませて、

 わたしはひとつひとつ、思い返す。



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