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チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない  作者: 植木鉢たかはし
怪しい宗教はお断りします
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おつかいという名の

「おはようございます、みなさん」


「おはようフローラ、今日はよろしくな」



 次の日、僕らは食堂で朝食をとり、それからフローラと出掛ける。

 今は、宿の入り口の前でフローラと落ち合ったところだ。



「えっと、あの……」


「ん? どうしたんだ?」


「案内すると言っても、どこをどう案内したらいいのか……。サワナルの南側しか入れないので、広くはないんですけど、その、目的がないと……」


「あー、そっか。それもそうだよな」



 確かに。例えば、海外から来た人に『日本を案内してくれ』って言われても、京都とかで八つ橋食べるのか、東京の秋葉原とかで買い物するのか、広島に行って原爆ドームを見るのか……価値は違うが、全部『案内する』ということだ。



「どうする?」


「んー……」



 すると、僕らの後ろから聞き覚えのある声がした。



「あれ? みんなおそろいで。どうしたの?」


「あっ、テラーさん! 僕ら、これから街を案内してもらおうと思って。で、行き先を考えてたんです。

 テラーさんこそ、どうしたんですか?」


「私は、果物と野菜のおすそわけに。……あ、そうだ。良いこと思い付いた」


「…………?」



 テラーさんはポケットからペンとメモを取り出して、なにかをさらさらと書く。そしてそれをフローラに手渡した。



「おつかい、頼んでいいかな?」


「おつかい、ですか? 私は構いませんけど、その……」


「おいらたちだって大丈夫だぞ! な!」


「あぁ。そうだな。私たちはフローラについていって、気になったものがあったら教えてもらおう」



 なるほど、おつかいと銘打って、それとなく行き場所を指定してくれたのか。う、うまくやりよる……。



「あ、お金! 渡すの忘れてた。えっと……これで足りると思うよ。足りなかったら立て替えておいてくれる?」



 テラーさんがフローラに金貨を一枚手渡すと、フローラは少し笑ってうなずいた。



「はい、分かりました。というか……少し、多すぎませんか?」



 うーん、確かに。なにをフローラが頼まれたのか知らないけど、おつかいに10万円は高い。ほぼ確実に余るだろう。

 するとテラーさんは「小銭がなくって」と笑いながら、手をひらひらさせ、そして、僕らを見ていった。



「余ったら、なにか美味しいものでも食べな?」


「あっ……」



 フローラがテラーさんを呼び止めようとしたが、さっさと宿の中に入っていってしまった。

 ……ちらっと見たテラーさんの右手の親指には、絆創膏が張られていた。回復魔法が存在するこの世界で、わざわざ絆創膏を使うなんて……。



「おい、テラーが指に巻いてるあれ、なにかわかるか?」


「えっ? 絆創膏ですけど……知らないんですか?」


「あぁ。なんだその……バンソウコウって」



 アリアさんが知らない……ってことは、この世界には絆創膏はないのか?

 と、ポロンくんが張り切ったように言う。



「んじゃ、おいらたちはフローラについていくか! なに頼まれたんだ?」


「あっ、えっと……コーヒーと紅茶、あと、小麦粉と本を一冊、ですね。それから最後に、花を摘んできて欲しいみたいです」


「花、か?」


「はい、南東の方に花畑があるんです。よく、砂糖漬けとかにしてお菓子に使ってるらしいんです。

 じゃあ……小麦粉から、いきましょうか」



 そうフローラは笑うと、メモをポケットにしまった。



◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈



 小麦粉を売っているというのは、ちょっとした商店だった。他にもお米や調味料とかが売られていたが、あまり品数は多くなかった。



「……メヌマニエのせいで街のほとんどが汚されて、食べ物を手に入れるのもやっとなんです。街で売ってる食料品のほとんどは、テラーさんが森で取ってきたり、他の街で買ってきたものですよ」


「……ん? 自分で買ってきて、店とかに売って、また自分で買うのか?」



 ポロンくんが疑問を口にする。まぁ、僕にとってもそれは疑問だった。正直、損しかない。



「お金には余裕があるみたいですけど……あ、でも、色んなお店の人に『なにか』をいつも頼んでいますよ」


「なにか……?」


「教えてくれないんで分からないんですけどね」



 僕にはひとつだけ心当たりがあった。あの絆創膏……。

 この世界では、怪我をしても、絆創膏を張ることなんてないだろう。だって、回復魔法使えば良いんだから。

 一方でテラーさんは、なんでか……あの、理由はわからないけど絆創膏が必要なようだ。


 そして、なにはともあれ、そうだとすると辻褄は通る。だって、お互いに目的を果たせるんだから。



「じゃあ、次、いきましょうか」



 小麦粉を買い終えたフローラがそういう。

 そういえば……と、僕は辺りを見渡した。これもメヌマニエの影響かもしれないが……。



「女性が、見当たりませんね」



 そもそも、あまり人はいないのだが、その中でも女性をただ一人として見ていないのだ。実際、いるのはアリアさんとフローラだけだし、そういえばここに来てから、女性と言えばフローラとテラーさんと、あの侍さんだけだ。



「……女は、メヌマニエに殺されますから、そうならないように、家の奥に隠れているんです。メヌマニエ教に見つかることを考えたら、簡単には出歩けません」


「そういうものなのか」


「そうですよ。だって、みんな自分の命はおしいですから」



 そういうフローラの、前髪からのぞく目は暗く、どこか、すべてを諦めてしまっているような気がした。

 ……この目を、どうにかしたい。そんなことを、勝手に思っていた。

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