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チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない  作者: 植木鉢たかはし
怪しい宗教はお断りします
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フローラ

 その子の目は、ほとんど前髪に隠されていた。目を覆い隠すほど長い前髪と、肩より少し長いくらいの後ろ髪。どちらも明るい緑色で、ふんわりとした印象があり、可愛らしい。

 ポロンくんほど幼くはなさそうだけど、どこかあどけなさが残るその子は、僕らを見て、少し戸惑ったような顔をし、テラーさんを見つけて笑った。



「テラーさん! お帰りなさい! あの、こちらの方々は?」


「あぁ、紹介するね。右から、アリアさん、ウタくん、ポロンくんだよ」



 テラーさんが順番に僕らを紹介してくれる。すると、その子は僕らを見てにこっと微笑んだ。



「アリアさん、ウタさん、ポロンさん、ですね。セリエ・フローラと申します。よろしくお願いいたします」


「フローラちゃん……?」



 ぺこりとおじぎしたその子に、どう反応したらいいのか迷ってると、テラーさんが助け船を出した。



「こういう子なんだよ。敬称つけるのは嫌がるから、普通にフローラって呼んであげて」


「えっと……フローラ、って呼んでいいのかな?」



 僕がそういうと、フローラはこくっとうなずいた。前髪に隠れてはいるが、その目は笑っているようだった。



「なぁ……コックス、といったか?」


「はい、なんでしょう?」



 不意にアリアさんがコックスさんに声をかける。



「フローラは、お前の娘なのか? あまり似ていないようにも思えるが……」



 ……確かに。コックスさんは灰色の髪に青い瞳。たいしてフローラは緑色の髪に……分かりにくいが、銀色の瞳だ。似てはいない。それに、確かフローラは『コックスさん』と呼んでいた。

 コックスさんが何かを言いかけると、テラーさんが右手で軽く制し、僕らに言う。



「それより、三人はここに泊まってくれるんだよね?」


「あ、はい」


「え? そうなんですか?」



 フローラがちょっと驚いたように目をぱちくりさせる。それに答えるようにテラーさんが続ける。



「そう。だからさ、フローラ。アリアさんに一つ、ウタくんとポロンくんに一つ、部屋を用意してくれないかな? 隣同士がいいんじゃないかな」


「部屋二つ用意してくれるですか!?」


「……え、一緒がいい?」


「別がいいです!」


「私と一緒は嫌なのか?」


「いや……あの、そうだけどそうじゃないっていうか、僕の睡眠がっていうか……」



 ……っ、あー! なんで分かってくれないのぉ? スラちゃんが『諦めな』って肩の上でプルプルしてる。ポロンくんには反対側の肩をぽんぽんってされた。うぅ、分かってくれるのは君たちだけだよ。



「と、とにかく! 二つでお願いします!」


「分かりました。準備してきます」


「頼んだよフローラ」



 そして、フローラが奥に行くと、テラーさんはコックスさんに言う。



「私から説明するからいいよ。アリアさんたちさ、ここに荷物おいて喫茶店の方においでよ。色々説明してあげる」


「あっ……」



 それだけ言うと、ひらひらと手を振りながら、テラーさんは扉から出ていってしまった。



「……二人は、親子じゃないのか?」



 アリアさんがコックスさんに訊ねる。



「…………はい。あまり、いい話ではないので。出来ればテラーさんから聞いていただければと」


「分かった」



 すると、奥からフローラが顔を出した。



「お部屋の準備できました。こちらにどうぞ」



◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈



 荷物をそれぞれの部屋におき、少し落ち着いてからテラーさんの喫茶店の方へ向かった。

 柔らかい雰囲気の店内には、テーブル席があり、棚には本が何冊か置いてある。そしてなぜか、ピアノがおいてある。



「ピアノ弾けるのよー、実は」



 僕の疑問を感じ取ったのか、テラーさんが言う。



「そうなんですか?」


「まぁね。元々やってたし」



 そして、さりげなく四人掛けのテーブル席に座るよう促した。



「軽いもの持ってくるから待っててね」


「あぁ、分かった」



 席につき、少し待っていると、テラーさんがクッキーと紅茶を持ってきた。そして、自分も席に座ると紅茶を一口すする。



「……守ってほしいっていってたのは、あの子か?」



 アリアさんが訊ねるとテラーさんはそっとうなずいた。



「フローラは、ずっとサワナルに住んでたんだけど、両親がメヌマニエ教に入ってね。

 ……誰かを殺さなきゃいけない宗教なんておかしいって言って、両親から逃げてきたの。で、私が見つけて、コックスさんに預けたのね、あそこなら部屋もあるし」


「そうなのか……」


「こっちの方は向こうとは完全に隔離してるから狂信者が来ることは少ない。来てもだいたい私が気づけるしね。絶対じゃないけど」


「……で、どうしておいらたちにフローラ? のことを頼むんだよ。おいらたち、全然強くないし」


「うーん……守ってほしいっていうのはちょっと違うか」



 テラーさんはクッキーを手に取り、かじる。



「笑顔が堅いからさ。私だと気を使わせちゃってるみたいだし……。

 三人なら、特にポロンくんなんかは年も近いし、自然に笑わせてあげられるかなって」


「……おいらにできるかな」



 ポロンくんが小さく肩をくすめる。そして、ごまかすようにクッキーをボリボリと食べた。

 と、そこでテラーさんがこんなことを言うのだった。



「はーあ、私がメヌマニエぼこせたらいいんだけどなぁ」


「え、メヌマニエってそもそも倒せるんですか!?」


「まぁ、正体は幻覚スキルを持った魔物だし。ただの魔物なら倒せるでしょ」


「ただの魔物ですか」



 なんか、とんでもないネタバレ食らった気分。



「ま、待て。そこまで分かってて倒せないって、どんだけ強いんだメヌマニエって!」


「ドラくんよりは弱いと思うよ。てか、倒そうと思えば倒せるし」


「だったら倒してあげてくださいよ!」



 僕がそういうと、あれ? とテラーさんが声をあげる。



「聞いてない? 塊'sって神様に『派手なことするなよ』って止められてるの」


「神様に!? しかも止められてるって、なぜに……」


「だって、あんまり暴れたら世界滅ぼせるし」


「「「……は?」」」


「だって『個性の塊's』って、元々勇者として召喚されてるし」


「「「……はぁ!?」」」



 爆弾発言、おつかれさまでしたー!

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