↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/95

EPILOGUE「PB-SYB-01」


 昼下がりの事務所には、客席から食器の触れ合う音がかすかに届いていた。


 棚の奥を整理していた店員が、埃をかぶった古い端末を引っ張り出す。電源が入るか試すと、しばらく黒かった画面に、時代遅れの業務管理画面が浮かんだ。


「これ何」


 隣で伝票を束ねていた店員が覗き込む。


「古い在庫端末じゃない? その型、もう使ってないよ」


「記録残ってる」


「消してなかったんだ」


 何気なく一覧を送っていた指が、一行で止まった。


「商品名、変なのある」


「何?」


 画面には、ひとつの古い出荷記録が残っていた。


《商品コード:PB-SYB-01》

《商品名:共生体バーガー》

《数量:1》

《区分:試作品》

《出荷:完了》

《備考:返品なし》


 二人とも、しばらく黙って画面を見た。


「……バーガー?」


「そう書いてあるね」


「共生体って、あの?」


 聞かれた店員は、もう一度記録を上から下まで読んだ。


「分かんない。ここにあるのは商品名だけ」


「でも日付、これ」


「古いね」


 公的記録に残る最初の症例より、前だった。


 店員が詳細欄を開く。製造者の説明も、原材料も、試作品が何を目的としていたのかも残っていない。出荷先を示す欄も欠けていた。


「これってさ」


 言いかけたところで、店内から声が飛んできた。


「すみませーん」


「あ、はーい!」


 店員は反射的に返事をし、椅子から立った。


「あとで見る?」


「うん。消さないで」


「廃番記録なんだから消さないよ」


「そうじゃなくて」


「分かってるって」


 端末の蓋が閉じられた。


 古い記録は、その中に残った。


 何が作られたのか。


 誰が食べたのか。


 いま街にいる共生体と関係があるのか。


 記録は、そこまでは答えていなかった。


 事務所の扉が開くと、揚げ物の匂いと店内のざわめきが入り込んでくる。


「お待たせしました」


「注文いいですか?」


「はい。ご注文どうぞ」


 扉が閉まり、古い端末はまた静かな事務所に残された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。