おまけ ダイジェスト版感想
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「——と、こんな感じでどう?」
一通りを語り終えた後、尋ねる。
言葉に、彼は暫し考え込む様な素振りを見せた。
それから、数秒の間を置いてパチンと指を鳴らした。
「六十点、ってところだな」
「少し上がったね」
「お〜。まぁギリ合格出せるかどうか〜ってトコだけどな」
「ちなみに加点要素は?」
「元の話より短い。これに尽きるな……ま、も〜ちょい削ってもいけそうだったけどな。それでも、オリジナルのグダってた部分丸々ぶった斬っただけでも表彰もんだ。やるじゃね〜か」
「それはどうも……因みに、ここから更に削るとしたら、あなただったらどう推敲する?」
「そら決まってる。ガキ共の台詞は全カットだな。後、たまに入る妙に気取った解説も没……ちなみにあれよ、なんで時々混じるんだ?」
「……私の『パラドクス』の副次効果だね。極端に大きな感情の揺らぎが生じると、〝観測〟にノイズが乗るんだよ」
「ソイツぁひで〜欠陥だな。メーカーにリコール掛けた方がいいんじゃね〜か」
彼の言葉に、深い意味などない。
それでも、私の能力の副次効果は確かに、彼にとっては欠陥以外の何物でもないのだろう。
「あと、あれだ。人形がぶっ壊れるところ」
「……ラキエス・シーシス?」
「それそれ。あのフィクションの顛末、やっぱあれいらねぇよ。なんか妙に尺割いてたけどよ、超つまんね〜もん」
「花蕗静にとっては、そうじゃなかったみたいだけど?」
「糞以下だね。ドラマで人が死ぬ度にトラウマ抱え込んでたらキリね〜よ。ホント、ガキは感受性が高くて参るぜ」
「鑑賞と体験は別物じゃない?」
「同じさ。人民が有り難がるのは得難い体験じゃなく、その結果だ。知らなくても知ったつもりになる。やってなくてもやった気分になれる。世界は代替品で回ってんのさ」
「——彼女の死が、代替品だったと?」
「アレだけじゃね〜けどな。とは言えまぁ、良いんじゃね〜の?超圧縮・鬼ダイジェスト版。俺は嫌いじゃなかったぜ」
「なにそのネーミング」
「タイトルさ。題して『大体わかるぞ!パラドクス!』……っつってな。忙しい現代人にはぴったりだ」
彼が、わらう。
「——と、そうだ。忘れちまうところだったぜ。おい、敏腕編集、追記のオーダーだ」
「なに?」
「さっきので〆ちまうと、第二作冒頭のカレンダーの件が未回収になるからな。そっちの答え合わせだけ、ダイジェスト版に組み込んどけよ。そっちのが、次回作から入った観客様にも親切だろ?」
「——とことん最悪な男だね、あなたは」
「エンターテイナーと呼んでくれよ、インフルエンサー」
「まったく……」
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『パラドクス』能力者には、発現と同時に能力の全容を理解するという特性が存在する。
にも関わらず、仙波星翠が自らの『パラドクス』について無自覚だったのは、ある男の介入が理由であった。
男の名は、明石真。
〝現実を嘘に挿げ替える〟『パラドクス』の能力者。
仙波星翠の『パラドクスを発現した当日』を『存在しなかった』という【嘘】に挿げ替えた男。
彼女を巡る、幻想と現実の戦いを招いた、張本人。
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「あぁ、これで晴れてスッキリ、気分爽快ってやつだ。答え合わせも済んだんなら、ここまでの話は全部過去の残骸だ。とっとと次の面白い話を見にいこ〜ぜ」
明石真は、嗤った。




