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反撃開始

「とりあえず、カルテットはこっちに任せろ。……それに一つ分かったことがある」


 薙ぎ飛ばされたカルテットを見据えるコロウス、彼の右手には黒い霧が漂っていた。


「プログラムが優先でないということは、ルールに従う必要がないと言うことだろ」


 そのコロウスの言葉に、小さく頷くベルゼバブ。


「つまりプレイヤーにとって理不尽な攻撃も可能と言うことだ!」


 そう言い切ったコロウスは、霧へと向かって闇の剣を突き刺した。

 それと同時に、カルテットの腹部前方から黒い霧が噴き出し――霧を裂くように剣先が突き出した。


『Critical 12514』


「が、はっ」


 闇の剣が、カルテットの腹部を貫いていた。

 黒い火花が飛び散り、爆ぜる音が響き渡る。


「どうだ。これこそ魔王のみがなせる技よ」


 黒い霧から剣を引き抜く。


「もう一度いくぞ!」


 間髪入れず、今度はその霧を縦一文字に切り裂いた。


『Critical 11574』


 連動してカルテットの胸元が大きく引き裂かれ、激しい黒い火花が噴き上がる。


「……がっ」


 悶えるカルテットを見て、不敵にコロウスが笑う。


「くっくく、はっはーは! やはり俺は強いのだ! ベルゼバブ君、モエンは任せたぞ」


「ったく、その性格さえなければ、かっこいいのにな」


 ベルゼバブは呆れたように顔を左右に振ると、その場に立ちあがった。


「……まぁ、モエンは任せておきな」


 改めて体勢を整え、剣と盾を構えた。


「さて、戦闘再開だ」


 ベルゼバブはモエンへと突き進む。


「残念」


 モエンも応戦する。

 近づくベルゼバブ目掛けて、右手を振り抜いた。

 迫りくるモエンの右手の速度に合わせて、盾をわずかに引き――衝撃をすべて受け流す。


『Parry』


「トッププレイヤーに同じ攻撃何回も当てれると思うなよ!」


 剣に青い炎が纏う。

 その炎は剣へと吸収され、刀身が赤から青へと変わる。


「喰らえ【蒼宝斬(ソウホウザン)】」


 縦一閃。上から下へと振り抜かれた刃は、モエンの右肩をいとも簡単に切り裂いた。


『Critical 145231』


 モエンは黙ったまま、切り裂かれた右肩を見つめる。ダメージ判定のエフェクトさえも起きない。

 切断面は灼熱によって焼き潰され、失われた右肩だけがぽっかりと消えていた。


「何を突っ立てやがる。もう一つの腕も貰うぜ」


 その手は止まらない、モエンの左肩目掛けて、剣を振り上げる。


「【知識(コレクレート)炎蛇(エンビ)】」


 だがその瞬間、モエンの足元に不吉な五角形の魔法陣が展開した。

 五角形の各頂点からは小さな竜巻のように炎が舞い上がり、蛇の如く姿を変える。

 モエンが指を擦り合わせると――炎の蛇はベルゼバブへと向かって噛みつこうとする。


「くっ!」


 ベルゼバブは標的をモエンから炎の蛇へと変えた。

 まずは頭上から迫りくる炎蛇に、そのまま剣を振り上げてかき消す。

 左から迫る炎蛇は盾で受け止める。


『7582』

『HP 59607/99997』


 盾で受けた反動を利用し右へ飛び退く。だが、炎蛇は逃がさない。

 右下、左下から同時にベルゼバブの身体に食らいつこうとする。


 ――火花が散った。

 流れるような剣捌き。Zを描いた斬撃が、二匹の炎蛇を同時に掻き消した。


(残りは一匹)


 大きな口を上げて、正面から来る炎蛇。

 ベルゼバブは右へ目をやると、小さく笑った。

 そして、炎蛇へと向かって突っ込む。


『35712』


「……あ、がっ」


 蛇に飲まれたのは――カルテットだった。

 ベルゼバブの視線の先には、拳を握り締め、人差し指だけを立てたコロウスがいた。


「……ナイスだぜ。コロウスさん」


(このままいけるか?)


 ベルゼバブとモエンが肉薄する。

 両者の間合いは、あと一歩。


「残念。おしまい」


 モエンが動く。

 ただでさえ屈強な左手がさらに肥大化し――ベルゼバブの顔を掴もうとする。


「残念なのは、お前の方だ」


『Parry』


 ガラスが割れるような音がした。

 虹色の破片が舞う。

 砕け散ったのは虹彩の盾(コウサイノタテ)だった。

 盾を犠牲にして『Parry』を成功させたのだ。


 両手で強く剣を握り締める。


「一日一回の限定スキル喰らわしてやるよ」


 ベルゼバブの剣が白く神々しく輝く。

 その光は広がり続け、生物以外のありとあらゆる空間を白に変える。

 音が消え、世界が止まった。

 ――違う。

 止まったのは世界ではない。ベルゼバブだけが、常識を置き去りにする速度へ到達していた。


「【神殺(カミゴロシ)】」


 モエンを通り過ぎたベルゼバブ。

 白に染まった世界がゆっくり姿を取り戻す。


『Critical 843652』


 モエンは動かない。

 一瞬遅れて、その身体が縦二つにずれた。



「……残念」


 裂けた身体の奥で、灼熱が脈動する。


「【知識(コレクレート)炎崩壊(エクスプロージョン)】」


「やっぱりな、次が最後だ」


 ベルゼバブは、その灼熱から目を逸らさなかった。

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