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ep.4 緊急クエスト「彼ノ者ノ軌跡」

世界観解説「ワールドマップ」編です

このゲームの主なマップは大きく分けて「大平原」「大山脈」「巨大樹海」「大洞窟」の4つです

それぞれが無数の小さいマップを有しており、主に大平原や巨大樹海だとエリア、大山脈や大洞窟だと階層で分かれていて、それぞれ奥に、上に、下に行く程手に入れられるアイテムや、戦うモンスターの等級が上がっていく。

「大洞窟」は現在縦に12の階層と、それぞれ5つのエリアがある。エリアの形は穴の中心に丸く1エリアと、それを囲むように均等な4つのエリアがある。

層毎に「第〇層」と呼ばれているが、一番下の層のみ「アビス」と名称がつけられている。

年に一度、層が一層増えるが、一層だけでもかなりの規模な為、アビスまで辿り着いた探窟家は今のところは居ないらしい。

俺は再び、夕暮れの森へと足を踏み入れた。昼間とは違う、静かで冷たい空気が肌を刺す。木々の隙間から差し込む光は、すでにオレンジ色から鈍い銀色へと変わり、足元の影を長く伸ばしていた。


「隠された洞窟」の場所は、白風が指差してくれてたおかげで、すぐにわかった。大きな岩の隙間から放たれる光は、暗くなった森の中でもはっきりと輝いている。


(…白風には悪いけど、来たからにはやってみないとだしな。危なかったら逃げればいいし…)


自分に言い訳をするように呟き、俺は慎重に洞窟の入り口へと近づいた。岩の隙間は人が一人通れるほどの狭さだ。体を横にして、ゆっくりと中に入る。


洞窟の中は、外の光が届かず、漆黒の闇に包まれていた。しかし、すぐに足元から微かに光が放たれ、俺の周囲をぼんやりと照らし出した。


『「隠されし回帰の洞窟」を発見しました。緊急クエスト【彼ノ者ノ軌跡】が開始されました。』

「ゑ?」


システムメッセージが表示され、俺は思わず息をのんだ。緊急クエスト?白風はそんな事何も言っていなかった。この洞窟は、ただの珍しい場所ではないのか?。


俺は剣を構え、警戒しながら洞窟の奥へと進んでいく。足元には湿った土と、時折小さな石が転がっていた。奥に進むにつれて、洞窟の壁に描かれた古代の壁画のようなものが見えてきた。そこには、剣を構えた大柄な人物や、巨大な龍の姿をした魔物のような姿が描かれている。


しばらく進むと、洞窟の空間が広がり、まるで広場のような広い場所に出た。広場の中央には、巨大な水晶が鈍く暗い光を放っている。そして、その水晶の周りを、昼間に討伐した森ネズミとは明らかに異なる、大柄でいかにも強そうな姿をしたモンスターが徘徊していた。


それは、まるで大きな犬のような姿をしていたが、全身は岩のようにゴツゴツとしていて、目は赤く光っている。


『ロックパピー』


モンスターの名前が頭に浮かんだ。白風が言っていた通り、難易度は十分高そうだ。


(…引き返すか?いや、ここまで来て…)


俺は一瞬迷ったが、好奇心が迷いを上回った。ロックパピーはまだ俺の存在に気づいていない。


(よし、スキル「スラッシュ」を試してみよう)


俺は慎重にロックパピーに近づき、スキルブックで覚えたばかりの「スラッシュ」を発動する。


剣を構え、集中する。剣先から青白い光が放たれ、斬撃が一直線にロックパピーへと飛んでいった。


ドン!


斬撃はロックパピーの体を捉え、鈍い音が響き渡る。ロックパピーはよろめいたが、倒れることはなかった。


「くっ…!」


その一撃でロックパピーは俺の存在に気づき、低く唸るような声で威嚇してきた。そして、岩のようにゴツゴツとした体を震わせ、俺に向かって突進してきた。


(はやっ…!?)


俺は咄嗟に剣を構え、ロックパピーの攻撃を迎え撃つ。しかし、その突進は想像以上に重く、俺は吹き飛ばされてしまった。背中を壁に打ち付け、激しい痛みが走る。


「う、ぐ…」


HPがみるみる減っていく。このままではやられる。何かコイツを倒すヒントの様なものは無いか?たしか森ネズミの時は…


(白風「落ち着いて!敵の動きをよく見て!森ネズミは、攻撃する前に一瞬だけ動きが止まる。その隙を狙って!」)


ロックパピーも同じかもしれない。俺は痛みを堪え、相手をよく観察する。


ロックパピーが再び突進しようとした瞬間、その体がわずかに、本当にわずかに止まった。


「ここだ!」


俺は最後の力を振り絞り、スキル「スラッシュ」を放つ。青白い斬撃が、ロックパピーのわずかな隙間を捉え、その体を貫いた。クリティカルだ。


ロックパピーは光の粒子となって消滅し、その場にはいくつかのアイテムとシステムメッセージが残された。


『経験値を獲得しました。』

『「ロックパピーの皮石」を3個獲得しました!』

『スキル「スラッシュ」がレベルアップしました!』


俺は安堵の息を漏らし、その場にへたり込んだ。満身創痍だったが、やり遂げた達成感が俺を包み込む。


(…白風、俺、やったぞ)


俺はそう心の中でつぶやき、ロックパピーがドロップしたアイテムを拾い集めた。

拾い終わって立ち上がったその時、洞窟の入り口側から、何かが近づいてくる気配がした。


「…まだ、いるのか?」


俺は警戒して剣を構えた。しかし、洞窟の奥から姿を現したのは、モンスターではなかった。それは、見慣れた、白いローブを身につけた少女だった。


白風「…オーゼス、やっぱりここにいたのね」


白風が、呆れたような、それでいてどこか安堵したような表情で、俺を見ていた。ただ、怒っているのは確実にわかる。


「あ…わぁ…」


俺の背筋に、冷たい汗が流れた。

殺されるかもしんね☆


白風「…」

「…?」


数秒睨まれたが、白風は小さくため息をついた後。


白風「まぁ…生きてるだけ良しとするか…ほら、行くんでしょ?この洞窟の先に。」


「良いのか!?」


白風「良くはないけど、ここまで来たら行くしかないでしょ。それに、私もこの洞窟の事は気になってはいたしね。あ、でもホントに危なくなったら引きずり出すからね!」


「アッハッハ!おっけ!行こう!」


俺たちは二人で、光に照らされた奥の道へと進んでいった。


ダンジョンの道は狭く、曲がりくねっていた。時折、ロックパピーのような岩のモンスターが襲いかかってきたが、白風の正確な弓術と、俺が習得したばかりの「スラッシュ」の斬撃で、難なく突破することができた。


「スラッシュ」は、白風の助言のおかげで、より強力な斬撃を自由に飛ばせるようになっていた。ダンジョンの奥へと進むにつれて、俺たちの連携も洗練されていく。白風がモンスターの動きを止め、俺がスキルでとどめを刺す。俺は、彼女とのコンビネーションに、得も言われぬ心地よさを感じていた。


やがて、ダンジョンは急に開け、巨大な空間へと出た。そこには、何かの儀式に使われていたかのような、古びた祭壇があった。そして、祭壇の中央には、黒い影がゆらゆらと揺らめいていた。


白風「あれは…まさか…」


白風が息をのむ。俺は警戒しながら、その影に近づいた。影はゆっくりと形を成し、やがて一人の男の姿になった。全身を分厚いマントで覆い、その下からは異常なほどの重厚さを感じさせる。男は武器を持っておらず、ただ静かにそこに立っていた。


そして、俺たちの前に表示されたシステムメッセージが、その男の正体を明らかにした。


『「黒キ彗星・マヴロス、データ戦、戦闘開始』


白風「…どうしてここに、マヴロス…のデータが…?」


白風が呟く。マヴロスとは、このゲームの伝説級プレイヤーの一人で「黒キ彗星」と呼ばれているのだと、白風から聞いたことがあった。その彼が、なぜここに…。

そういえば…ああ、風銀が会いに行けって言ってたのはこの人か!


マヴロス(のデータ)は、俺たちの存在に気づくと、ゆっくりと構えをとった。その姿からは、ただならぬ圧力が放たれていた。


「…やるしかないのか」


俺が覚悟を決めると、白風も弓を構え、俺の隣に並んだ。


白風「うん、やろう。でも、多分勝てないから、やられそうになったらすぐに逃げるんだよ…。」


俺たちはマヴロスのデータに挑んだ。俺はスキル「スラッシュ」を連発し、白風は弓で援護する。しかし、マヴロスの動きは俺たちの想像をはるかに超えていた。


斬撃はマントに弾かれ、弓矢は彼に当たる前に空中で弾き飛ばされる。マヴロスは軽々と俺たちの攻撃をかわしながら、一歩、また一歩と距離を詰めてくる。そして、俺の目の前から消えたかと思うと、一瞬で俺の背後に回り込み、拳を振り上げた。


白風「っ…!速い!」


俺は白風の声を聞き、咄嗟に飛び退いたが、マヴロスの拳が振るわれた瞬間、その風圧だけで俺は吹き飛ばされた。背中を壁に打ち付け、激しい痛みが走る。たった一撃で俺のHPは赤色に点滅した。


「ぐっ…あ…ッ!」


俺は地面に倒れ込み、立ち上がろうとするが、体が思うように動かず、起き上がるのに手こずってしまった。しかし、マヴロスは俺に止めを刺すことはせず、ただただ静かにこちらを窺っていた。


白風「私はこっちよ!」


俺が起き上がるまで白風が注意を引いてくれたが、彼女の渾身の射撃はマヴロスのデコピンの様な動作で全て弾かれてしまった。


白風「もう無理かな…オーゼス、逃げるよ!」


白風の声を聞いたマヴロスは突然両手を広げ、マントが翻り、方足を大きく上に上げた。露わになった胴体はマントの上からでは想像出来ないほどの細さで、瞬く間に振り下ろされた足が地面に付いたその瞬間、洞窟全体が激しく揺れ、まともに立てて無かった俺は再び地面に伏せてしまった。


すぐに白風が俺の腕を掴み、ダンジョンの入り口方面へと引きずっていく。俺は彼女に引っ張られながら、背後のマヴロスの姿を振り返る。彼は、何も言わず、ただ静かにそこに立っていた。


俺たちはボロボロになりながらも、なんとかダンジョンを脱出することができた。洞窟の外に出ると、もう夜が明けていた。朝日が差し込み、俺たちの顔を優しく照らす。


白風「…よかった。生きてて…」


白風は安堵から胸を撫でおろし、俺はひたすらHPの回復に専念していた。二人してマヴロスの圧倒的な強さを思い知らされ、自然と険しい表情になった。


「…俺、全然ダメだったな…」


俺は悔しさに唇を噛み締めた。白風はそんな俺の頭にポンっと手を置いた。


白風「そんなことないよ。大丈夫。あのマヴロスのデータだよ?普通のプレイヤーが勝てるわけないって。でも、これで分かったでしょう?無理はしないほうがいいってこと」


「むぅ…白風、すまん。心配かけて…」


白風「いいのよ。…ほら、もうすぐ朝だよ。早く戻って休もう?」


俺たちは疲れた体を休めるため、街へと戻ることにした。



街に戻ってすぐ、例の盗賊と再び出会った。

今度はフードを被っておらず、黒と銀を基調にしたシンプルな作りのドレスの様な衣装をしていた。


夜桜「あら!オーゼス様、白風様、お早い帰還でしたわね。」


白風「!?…もしかして私達を待ってたの…?」


夜桜「ええ、そうですよ?特にオーゼス様、貴方様には一緒に来て頂きたい場所がございますので。」


「何で!?わけがわからないよ…そもそも君とは一回会ったっきりだし。しかもアイテムの争奪戦だったし!」


夜桜「うーん、そうですわね…詳しい説明は省き、重要なことのみお伝えいたします。先程お二方が戦った「黒キ彗星」…マヴロス様より、お二人を連れてくるよう言い渡されています。これより、探窟隊「流星群」の基地へご同行頂きますわ!」

一方その頃…

ストロング「うぉぉぉぉぉおおおおお!!ホーーームラーーーン!!!」

ガシャン!(野球ボールが学校の窓ガラスを割る音)

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