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八八艦隊1934 第三章・F.R.S plus  作者: 扶桑かつみ
New Horizon

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Phase 4-e1:●第三次世界大戦

 「これは放送事故ではありません。政府による緊急放送です。まもなく政府による声明が発表されます。テレビの前の皆様はチャンネルをそのままに願います。また、近くの方にテレビもしくはラジオに耳を傾けるよう声をかけて下さい。

 繰り返します。これは・・・」


 NHKの看板アナウンサーが、いつもの仕事用の能面に緊張した面持ちを浮かべアナウンスを繰り返していた。

 

 始まったのだ。

 

 何が?

 問うまでもない。

 第三次世界大戦が始まったのだ。

 


 前兆はいくつかあった。

 発端はドイツ第四代総統の死去であり、それによるドイツの内政的混乱を予想して自由主義諸国側が軍事力を展開し、その期待を全く裏切る事なくドイツの保守勢力が新総統の改革政策に対して事実上のクーデターを断行、クーデター政権は西側の軍事圧力撤去を訴えると同時に自らの動員態勢を強化、ここで双方国連にて話し合いがもたれる事になったが、かえって疑心暗鬼を呼び・・・後は坂道を転がり落ちるようなものだった。

 


 そしてこの時聞こえてくる放送は、世界の全ての大国と呼ばれる国々が、恐らく最後になるであろう大戦争の準備を整えその開幕を迎えた瞬間を伝えるものだった。

 

 翌日、欧州正面ではドーバーを越える巨大な強襲上陸部隊が英本土であるイングランド島を目指して進撃を始めた事を伝え出し、樺太でもロシア人の手により同様の事態を迎えていた。

 

 また、最大規模の陸戦が露満国境で始まっており、現地司令部は死守を命令しマスコミや市民には防衛できると豪語していたが、実際は強大な独露軍に対して最低100km程度は後退しなければならないと予測されていた。

 

 もちろん、放送のあったその時には、すでに空では双方の航空機による制空権奪取を目的とした戦闘が始まっており、連合空軍の参謀はこれから3日以内に大勢は決するだろうと断じていた。

 

 また、海軍も全力で日本海、オホーツク海での活動を始めており、実に海軍らしい素早さで初日の深夜からアルファ・ストライクを極東ロシア各地の独露施設に送り込んでいた。

 

 そして宇宙軍だけは、少なくともその攻撃力を全く使用していなかった。

 

 そう、この状態にあっても全てにとって幸いだったのは、まだ誰もニュークを使用していないという事だ。

 これに関しては、双方で間違いなく飛び交うと言われていた戦術弾についてすら使用されていないのは、キリスト教の言うところの神の恩寵としか言いようがない。

 もちろん日本帝国を預かる私も、ニュークの使用は相手の使用が確認されない限りは使用しないよう厳命していたが、アメリカ、ドイツにおいてもこの原則は守られているらしい。

 同じくロシア人もこの点での思考は堅牢な事を今のところは示してくれていた。

 英国人については言うまでもない。

 

 他には、何やら中華大陸の中央部でも双方の陣営が、これにつられる形で彼らにとっての戦争を始めようとしていて、欧州ではフランス人がドイツの現在の政府には正常な同盟関係を履行できる状態にはないなどと、手前勝手な事を言って自らの独自性を強調、事実上の傍観に入っている。

 どうにもこの二つの民族の政治的行動は何時見ても不可解だ。

 恐らく日本人には永遠に理解できないルールを彼らの中に持っているのだろう。

 


 このまま順当に戦争が進めば、欧州帝国は制空権を2週間以内に完全に失い、英本土、樺太そして満州の陸軍も道半ばに事実上攻勢能力をなくし、独露の海軍は潜水艦を除く大半が洋上から消滅する事だろう。

 事が通常戦争で終始する限り、それはどれも分かり切っていた事だ。

 海洋国家連合は勝利するだろう。

 その為の通常軍備をこの15年程の間熱心に整備し続けていたのだ。

 ランチェスターモデルを使用して立証するまでもなく、全面通常戦争をする限りにおいてドイツの敗北は決定的なのだ。

 

 劇的な光景を愛し、それに憧憬に近い思いを描いているドイツ民族は、半世紀続いた自らの帝国の終幕をこれ以上ないぐらいの派手さで、しかも世界を終末させる事無く演出して見せようとした。

 その為の儀式がこの戦争という事だろう。

 

 感情的には理解できなくもないが、何と迷惑な事を初めてくれたのだろう。

 いったいこの戦争でどれだけの損害が出るか考えた事があるのだろうか。

 彼らはいまだ半世紀前の経済観念で戦争を行っているのではないだろうか。

 

 少なくともこの戦争に参加した大国の経済は、四半世紀は停滞を迎えるだろう。

 民間と政府の研究機関もこれに関しては似たような数字を提示している。

 

 まあ、その後に光の世界が待っているのかもしれないが、笑って済まされる事態ではない。

 今の世の中、今の列強の後がまを狙う潜在的国家に不足はないのだから。

 


 とにかくこれで私の最後は、戦後の財政処理による膨大な債務発生の責任をとっての総辞職という事だろうか。

 

 ああ、その前に最後の仕事として、宇宙開発予算の大幅削減だけは決めなければいけない。

 でなければ、戦費と戦災による復興資金、同盟各国に対する援助予算などどうやっても捻出できないに違いない。

 

 せっかく、「第三次宇宙開発計画」が順調に進展しているというに・・・


 ・


 ・


 ・


 Bad End



 ハイ、ようこそお越しくださいました、バッドエンドです。

 

 え、某「198X」や「ザ・デイ・アフター」みたいに全面核戦争になってないじゃないかって?

 そんな可能性は、史実の各大国政府の動向を見るかぎり、可能性はかなり低いですよ。

 人間四半世紀も同じことを真面目に考えていれば、おのずと大人になるものです。

 

 この時代の「核戦争」なんて、ヤンキーの某大作家にでも任せておけばいいんですよっ☆





 さて、これが何故バッドエンドなのか? 恐らく疑問に思われる方もいるかと思いますが、以前の「いいわけ」にも書いたと思いますが、ここが大国との全面戦争をしないのが一つの条件であり、また宇宙開発を継続、さらに拡大していくのが大いなる野望ですので、バッドエンドとしました。

 まあ、バッドとまでしなくても、ノーマルエンドへと続けてもよいかも知れませんがご理解ください。

 

 ただ、史実と違い宇宙でのロクな軍縮が実現していませんし、 ABM制限に関する条約もほとんどありませんから、史実よりはもしかしたらパイ投げ合戦の可能性は高いかもしれません。

 もしくはその逆で、さらに戦争の確率は低いのかもしれません。

 

 ただ、私個人的には『相互確証破壊理論』はあまり信頼性はないと思います。

 これは、机上の空論にして大衆やマスコミ向けの大本営発表のようなものと解釈しています。

 

 また、史実のこの時代の軍拡競争は、アメリカがソ連を軍拡競争というこれまでとは異なった総力戦を仕掛けることで相手経済を破壊するという、実に合理的かつイヤラシイ戦争の形と解釈しています。

 

 もちろん異論は多々あると思いますが、そういう解釈で本ルートを構築しましたので、その点もご理解ください。

 


 それでは、少しもどって本ルートに復帰ください。

 

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