俺の後悔と今の日常・・・。
――これで、サッカー人生終了か…??
身体から血の気が引き――、3桁の数字が羅列される掲示板の前でもう1度だけ…。
俺は手に握り締めている「それ」を凝視して考えるわけだが――。
『118』の数字に間違いはない…。
真実を念の為に疑い。同じ箇所をもう一度眺めても世界は答えを変えない……。
周囲の皆、自分と友達の合否の確認ができたヤツから俺の番号を確認にくる。
――そんなとてつもなく嫌な予感がする。
「和也、お前番号ないけど、進路どうするんだよ?」
気をつかえよ…!いちいち構ってられるか!
お前に――、俺の気持ちの何がわかる?
相手の声に一瞬身体が凍りつきそうになり、
のちに――ぶちギレたい衝動が心の内側に響く。
どけよっ・・・!!
女子の壁など、あきらかな邪魔でしかない。
視線を向けられたかもわからないが――、
有名人になると思ってた。
その中途半端な結果が本当に恨めしい……。
ただ――、もうここを抜けたら、なにも問題はなくなるはずだ……。
とりあえず、電車までひたすら歩く……。
――彼女である結衣菜との交際をどうするか…?
合格率は32%。文武両道。
俺の学力じゃ問題視される理由もなかったから、学校側にもメリットがあるため
プロを目指すのを理由に。
学校をサボることが了承されていたが……。
「結局はこのザマだ…。」
高瀬龍という――。この学校から転校した、最大のライバルへの「対抗心」となかなかでない「結果」に焦らされながら
ひたすらプロへの道を走る俺は安全な道を走っていたわけだが・・・。
『天才』渡邉結衣奈の風上にも置けないな――。
2年間の在籍すら嫌で、推薦の誘いを断ったのは
素直にヤバいし。
これで――、龍がやった『俺との決着』のつけ方
が冗談で済まされなくなった……。
これから、高校を卒業するまでの11年間を費やした『夢』『エネルギー』『栄光』だったサッカーが死なないよう。
「プロ」への道が死なないよう、全力で延命治療に当たらなきゃいけない……。
でなきゃ…。結衣菜の好きな俺じゃなくなる…。
「サッカー」と「最愛の彼女」によって。
せっかく碌な家族の支えなしでも、ここまでやってこれたわけだが……。
絶対どうにかしなくちゃいけない……。
できないなら……、さすがにそれまでだから。
▽
「和也!!今回はサッカーの試合観たら?ブラジル戦だし、連絡とってたのに喜ぶと思うよ?」
声の印象は明るく、今は誰も並んで居ないカウンターの側で話しかけてきたのは……、
今の彼女である・・・『香椎比奈』。
確かに――、最近。俺は前の彼女の結衣菜の誘いもあって、それなりの金を借りようした身…。
ただ……。
「いや……、結衣菜のこととか。正直あんまり思い出したくないんだけど?」
今じゃ、アルバイトでネットカフェの店員として3年目の俺がサッカーに戻ろうものなら金がいる。
入学金と生活費…、ざっと見積もっても300万くらいは貸せれたらな――。
「比奈には多少の我儘になるが、」サッカーへの未練からオファーにのる条件をだしたが・・・。
「ごめん……。代表の監督にキツく反対されてしまって出来なくなった――。」
そっちから誘ったじゃん…!とはなったが
文句を言えなかったのは、俺の家の両親の
特に義父が猛反対だったからだ…。
結衣菜は年棒で1000万も稼ぐようになったし、俺の実力なら。もっと借りても返せる自信しかお互いなかったはずだが――。
……2週間前までずっとフリーで待ってたって話
やらなければよかったな…。
母親が聞きそうで、知ってそうな解答を先に
素直に伝えておいただけだが。
あんなに泣きそうに謝るくらいだったから、
ヨリが戻る確率がゼロじゃなかったのは、――本当の話だったし、特に何も言わなかったが。
スタスタ……。
同じカウンターに2人も要らないため、
漫画の整理をやりに、
俺のほうが移動するのがお客様のための無駄なルールだが、
俺も――、新聞記事に名を連ねる。
元親友たちの活躍に興味が沸く自分がいるのは事実
であるが故に思い悩む――。
「許さなきゃなんねぇのかな……。」
漫画が沢山並べられている。黒いカゴへと近づいては――、本の束を手にとって並べ始める……。
龍の日本代表での試合には、
正直興味が沸くが――、
高校当時の事故を未だ許せていないから、観るのが癪だし、サッカーがまたやりたいと思う感情はしばらく無しにしたいという本音もある……。
(これは、こっちか……。)
比奈の年齢が22歳だし…、そろそろ結婚しようと考えていた手前だ……。
捨てた人間関係の修復をはかるべきかは考えてはいたが……、
「アー○ナルか……。」
かつてのライバルが、今現在プレミアリーグで2位を走るチームの主軸である。
どうしよっかな……ぁぁ。
次戦がブラジル戦なのも強敵だし。仲良しだった
あの頃の思い出もあるしで、気になる……。
一生の友であり、終生のライバル。高校のときには一連托生にまでなったと思った男が、
今じゃ、アジアNO.1を競うスーパーストライカーである。
……本棚の間にある黒いカゴから、漫画の束を再び抜きとり、隣の棚まで移動する・・・。
国際試合だし、アピールも兼ねて。間違いなく大事な試合になるはずだと思うんだよな…。
と――、そうこう迷うが……。
『どうせ――、、2日後だもんな……。』