帰宅
蒼依と紗希の二人は帰宅した。
しかし、家に入るともう一人の紗希がいた。
蒼依は、湯殿であった紗希をてっきり、自分を捜して歩き回った末に白峰家にお世話になっていたのだと思っていた。
これは、どう言うことなのだろうか。
どちらかがクローンなのだろう。
「貴方は誰ですか?」もう一人の紗希が言う。
「誰だと思う?」私は尋ねた。
「お兄ちゃん?」だが、その声はいかにも自信無さげに聞こえた。
拳を握り、殴りかかる。
「お姉ちゃん。駄目ーッ。」紗希が言う。
「紗希。お前…分かった。止めるよ。」
「お姉ちゃん。これは、ウチとアイツの闘い。見守っていて。」
こんなに妹が頼もしく思うのは初めてだった。
母であり、父の強さを併せ持つ妹の姿に心を奪われた。
「紗希は私だ。お姉ちゃんは絶対に渡さない。」
「何を言ってるの?お姉ちゃんは私と一緒に居るのよ。」
戦の火花が散った。面白い戦だ。攻撃の防ぎ合い。家にいた紗希が殴られる。
「いてぇ。クソッ。覚悟してろよ。アタシはまだ戻ってくる。」
「待てぇ…何、消えてしまったよ。」
「お姉ちゃん。駄目だよ。顔に傷の一つでもつけたら。可愛い顔が台無しになっちゃうよ。」
「そうだな。分かった。気を付けるよ。」
着信がケータイに。
「もしもし…ええ。はい。分かりました。有難う御座います。明日伺います。」
医者が言うには、律の意識が戻ったようである。私を庇って、倒れた男だ。彼には負い目を感じている。
「お姉ちゃん。どうしたの?あの着信は。」
「知り合いが倒れてたが、意識が回復したようだ。それで見舞いに行こうと思ってるんだけど。」
「紗希も一緒に行って良い?」
「良いけど。大丈夫?明日予定何もないの?」
「うん。」
「それなら、行こう。」
夕食を食べて寝た。
次の日、二人は、琉球村の総合病院に行った。
黒崎律は、ベットの上で起きていた。
「誰だ。君は。俺の見舞いに来たのか?」
明らかに声が一オクターブ高い。
「どうも、南原蒼依です。意識が回復して良かったです。」
「でも、上半身は重い、下の感覚が無いんだよな。どうかしたのかな。俺。」
その言葉を聞いて、私は、律の上半身を触った。
「うわっ…止めろよ。俺、恥ずかしいから。」
「律、残念だが君は男ではない。」
「まさか、あの小刀のせいか。いや、俺にはまだ仕事が。俺の刀はどうかしたか?」
「まだ、戦うつもりですか?黒崎迅に受け継がせました。」
「何だと!まぁ…この体じゃ、いつ戻るか分からないからな。」
「今は、落ち着いて下さい。」
「蒼依、お前、女になってしまったのか?」
「うん。でもそういう運命だったみたい。だから、受け入れることにした。この体をね。」蒼依は言った。
「受け入れることが出来るのかな。ウチに。」
「出来るよ。もう現に、ウチって使ってるじゃん。」
「あぁ。受け入れることが出来てるんだね。」
「人は、悲しみや絶望を乗り越えてこその人間なんだ。だから、合理化もできるし、頭も良いんだ。勿論、勉強ができる出来ないとは関係ない。忘れるということも頭の良い人間がすることでもある。」
蒼依は律を励まそうとした。




