19 仕留める
19 仕留める
エルクが襲われた道から外れると獣道が続いていて、洞窟があった。マリアベルの話では、別のところからここに移ってきたらしい。
「家が洞窟になってみんな文句垂れてたわ。でもやらなきゃいけないことがあるってお頭は言ってた」
それ以上は詳しく知らないみたいだ。
洞窟の前には番人が二人立っていて、警戒している。馬を連れていては目立つので、すぐに見つかってしまい、武器を抜かれた。エルクのスキルは隠密には向かない。
「誰だ?」
「マリーです。馬と御者連れてきました」
ハキハキと話すマリアベル。ここでは偽名で生活していたらしい。多分母親がバラさなければ、マリーで通していたのかもしれない。
「なんで連れてきた?」
「金だけ持ってくればいいんだよ」
好き勝手言ってくれる。エルクはオルクに触れ、言った。
「枝毛」
突き出た角が二つに分かれて、それぞれに突き刺さった。
「くそ」
番人達は首から下げていた笛を吹こうとしていた。
「ふーっ」
吹かれる直前に番人の手から笛は消えた。マリアベルがスキルで奪い取っていたのだ。なかなかやるとエルクは思った。
「枝毛」
とどめとして、刺さった角を枝分かれさせ、喉を封じた。これで数の暴力に怯えることはない。
「さて、どうする?」
ほぼノープランだ。それほどまでにエルクはこのスキルに慣れていた。伊達に五年経ってないということだ。
「煙でおびき出してみよう。後は各個撃破で」
マリアベルはそう提案すると焚き火を始めた。湿った枝や葉で煙を出し、洞窟の中に流していく。
盛大にむせる声が聞こえ、次第に大きくなっていく。そして姿が見えた。
「角飛び」
角を射かけて、仕留めていく。簡単な作業だ。
「後、一人よ」
数を数えていたマリアベルはそう宣言した。後は盗賊の頭一人。倒せば安寧は手に入る。晩御飯が食べられるのだ。
「角飛び」
煙越しに影が見えたので、早速角を放った。
角ははじかれて、地面に落ちた。
「なんだバカやろう!」
怒りながら現れたのは岩の鎧に身を包んだヒゲの大男だった。




