第四十八章:森亜
---翌朝、和兎とまどかは再び病院を訪れた。きいの容態は安定しており、短い会話を交わしたが、彼女はまだ疲れが抜けきらない様子だった。彼女を休ませるため、二人は一旦部屋を出ることにした。
廊下を歩きながら、和兎は低い声で話しかけた。
「昨夜のこと、やっぱり気になる。親父もきいの父さんも、森亜って名前に過剰反応してた」
「ええ。あの反応は、絶対に何か知ってるわ。聞き出せないなら、私たちで調べるしかない」
二人は意を決して、きいの父親が院長室に入るのを見届けた後、その足跡を追った。
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院長室の扉の前。
和兎は軽く息を吸い込み、まどかを見た。
「聞き込み開始だ。正面突破で行く」
「任せるわ。でも、無駄に怒らせるのはやめてね」
和兎がノックすると、室内から「入れ」と低い声が聞こえた。二人はゆっくりと扉を開ける。中にはきいの父親と和兎の父親が向かい合って座り、深刻な表情で話し合っていた。
二人が入ると、一瞬で会話が止まり、室内の空気が張り詰めた。
「何の用だ?」と和兎の父親が険しい声で問いかける。
「昨夜の話の続きです」和兎はその声にもひるむことなく、ストレートに切り込んだ。「森亜茶子って名前に、どうしてそんなに動揺したんですか?」
きいの父親は眉をひそめ、ため息をついた。
「お前たちには関係ないことだ」
「いや、関係あります」まどかが前に出た。「きいを襲った事件の中心には、森亜茶子がいるんです。彼女が何者かを知らなければ、これ以上進めません」
その言葉にきいの父親が微かに動揺を見せる。和兎の父親が口を挟んだ。
「森亜茶子はただの生徒だ。それ以上のことはお前たちが知る必要はない」
しかし、その言葉には隠しきれない焦りが滲んでいた。
和兎はテーブルに手を置き、まっすぐに父親を見つめた。
「親父、頼むから隠すな。これ以上何かが起きたら、俺たちだけじゃどうにもできない」
室内の沈黙が再び重くなる。そして、きいの父親が静かに口を開いた。
「…森亜という名前は、ある特定の家族と関わりがある。私たちも、深くその影響を受けた」
「影響って…どういうことですか?」まどかが畳みかける。
きいの父親は言葉を選ぶようにして続けた。
「森亜茶子の母親――森亜静香は、かつて私たちの家と密接な関係にあった。しかし、その関係はある事件をきっかけに断たれた。」
和兎の父親も重い口調で語り始めた。
「…ある事件が原因で、彼女の家族は崩壊し、行方知れずになったんだ。森亜静香が姿を消してから数年後、茶子という娘の存在を知ったが、それ以上のことは知らない。」
二人の言葉に、和兎とまどかは息を飲んだ。
「つまり、森亜茶子はその事件の残響…?」
きいの父親は深く頷いた。
「彼女がどうして今、きいに関与しているのかは分からない。ただ、私たちの過去が何らかの形で影響しているのは間違いない」
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部屋を出た後、和兎とまどかは再び廊下で顔を見合わせた。
「森亜茶子の母親の事件か…。そこに、きいの家も俺の家も絡んでるなんて」
「これで少しピースが埋まったけど、まだ核心は見えないわね」
まどかは決意を新たにしたように言った。
「次は、その事件について詳しく調べましょう。何かが分かるはずよ」
和兎は頷き、二人は再び動き出す。森亜茶子の背後に隠された真実が、徐々に明らかになろうとしていた。
次回予告:森亜茶子の母、森亜静香に隠された事件の真相とは?崩壊した家族の運命が、現代の事件にどう繋がるのか。すべてが交差する瞬間が迫る――!




