第四十七章:森亜の名前と揺れる大人たち
きいが意識を取り戻したのは、病室の静寂が包む夕刻だった。微かにまぶたが動き、目を開けた彼女に、和兎、まどか、そしてきいの父親が一斉に駆け寄った。
「きい、大丈夫か?」
「無理するなよ、ゆっくりでいいから。」
「痛いところはないか?」
皆が口々に声をかける中、きいは弱々しい笑みを浮かべ、か細い声で答えた。
「…みんな、心配しすぎだよ。大丈夫だって…」
きいの父親が優しく娘の手を握りしめ、安心させるように問いかける。
「きい、何があったんだ?無理をした理由を教えてくれ」
きいは一瞬目を閉じた後、ぎこちなく口を開いた。
「学校で…先生を陥れるために動いてる…森亜って…生徒がいて…」
名前を告げた瞬間、きいは力尽きたように再び眠りに落ちた。その静寂の中、部屋の空気が凍りついた。
「森亜…」
きいの父親がその名前を呟いた瞬間、彼の表情は明らかに変わった。目はわずかに見開かれ、動揺を隠せていなかった。それだけでなく、和兎の父親も険しい表情を浮かべ、黙り込んだ。
異様な雰囲気に気づいた和兎とまどかは、二人の父親の顔を交互に見つめた。
「…父さん、その名前に何か覚えがあるのか?」
和兎が尋ねると、院長は短くため息をつき、曖昧に首を横に振った。
「何でもない。ただ、今はきいさんの容態を優先しろ。」
しかし、その言葉にはどこか説得力が欠けていた。まどかも察したように、低い声で呟いた。
「この反応…ただの偶然じゃないですね。森亜という名前に、何か心当たりがあるのでは?」
きいの父親も同様に黙り込み、視線を逸らす。和兎とまどかの胸中には、二人の態度から明確な違和感が膨らんでいく。
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部屋を出た和兎とまどかは、廊下で顔を見合わせた。
「おかしいよな。二人とも、森亜って名前に動揺してた」
「絶対に何か知ってるわ」
和兎は腕を組んで考え込む。
「森亜茶子。俺たちが追いかけている名前だ。でも、この反応…もしかして、もっと深い事情が絡んでいるかもしれない」
まどかは真剣な表情で頷きながら、「次は大人たちが隠していることを探る必要がある」と決意を新たにした。
次回予告:森亜茶子の正体に隠された過去が明らかに?絡み合う運命の糸が徐々に紐解かれる。親子の対立と謎が交錯する物語が動き出す…!




