第三十九章:密会の夜
その夜、和兎は例の喫茶店に向かっていた。店に入ると、静かな空気が漂い、照明は落ち着いた雰囲気を醸し出していた。店内には数人の客がちらほらいるだけで、ほとんど人目を気にする必要はなさそうだった。
「いらっしゃい」カウンターの奥からマスターが軽く手を挙げて挨拶をした。
「例の部屋を借りたいんですが、準備はでききますか?」和兎は小声で尋ねた。
「もちろん、もう準備してあるよ。」マスターは軽く頷くと、後ろの扉を開けた。「どうぞ」
和兎は扉の向こうに進み、プライベートな部屋に入ると、すでにまどかが座っていた。彼女は髪をくるくると指に巻きつけて、合図通りの仕草を見せていた。隣には、少し落ち着きのない様子できいが待っていた。
「遅かったね、先生」まどかが茶目っ気たっぷりに微笑んで言った。
「少し準備が必要だっただけだ」和兎は静かに返し、きいの隣に座った。「それで、ここで何を話すつもりなんだ?」
まどかは周りを見回し、少し前のめりになった。「さて、本題に入るわ。あの問題用紙の件なんだけど、どうやらあれは単なる妨害工作の一部みたいよ」
「単なる妨害工作…?」きいが怪訝そうな顔をした。
「そう、もっと大きな狙いがあるってこと。私の調べでは、テストの問題を盗むつもりじゃなくて、先生たちに心理的なプレッシャーを与えることが目的だったみたい。」
「どういうことだ?」和兎は眉をひそめた。
「簡単に言えば、あんたたちを混乱させて、焦らせるための手段ってわけ。実際、これまでの行動も、どこかしら計画的に思わせるけど、少しずつ綻びが見えてきたわ」
まどかの言葉に、和兎は再び思考を巡らせた。「つまり、彼らの目的は僕たちを精神的に追い詰めること?」
「そうよ。」まどかは頷いた。「倉庫の事件や生徒への脅迫も、すべてあんたたちを疑心暗鬼にさせて、誤った判断をさせるための一連の動きよ。彼らは、先生たちの冷静さを失わせることが最終的な狙いなの」
きいは口を開いた。「じゃあ、私たちが焦れば焦るほど、相手の思う壺ってこと?」
「その通り。」まどかは真剣な表情で答えた。「でも、気をつけて。これからもっと大きな動きがあるはず。今までの行動は、あくまで準備段階にすぎないわ。次に仕掛けてくるのが本番」
「分かった。ありがとう、まどか。」和兎は感謝の意を込めて頭を下げた。「今後の行動について、慎重に進めていこう」
「うん、私もできる限りの情報を集めて、また報告するわ。」まどかは笑みを浮かべながら言ったが、その目には緊張の色が浮かんでいた。
和兎、きい、そしてまどかは、これから仕掛けられるであろう次の一手に備え、緊張感を持ってその夜を終えた。




