梅雨
彼女を見つけたのは、今から2年前の夏、もう直ぐ梅雨も開ける7月下旬
某出会い系サイトで顔画像未登録の「いちご」を見つけた。
都内の医療系大学に通う18歳です。
JR西◯橋で会える方連絡下さい。
うちは少しポッチャリしてます。
それでも良ければよろしくお願いします。
このプロフに興味を持ったのは、年齢でも女子大生でもない。
「少しポッチャリしてます」と自分で言い切ってしまうところ…
いちごの…いちごと名乗る女の子の素直さに興味を惹きつけられた。
出会い系で「割り切り」を目的にしている女の子のプロフは2種類
一つは、顔画像…そこそこ可愛いくて、フォロワー数の少ないIGからの拾い画…は完璧で、自分を売り込むプロフには男のツボを刺激する言葉を並べているタイプ
もう一つは、顔画像なし、プロフには年齢と「◯◯で会える人募集」、、それ以上でも以下でもないタイプ
前者は「業者もしくは玄人」、後者は「素人」と判断していた。
その「素人」の中でも、自虐ネタを仕込んでいるのは「いちご」だけだった。
(どうせ遊ぶなら素人だな。プロなら風俗に行けばいい)
そんな訳で「いちごちゃん」とのやり取りが始まった。
『 こんにちは初めまして!千葉住みの“まさ“って言います。興味があってメールしました。よければ返事下さい。 』…こんな出会い系での常套句を送ると、、、
『 まささんこんにちわメールありがとうございます。興味があるって会ってくれるってことですか? 』…と直ぐ返事が返ってきた。
(返信早いな…これプロか?だったら遠慮しまーっす!)と内心呟きながら、、、
『 もちろん会うつもりだよ。場所はJR西◯橋でいいのかな? 』…とメールを返す。
今度は先程より時間が掛かったが、、、
『 はい、JR西◯橋でお願いします。それともう一つお願いあるんですけどホ別ゴムあり1.5でお願いしていいですか?それとお金はホテルに入る前にもらいたいです 』………
え?…1.5って本気で言ってるの?この子売りの相場知ってる?
出会い系サイトを使うのは初めてじゃない、大体の相場は分かってるつもりでいた。
10代・20代を自称する子…どんな子でも…の相場は「ホ別ゴムあり2〜4万」
年齢が上がる程条件は下がる…俺の知る限りこの条件は「俺と同世代」
もしくは、、、あやしい
(まぁ、遠目で見て怪しかったらバックれるか)そんなことを考えながら、、、
『 条件は構わないよ。今日これから会える? 』…とメールを打つ。
時計を見ると、午後12時を少し回っていた。
今度は返信が来るまで時間が掛かった…と言っても10分程度だが
『 ごめんなさい今日は無理なんです。午後の授業受けないと単位ヤバくて、、 』
(これは程の良いお断りか…1.5はブラフで、男が条件上げるの待ってたのか…この子、頭キレるわ!)と感心しながら、、、
『 分かった、都合が合わないならバイバイだね 』…そうメールを打ち込んでると、、
『 平日で空いてる日ありますか?日にち合わせます 』…俺のお断りメールより早く、いちごからのお誘いメールが着信した。
今までの出会い系では、一旦「あや」が付いた相手とはやり取りしなかったが、この「いちご」だけは例外だった。
『 平日で空いてる日、今度の金曜になるけど構わない?一週間後だよ 』
『 平気です。でも午前中でも良いですか?毎週金曜の午後はダメなんです、、 』
『 いいよ、毎週金曜は休みだし、何時に待ち合わせする? 』
『 9時でお願いします 』
(9時って早くね!?それに一週間後だろ、こりゃダメだな)
『 9時か、、了解です。それじゃ来週金曜9時にJR西◯橋改札前で待ち合わせよ 』
『 ありがとうございます、よろしくお願いします、絶対会ってくれますよね? 』
『 心配性だね、、約束は守りますよ 』
『 前に顔見て拒否られたこともあるし、やり逃げされたこともあるんで心配なんです 』
(はぁ、、今度は同情を引いてますか)…少しイラついてしまい、、、
『 ここは信用してもらわないと事は進まないよね 』…と送信する
顔も知らない素性もわからない出会い系サイトの相手に気を使うなんて馬鹿げている
ふと時間が気になり時計に目をやると、もう直ぐ午後1時になろうとしていた。
『 そうですよね、金曜日よろしくお願いします 』
『 またメールするから、じゃぁ 』
『 はい、うちもメールします 』
これで終わりだろ…そう思っていたが、この日の夜、いちごからメールが来た。
(コイツ、完全にポイント稼ぎのサクラじゃん!まぁ…いいか、ポイント切れるまで付き合お)
ポイントの残数から送信できるメールを数えると、、、5通
『 夜遅くすいません、寝てましたか 』
『 いや起きてたよ、それよりごめんね、メールするとか言っといて 』
『 心配性なんです、ドタキャンとか本当ムリなんで、、 』
『 正直言って信用するなんて無理よね、何されるか分かんないし、でも条件はお互い様でしょ、俺だって怖いし不安だよ 』
『 そうですよね、お互い不安ですよね 』
(しおらしいねぇ、、、騙されないけどwww)
『 ねえ提案だけど…サイトだとポイントでお金が掛かるんだよね。女の子は無料なんだろうけど、それにサイトだと着信に気付かないから、LINEとかの連絡先教えてくれない? 』
サクラや業者は連絡先の交換なんて絶対にしないだろ
『 連絡先の交換は、まず会ってあなたのことが信用できたら教えるね 』
『 サクラ決定!お仕事お疲れ様です!!これからも頑張ってカモ探して下さい!!! 』
こんなやり取りを期待して待っていた。
しばらくすると、、、
『 カカオでよければ平気です、名前もいちごです 』…と、メールと共に黄色いQRコードが送られて来た。
(あれ?教えちゃうの?俺カカオやってないけど、、、しかし心配性ってわりには無用心よね)
『 ありがとう、早速カカオしてみるよ。じゃぁ!また後で 』
送られてきたQRコードを読み取ると、絵文字の「いちご」が出てきた
早速、メッセージを送る、、、
『 こんばんは、まさです。 』
『 こんばんわ、いちごです 』
『 カカオ教えてくれてありがと、これで連絡取りやすくなったね 』
『 うちもこっちの方がいいです 』
『 いちごちゃんって呼べばいい? 』
『 いちごでいいですよ 』
『 じゃ俺のことは、まさで 』
他愛もない会話から始めた…探り探りの…会話だが、気が付けば時計の針は日をとっくに跨いでいた
『 いちごは明日大学ないの? 』
『 朝からあるよ、まささんは? 』
『 俺も仕事だよ、お互い朝早いね 』
『 学校いくのめんどくさい、、でも行かなかきゃ 』
『 そうだね、単位取れないとヤバイからね 』
『 うん、、 』
『 もう遅いからバイバイだね 』
『 うん、、また連絡していい? 』
『 いいよ、じゃぁまた明日ね 』
『 うん、、また明日ね 』
「いちご」とのカカオは毎日続いた
昼はゼミの合間に、夜はバイト帰りに、夜は寝る前に…
馬鹿げている…出会い系の女のメールを気にするなんて
アホらしい…割り切り女相手に何時間も話し込むなんて
してやられてる…いいカモになってるだけ
寂しかった、誰かと話したかった、誰かとの繋がりを感じたかった
そう、寂しだけ…話し相手が欲しい時に、女を抱きたい時に、偶然彼女に出会った…だけのこと
「いちご」とのやり取りが楽しいと感じる度に、そう思う事にした
会う日の深夜、いつもの様にカカオをしていると…
『 あぁ、、緊張してきた、ほんとに会ってくれる? 』
『 ここまで話し込んでるのに会わないなんてないよ 』
『 うち、、本当でブスなの、、 』
『 でブスかどうかは会って判断するよ、それにポッチャリは好きだよ 』
『 会ってから無理ってならない? 』
『 そこまで言われると心配になってくるね、、、 』
『 、、、、、 』
『 ねぇ無理ならいいけど、雰囲気が分かる画像見せてくれる? 』
しばらくすると、電車の座席に座る女の子の画像が送られて来た
髪をザックリと三つ編みに束ね、フリルの付いた白いオフショルワンピ、小さなショルダーバックを膝に抱えている女の子
(ここに来て「拾い画」を送って来ても意味ないし、この子は「いちご」本人だよな…)
(このアングルと距離は、自撮りじゃ無理よね…誰が撮ったんだ…)
(加工しているとは言え、でブス…少なくてもブスじゃないよね…)
(それにしても若くね…)
送られて来た画像を見ながら、いろいろ考えていると…
『 どう?でブスでしょ?! 』
『 でブスじゃないよね、可愛いじゃん会うのが楽しみになった 』
『 雰囲気だからね!実際会ってみてガッカリしないで、、 』
『 雰囲気だけで十分よ、ありがとう 』
『 まささん、待ち合わせ9時にJR西◯橋の改札前でいいよね? 』
『 いいよ 』
『 うちめっちゃ緊張してると思うけどよろしくお願いします 』
『 こちらこそよろしくね、じゃぁ、9時にJR西◯橋で会おうね 』
『 はい! 』
『 じゃぁ、おやすみ 』
『 おやすみなさい 』
この6時間後「いちご」に会うことになる




