第9話
いつも読んでいただきありがとうございます。
遅くなってしまい申し訳有りません。
明日の日曜日も投稿する予定です。
「卵が孵りそう」
ユートにこの言葉により
ローレンス家のリビングには
いつもの4人組とユートの双子の兄妹の
シリウスとシャルロット、
マリアお姉ちゃん、エリザさん、
お父さん、お母さんが集まっていた。
視線の先にはヒビが入った卵。
パリパリ音を立てて
なかのものが出てこようとしている。
皆、無言で卵を見つめる。
そして、ついに生まれた。
頭に卵の殻を乗せて
顔だけひょっこり卵から出した。
周りにいる人間の姿にビクッと驚いた後、
何かを探してキョロキョロと辺りを見回す。
「か、かわいい」
マリアお姉ちゃんが感動に震えている。
特に尻尾が。
そして、その大きく丸い黒目にユートを
写しとても嬉しそうに駆け寄ろうとして、
盛大に転んだ。
その拍子に頭の殻が取れる。
「ムキュー」
ウルウルとした目で見つめる幼いドラゴン。
しかし、卵から首だけででいる状態なので
何処か可笑しさが漂う。
「ぷっ!」
その姿に思わず吹き出したマルコ。
マルコ方を見た、ルーチェは
ムッとした表情を向けた。
笑われたことに抗議したようだ。
ユートはとりあえずルーチェを殻から出して
抱き上げる。すると「キュルキュル」と
甘えた鳴き声を立てながら顔を
胸に擦り付けて甘えてきた。
「ユート君と同じ銀色なんだ」
うっとりとドラゴンを見つめるアルマ。
「ね、ね。私にも抱っこさせて〜」
目をキラキラさせてそう言うクロエ。
いつもはクールだが、可愛いものに
目が無いようでだ。
ルーチェの体を覆う鱗は母親と同じ
銀色に輝いていた。目の色は母親と異なり
黒曜石のような黒なのでこれは
父親の瞳を受け継いだのだろう。
ユートはルーチェをクロエに渡す。
ルーチェは一瞬不安そうにユートを見たが
ユートが大丈夫だよ、と頭を撫でると
おとなしくクロエの腕に収まった。
クロエの頬がデレッと緩んでいる。
ルーチェの方も初めは恐る恐る
といった感じだったが、
やがて、クロエにも顔を
擦り付けて甘え始めた。
この時クロエの顔はこれ以上無いほど
緩みまくっていた。
「あら、ルーチェちゃんは女の子なのね」
「え、お母さん、何でわかったの?」
「頭に角が付いてい無いでしょ。
角が付いてい無いのはメスだけなの」
「へー、そうなんだ。初めて知った。」
お母さん、博識である。
「クロエおねーちゃん、シャルもだっこする〜」
「ぼくも、ぼくもだっこする!」
我慢しきれなくなったのか双子の兄妹の
シリウスとシャルロットがクロエに強請る。
上目づかいに2人に見つめられ
まだ、ルーチェを愛でていたいクロエが固まる。
結局3人で一緒に可愛がることにしたようだ。
そこにお父さんが肉を持って便乗した。
いつの間に肉を用意したんだ。
さっきまで持っていなかったよね?
というか、お父さんが可愛いもの好きって初めて知った。
あ、お母さんも便乗した。
あ、アルマとマリアお姉ちゃんも
って全員混じってるし。
くそう、僕だけ乗り遅れた。
(卵託されたの僕なんですけどー)
僕は心の中でそう叫びながらみんなのところに行く。
ルーチェはキュルキュル鳴き声を立てながら
とても楽しそうだ。
ルーチェのお母さんは自分の子供が
幸せに暮らせるか心配していたけれど、
この様子を見たらきっと安心してくれるだろう。
その後、みんなに構われて疲れたルーチェは
卵を置いていた毛布の上で丸くなって
幸せそうにスヤスヤと眠ってしまった。
かくして、ローレンス家に家族が増えた。
次から新章です。
最初から閑話ですが伏線があります。
読んでいただければ幸いです。