7ポイント目「薬草とハチミツとクマさん」
ギルドを出てから採取場所の森に向かうため、門に寄ったところで先ほどの門番さん達が
「 早速仕事かな?無理だけはしないで頑張って!! 」
と、声をかけてくれた。
門番さんの温かい言葉を聞きながらロボと二人でグレンブルから歩いて1時間位の場所にある”ミィカーシャの森”の中まできていた。
”種類は問わず薬草を10本集めてくること”だったので時間はさほどかからないだろう、流石はFランクできればいいかな程度の戦力扱いなのだろう・・・悲しいかな。
「 まっ、地道にやりますか。おっ、早速発見ーん 」
森の近くの岩場を見ると岩に苔が付いている。
〇 レト苔・・・単体では使えないが他の成分を増強する効果の薬液が抽出できる。
ナイフで1部分を削り取るとアイテムボックスに収納する。
他に何かないかしばらく歩くとスマホ位のサイズの蜂を発見した。
ちょっと考え近くに倒木や途中で折れてしまった木を探した。ロボの嗅覚も頼りにし甘いハチミツの匂いをたどってもらった。
20分くらい探し回った結果ついに途中から折れてしまった木の中に蜂の巣を見つけた・・・が他の客とも目があった・・・ドウモ、クマサン。
そこにいたのは熊のような体躯で前脚が異様に太く耳も知っている丸っこい耳でなく犬耳のように先が尖っている動物だった。
「 クソッ・・・ロボ!!フォロー頼むぞ!! 」
「 了解です、マスター!! 」
ナイフを握り戦闘態勢をとりつつ後退していく俺とロボ、熊(仮)はこちらに気を向けつつも蜂の巣が気になるらしい。
走らずじっくりじっくり後退していく、緊張が走りつつも徐々に距離が開いていく。
十分距離が開いたところで熊(仮)が蜂の巣を襲いだした。
熊に群れる蜂を片手に見つつ近くに落ちている手頃な石を集めていく。
さらに倒木をアイテムボックスに入れ解体して材木を棒状に圧力をかけていく。
同様に先程集めた石とアイテムボックスの中の石を圧力をかけていく。
そうして出来たものを組み合わせて鉄並みの硬度を持つ石を矢尻に備えた”硬石の矢”を作り出していく。
蜂に攻撃されてもハチミツのために巣を攻撃し続ける熊・・・熊にとっては麻薬に近いものなのだろうか・・・ハチミツ依存症・・・怖い。
さてと、準備も出来たことですし行動に出ますか・・・
アイテムボックスからガラス瓶を取り出し矢尻に瓶の中身を塗布してく。
「 さて、クマ退治と行きますか!! 」
ロボの俺への信頼の眼差しを受けつつ弦を引き絞り矢を解き放つ!!
熊に見事に命中するものの刺さっている矢の長さを見るにそこまで深く刺さってないようだ・・・当然の事ながら熊がこちらに気づきこちらにダッシュで走ってこようとしている!!
瓶に矢の先端を漬け、矢をつがえ弦を引き絞る・・・そして解き放つ!!
吸い込まれるように熊の右肩へ突き刺さるそれでも速度を落とさず走ってくる熊・・・果敢にロボが前に出る。
「 ハウリングヴォイス!! 」
「 グゴォォォォォォ!! 」
”威圧の声”を使い、熊の脚を止めさせるが熊も自身の叫びで動きを取り戻そうとあがいている・・・
「 グッ・・ゴォッ・・・ゴォォ・・・ 」
「 よし!!やっと効いてきたか 」
先ほど放った矢に塗布されていたのは「あの蜘蛛」の牙から採取した「毒」だった。
蜘蛛の牙には神経毒等がある。大抵のプロセスは巣を作りそこにかかった獲物へ消化液(毒)の注入し溶けた体液を吸い出すといったことがあるがそれ以外の巣を作らない蜘蛛の場合2種類以上の毒を持ち神経毒(麻痺毒)等をうち動けなくなったところを捕食するといった行為が見られる。
あの蜘蛛の場合も巣を作っておらず”捕縛系”のスキルも使ってこなかったので巣を作るタイプの蜘蛛ではないということだ。
あの戦いの次の日、先程の事を思い出しならばと思い牙を確認してみたところ解体スキルを使った際、脚と甲殻と眼以外で牙が2種類に分かれたのだ・・・森で過ごした1週間の間に獲物相手に2種類の牙を使ったところ細い方の牙は刺した後、口から血を流し倒れた。もうひとつの太い方の牙は獲物がヒクヒクと痙攣し始めたのだった。
こうした経験の元、瓶に溜めた麻痺毒を矢に塗り熊相手に使ったのだった。
「 さてと・・・とよいしょっ!! 」
動けなくてピクンピクンしている熊の喉元より下の位置をナイフで捌いた。
血抜きをしている間にアイテムボックスへとそこらじゅうに落ちている枯葉と枝を集め先程まで熊が貪ろうとしていた蜂の巣の威嚇されないギリギリの近くに枝を置きその上に大量の枯葉をのせ火をつけた。
火が回りきったところで更に別の葉っぱを投入し、モクモクと茶色の混じった煙が立ちのぼり始めた。
「 そぉれっと!! 」
アイテムボックスの中から制服の上着を取り出し煙を巣に送っていく。
十分な時間、燻した後で木のすぐ近くでも焚き火を焚き煙を常に出し続ける。
蜂の動きが鈍ってきたところで蜂の巣に手をかけアイテムボックスに収納したあとで熊の元に戻り熊もアイテムボックスへ収納した。
「 さてとっ・・・寄り道したからちゃっちゃと終わらせて帰りますか 」
「 ふぁい、マフファー(はい、マスター) 」
俺がアイテムボックスから取り出したカブトムシの幼虫くらいのサイズの蜂の子を堪能しつつロボが答える。
その後は特に問題もなく薬草以外にも色々と採取し出発してから5時間ほどでグレンブルに戻ってきた。
門番さんのあたたかい出迎えを受け探検者ギルドに戻っていく。
「 おかえりなさい、薬草は見つかりましたか? 」
「 ただいまです、確認お願いできますか? 」
アイテムボックスから薬草を10本出したところで周りがざわついたが気にせず受付のお姉さんに薬草を渡した。
「 レメントに・・・スイテン・・・はい、確かに。納品完了ですね。 」
「 よかった・・・薬草だとは思いましたが確証がなかったもので・・・ 」
「 うふふふ!!はい、報酬の大銅貨1枚よ。けどびっくりだわ、”アイテムボックス”のスキルを持ってるなんて!! 」
「 ははははっ、数少ない取り柄の一つですよ!! 」
内心やっぱりアイテムボックスのスキル持ちは少ないのかと実感した。
テーブルに座っている人たちの視線がアツい・・・やめてください僕はノーマルなんです・・・
それよりもクエストは完了したので買取りカウンターに行き受付の男の職員さんに
「 すいません買い取り希望なんですがいいですか? 」
と聞くと
「 はい、でわ買い取り希望の物をお出ししていただいていいですか? 」
と左手に手持ちのボードと右手に筆記具を持ちながら男の職員さんに嫌にならない程度の事務口調で言われた。
「 物がでかいんですがいいですか? 」
「 はい、隣の大きいテーブルにおだしいただけますか? 」
「 はい、でわ 」
”ドンッ”という音と共にアイテムボックスから熊をだして、しばらくするとびっくりした男の職員さんが
「 か・・・買い取り希望はう・・・”ウルフベア”でい・・・いぃいですか? 」
と言うとギルドの中が喧騒に巻き込まれた。
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