第1話 苺の香水
苺王国。
ストロベリアの街。
街の全員がイチゴ好き。イチゴを毎日、食べている。
イチゴ消費量の多い街。
ここでは、水の精霊ウンディーネが、イチゴを作っている。
これは、イチゴを売る、買う、食べる人々の物語。
ストロベリアの農林大臣グランドリーは、イチゴ商人ラズの上客だ。
ラズは、街の上流階級に白イチゴを売る。
イチゴ商人。
ラズ・リーベ。20歳。
紫色のミディアムヘアのカッコいい男の人。
それを見守るメイド。
コアン・マーチ。16歳。
紺色のショート髪の女の娘である。
白い洋館で、主人ラズと、メイドのコアンが暮らしている。
その中庭では、甘くて白い、品種改良した白イチゴを育てている。
白イチゴは、“白リッチ”と呼ばれている。
白リッチを作っているのは、水の精霊ウンディーネのミーズだ。
第1話 苺の香水
ストロベリアの街。白い洋館。
「ただいま帰ったよ」
イチゴ商人ラズが、帰ってきた。
スラリとした体つきで、カッコいい。
カッコいい人…。
「おかえりなさい。ラズさま」
コアンは、出迎えた。
「お土産は、木彫りのイチゴだよ」
「わあ、可愛いです」
メイドのコアンは、ラズに夢中。
ラズは…。
「おい。カバン持ってくれないかい」
冷たい目線で、見下してくる。
カッコいい男の人の見下す視線。
コアンは、ゆっくりと近づく。
「おカバン。お持ちします」
「持ってくれよ。落とすなよ」
手に持つカバンを、押し付けてくる。
受け取る。軽い。
これくらい、自分で持っていいんじゃないか。
「あ」
コアンは、油断して、カバンを落としてしまう。
これは、やばい。
お仕置き、確定だ。
夜。
白い洋館。中庭。
「今日も、失敗したの?」
白イチゴ栽培の水精霊ミーズが聞く。
「お持ちのカバンを落としてしまいました」
コアンは、おどおどとしている。
コツコツ。コツコツ。
靴音を響かせて、洋館の主人。ラズがやって来る。
手には、教鞭。
「失敗したね。コアン」
ラズは、教鞭をもてあそびながら、見下ろしてくる。
「は、はい」
「敬語じゃなくてもいいよ」
「え、でも…」
「今日、失敗したよね」
ラズは、笑顔だ。
「お仕置きは、“痛い”のと、“気持ちいい”のと、どっちがいい?」
笑顔だ。
痛いのは、嫌だ。
気持ちいい方が、良い。
「気持ちいい方が良いよね」
コツコツ。
だきっ。
歩み寄って、抱きしめられる。
隣のミーズがニヤリと笑っている。
ラズが、メイドのコアンを抱きしめている。
イチゴ商人のラズから、イチゴの香水の香りがする。
イチゴに包まれている気分だ。
「こ、困ります。ラズさま」
「幼なじみじゃんか。もっと仲良くしようよ」
ぎゅ。
ラズは、抱きしめるのに、力を加える。
「困ります」
「いいじゃん」
何でこうなったのか。
ラズは、コアンのことが大好きなのだ。
気ままなイチゴ商人のラズは、奥手なメイドのコアンとイチャイチャしたくて、お仕置きを考えた。
教鞭でビシッとバシッとでは、嫌われる。
だから、『だきっ』と、『ぎゅ』としてあげるのだ。
甘くて甘い、イチゴ味が、理想的な関係なのである。




