10 エピローグ
日本がその体制が保てなくなった終末世界でも、自衛隊の方々は大変優秀であった。
霧島司令官率いる本隊が大型ビーム駆逐された後も、僅かばかりの残存勢力で再編し、
臨時司令官を立て、自衛隊は、作戦を継続する。
臨時司令官は霧島とは違い、縄文寺本部長とも密に連絡を取り、核弾頭の衝撃も荒廃ビル群を盾にして
回避し、阿熊達の制御が利かなくなった後は無事港までたどり着いて展開して何年も放置されていた
対空システム群を無事復旧。
それを察知した進行中の大陸軍もそれを察知し引き返していったと連絡が入った。
天空城作戦は城を始めとした大切な物や者を幾つもを失ったものの、一応の成功を収めたのである。
それから、一か月が過ぎた。
「まあ、当然ちゃ当然よな」
「当たり前でしょ!あなた本来なら死刑100回か永劫地下豪行よ」
早朝6時。なぜか外はまた久しぶりの青空を垣間見せていた。
ここは急造された旧医療センター、現・第五地方自治体連合自警団の仮設本部。
作戦で大破したガンツアー・ガンバスは改修・改造され、今、隊長の辰と縄文寺の前で朝日を浴びている。
「本土から離れた島送りとはなぁ。あそこはここなんかとは比べ物にならんのやろ?
凶暴化した阿熊に加え、人間すら大半ヤクザの大殺界・・・まさに”島流しだな”」
辰は指を弄りながらぼやく。
「核兵器の独断使用がそれで済んだのは奇跡よ。ちなみにこの仮設本部でもはやあなた伝説になってるからね」
縄文寺はため息をつきながら端末を手渡すと、辰は車両受領のサインをした。
「さあ、じゃあ行くかな」
「行くって、あの子たちは見送りに来ないの?」
縄文寺は心配そうな顔をしながら言った。
「ああ、言ってないんだ。湿っぽいの嫌いだし、三人とも怪我が完治していない。
それにどうせ通信で連絡はいつでも取れるやろ?」
「そうだけど・・・それに希望とはいえ本当にAIと”二人”で出発するつもり?補充要員は島の基地で合流よ、
それまで大丈夫なの?」
「いいんだ、長らくあいつと一緒に回してきたし。暫くはアイと”二人”で旅をするのも悪くない」
「そう・・・」
言い終えると二人は俯き、暫く沈黙が流れた。
「縄文寺・・あの・・・」
「わかってる、あの三人の事は任せなさい。あなたにとって家族同然なのでしょう?」
それを聞くと顔を上げ辰は笑顔で言った。
「ありがとう、よろしく頼む」
「行ってらっしゃい。絶対生きて帰りなさいよ!」
「了解。それでは、第五地方自治体連合自警団第五小隊ガンツアー、出向命令を受けてこれより出発いたします!」
「辰隊長!ご武運をー--」
そして開いていたハッチからガンバスのリーダー席に腰かけた。
「アイ、出発しよう。スマンな、暫くはオッサン一人だけだが」
苦笑いしながら言う辰にAIのアイが機嫌よく答える。
”了解です、辰隊長。私はあなたを全力でサポートします、何でも言ってください”
「いつも頼りになるのはお前だよ、よろしく頼む」
そして、ガンバスは静寂な朝に特異なエンジン音のうなりを上げ、走り出した。
「・・・・・・・」
車内は静かだった。
一人になるというのは、こんなにも静寂だったのかと久しぶりに痛感していた。
暫く俯いて、静寂に身を任せて、物思いにふけっていた。
ふいに。
”辰さん、モニターを”
「えっ」
アイが辰に呼びかける。ふと、前方操舵席にあるモニターを見ると
ホバーバイクから降りて手を振るミサとルイ、
後部席で静かに手を振るまだ包帯の取れないイルの姿があった。
条件反射でハッチ解放のスイッチを押し、ハッチを開く。
「アイ、速度徐行にしてくれ!!」
ガンバスは速度を落として徐行運転になる。
イルが張り裂けんばかりの声で。
「死なないでよ、オッサン!」
ルイが全力で手を振りながら。
「辰おじさん!頑張れよ!俺ら待っとるからな!」
ミサは駆け足でバスに歩み寄り。
「ずっと待ってるからね。絶対帰って来てよ!」
辰もこみ上げる涙を必死に我慢し。
「ルイ!イル!ミサ!頑張れよ、何かあったらすぐに連絡しろ!直ぐに行くからな!
忘れるな!お前らはずっと”第5小隊”ガンツアーだ!」
辰はそう言い放つともうハッチから離れて操縦席に逃げるように飛び込んだ。
三人は過ぎ去るガンバスをずっと見送った。
そして。
「頼んだぞ―――!」
姿が見えなくなるまえ、そんな声が三人から遠くに聞こえた。
(ガンバスを頼んだぞか・・・そうだな、お前らにとってここは家みたいなもんだからな。
スマン、三人とも。俺は、お前らにまた会うために絶対帰ってくるからな!)
辰は、強く、そう心に決めた。
「感動的だよな、涙が出るぜ!なぁ、喜美江ちゃん?」
何時入れたのか、コーヒーすすりながら本部で武器管理をしていたレイ・ストーンズが
うんうんとうなりながら感心している。
「うーん、なんか時代錯誤のような気がします。現に直ぐにこうやって連絡取れるし」
喜美江はオペレータ席のコンソールを操作すると見送った三人の”やれやれ”と
いってめんどくさそうに帰ってゆく顔を拝んでいた。
辰は目が点になった。
今ここは、ガンツアーのガンバス車内である。
「・・・・・・・・・・はいぃぃ?!なんで?!てか、今までどこにいた?!何でここにいる?!」
それを聞いてレイが即答する。
「一つ、貴重な新造ガンバスをオッサン一人に任せるなんて言語道断という本部長判断のため。
一つ、サプライズで二人で飛び出そうとしたがあんまりにもいじけている為、出るに出れなかった。
一つ、今から改めて自己紹介しよう!」
レイはガンオペレータ席に座ると、意気揚々に辰に敬礼した。
「第五地方自治体連合自警団レイ・ストーンズ、本日付で第5小隊ガンツアーに
ガンオペレータ及びコーヒー要員として転属となりました!
よろしくお願いいたします」
「同じく大森喜美江。第5小隊のオペレータ及び”ロリっ子”要員です、よろしゅう。オッサン嬉しい?」
軽く敬礼する喜美江。
唖然とする辰に、レイは言った。
「あの、”オバハン”がオッサン一人に任せる訳ないでしょうに」
辰は目を覆って思わず天を見上げた。
「アイ・・・お前知ってたのか?」
”知ってました、というより、車内の様子などAIには一目瞭然です”
「だよな・・・あのオバハン、騙しやがって・・・」
そうつぶやくと辰はリーダー席に腰かけ、少し考える。
「ああ、そうか、だからあいつら・・・”頼んだぞー”か。・・・・・・はははは・・・・ふざけんなよ!」
そう辰が叫ぶと二人ははしゃぐように笑った。
「ああ、もういい。アイ、少し寝るからまた着きそうになったら起こせ」
辰はそういって次の目的地までまたふて寝するのである。
――――――今日は、新たな門出には絶好の青空が澄み渡っていた。




