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クレプトフィリア②

シャドウバース楽しすぎて他のアプリに手が回らない

 「佐藤さん、実は私服装を変えたんですよね。似合ってますか?」


 エリが歩いている俺の前に来て今の服装の感想を求めてきた。今のエリの服装は、朱色のワンピースの上に腰ほどの長さの黒色のポンチョを着ていた。本人いわくワンピースで隠れている部分では短パンを履いているらしく、脚にガーターベルトをつけたことにより少しばかり保護されているらしい。


 「とても似合ってるな、前より今の方が俺は好きだぞ、けどカチューシャは外したんだな」


 最初に出会った日から寝るときと風呂に入るとき以外つけていたカチューシャをつけておらず、代わりにショルダーバックを肩に引っ掛けていた。ちなみにカチューシャにつけてた超重力水はカチューシャと一緒にカバンの中にあるらしい。


 「うん、元々前髪が長かったからつけてただけで、今は切ったからもうつけなくてもいいかなって思ってね」

 「確かにそれもそうだな」


 そこで会話のネタが尽き、話は途切れて終わってしまった。そしてその後黙々と歩いていると遂にクールが口を開いた。


 「なぁお前ら、ファッションの話をするのは悪いとは言わない。けどそういう話は後ろの奴をどうかしてからにしたらどうだ」


 エリは目を反らす。俺は深くため息をついた後、後ろを嫌々ながらゆっくりと向いた。


 「…………」


 そこにいたのは、一昨日財布を盗んで俺たちに捕まえられた盗み好きの彼女だった。

 

 

 街から逃げ出した後、彼女は一定の距離で離れてるもののずっとこちらを見つめながら後ろについてきている。昨日の夜中の寝ているときにも視線を感じすぎてあまり眠れなかった。


 「さぁそろそろ考えるぞ、あの女を如何にして追い払うかをな」


 俺達は寄る予定のなかった小さな町に寄り、旅人向けのログハウスに無許可で利用して休んでいた。ちなみに彼女は窓から見えるところで木の上からやはり一定の距離で離れてこちらを見ている。

 

 「まずは俺達の後ろをついてくる原因を調べる必要があるな」


 何故彼女が俺たちについてきてるのかを知り、その原因を取り除けばきっと諦めてくれるはずだ。 


 「クールさんが喉をあんなにベタベタと触ったからじゃないの」


 確かにあの時のクール何処か変態チックな感じがしていた。診断のためとはいえ見知らぬ男にいきなり喉を触られるのは嫌な気分だろう。 


 「そんなことで追ってくるか~? 俺的には佐藤が何回もあの女に向かって殺すか? 殺すか? とか言ってたからじゃないかと思うんだけどな」

 「それだけで追ってくるわけないだろ。第一それが原因なら俺は弱いから昨日の夜中にさっさと殺されてたんじゃないのか」

 「確かにそうだな、見張りをしていたとはいえあいつ気配も感じなければ足音とか全くしないからな」


 俺も違う、クールも違うとくれば後は一人だけ。俺とクールはエリに視線を向けた。 


 「……え? 私!?」

 「そういえばお前、あいつと風呂入ったりしてたよな」

 「彼女の服装が違うのもエリの仕業か」


 この中で一番彼女に関わっていたのはエリだった。きっとその関わっている時に何かやってしまったのだろう。


 「何もしてないからね! お風呂だって普通に入っただけだし、服装だってちゃんとしたの選んだし!」


 お風呂の事は知らないが、彼女の服装はアオザイと呼ばれるチャイナ服に似た物だった。確かに普通の人だったらあれはちゃんとしたものだろう、だが。


 「彼女は盗賊、武器をしまう場所が少ない服はあまり好まないのではないか」


 アオザイは彼女が前に来ていた服と比べ、ナイフをしまえる場所は無い。だからアオザイのひらひらの内側の腰にベルトをつけて、そこにシースナイフを右腰と左腰に装着している。


 「髪型も別のが良かったりしてな」


 あのぼさぼさだった髪も今ではポニーテールになっている。だが髪は切っていないのか腰より少し下のところにまで髪が伸びている。


 「いやいや、あれは自分で選んだ服だし、髪型もこれでいいって言ったら頷いてくれたし」

 「それならあれか? お風呂で何かやらかしたか?」

 「知ってると思うが、女性同士でもセクハラは成立するからな」

 「そんなことをしてないからね!」


 凄く怪しいな……だが実際こちらがそう思ってないだけで相手からしたらセクハラだったなんて事は山ほどある、今回もそれにあたるかもしれないな。


 「風呂でどんなことしたか教えろよ、もしかしたらお前は思ってないだけでセクハラになりそうなことあるかも知れないし」

 「お風呂場でやったことって言っても、頭洗ったりして体も洗ったりした後に一緒にお風呂に入っただけだよ」


 特にこれと言ったことはないな……ますますついてくる理由が分からなくなってきたぞ。これじゃあずっと後ろについてくるんじゃないか?


 「で、どうするよ? このまま後ろについてこられるのは嫌なんだが」

 「そうだよなぁ……」


 彼女をどうしようか考えていると、外から何かが落ちる音と大きな声が聞こえた。俺達は一旦考えるのをやめ、窓から外の様子を見た。すると彼女の足に矢が刺さっており、更に5人の男女に囲まれていた。格好からみて冒険者だろう。


 「とうとう追い込んだぞ! この泥棒が!」


 どうやら彼女を捕らえにきたようだ。俺は見たことはないが、きっと指名手配でもされていたのだろう。


 「これで当分の金には困りませんね兄貴!」


 少し小柄で坊主な男が隣の男と一緒にはしゃいでいる。


 「全くだぜヤス! これでうまい飯を食えるな!」


 髪が赤く上半身をさらけ出している筋肉隆々の男、兄貴が大笑いする。


 「ねぇねぇ、久しぶりに高い宿に泊まりましょうよ! 高い宿に!」


 胸が異様にデカイ格好からして魔法使いな女が兄貴の腕に胸を押し付けながら媚びる。


 「久しぶりにぐっすり眠れそうですね~」


 これまた無駄に胸がでかく、格好からして僧侶な女は眠たげに呟いた。


 「あぁ……」


 他とは違いはしゃがないで彼女の方をみている男は、弓と矢を持っていた。どうやら彼女に一撃をいれたのは彼だろう。

 彼女は立ち上がってナイフを取り兄貴に飛びかかろうとしたが、突然倒れこんでしまった。


 「馬鹿か! 俺達がお前にただの矢を撃ち込むわけないだろ」

 「その矢には体が麻痺させる薬を塗り込んだっす! 当分は動けないでやんすよ!」


 兄貴とヤスが大笑いする。実際彼女は何度も体を起き上がらせようとしているが、やはり力が入らないのかうまく動けてない。


 「……」

 「どうしたロア! 随分静かじゃないか! いつものことだけどな!」


 弓矢を持っていた男、ロアはゆっくりと彼女に近づいていき彼女の前でしゃがんだ。


 「なぁ、この女今晩だけ預かっても良いか?」

 「ははぁ、なるほどそういうことだな! 良いんじゃないか! その泥棒はどんな状態でも良いとか書いてたからな!」

  

 それを聞いたロアは、彼女を軽々と担ぎあげた。そして兄貴達はそれぞれ危機とした足取りで帰ろうとしていた。


 「…………」


 彼女は体に毒が回りきったのか殆ど動けなくなっていた。しかし最後の力を振り絞り俺達がいたログハウスの方に視線を向けた。だがそこには既に誰もいなかった。何故誰もいないのか、それは。


 「兄貴とか言うのを美味しくいただくためだ!」


 地面の中からエリを背負ったクールが飛びでてきて兄貴に木の槍を頭に突き刺した。即死だったのだろう。兄貴はもがくこともなく一瞬の内に倒れこんだ。


 「あ、兄貴! よくも」


 続いてヤスの胴体が切り裂かれた。兄貴と違い即死ではなかったヤスは、気味の悪い呻き声をだした後に顔を歪めながら生き絶えた。


 「よくやったエリ! 他の奴等もついでに皆殺しだ!」

 「そうだね! 早く殺して大量の血を流してもらいましょう!」


 エリとクールが立て続けに僧侶と魔法使いを有無を言わさず殺していく。


 「くっ、この女の仲間か、こいつがどうなっても」

 ロアが彼女を盾にしようとした瞬間に、こっそりと背後に近づいていた俺が自分で作った木のこん棒で後頭部を殴り付けた。嫌な感触だ。


 「がっ」


 殴られたロアは気絶してしまいそのまま地面に倒れた。死なない程度にはしたはずだからきっと気絶しているはず。後頭部から血が出てきちゃってるけど死んでない死んでない。どうせ遅かれ早かれクールに殺されるのだから今は死んでないということにしよう。


 「いや~久しぶりに良い感じの肉が手に入ったな、最高の気分だぜ!!」

 「私も久しぶりの血飛沫に興奮しまくり!!」

 「あいつ等は全く……まぁいいか、おいお前大丈夫か?」


 俺はロアの下敷きになってしまった彼女を引っ張りだし顔を覗きこんだ。完璧に毒が回っているらしく、見事に呆けきった表情になっている。目からは涙が溢れていて鼻水は出まくり、口が閉じれないため唾液もだらだらと出ていて正直汚い。


 「お前が何を考えてこんなことしてるのか分からないが、こういう目に会いたくないなら二度と後をつけるなよ、俺達は勇者を殺すために旅してるのだからな」


 取り合えず俺は彼女を持ち上げ、持ち、上げ……れない。以外に重たかったので興奮ぎみに肉を解体しているクールに何とかお願いしてログハウスにつれていき、そこでクールは解体の続きをしていてエリはそれの手伝いをしていた。どうせクール達は朝方まで腸の洗浄や何やらで朝まで起きてるだろうし見張りはいなくても良いだろう。そう思った俺はさっさと眠らせてもらうことにした。

 


 「昨日の解体は楽しかったなエリ、久しぶりの充実感があったってもんよ」

 「そうだね、けど流石に徹夜はきつかったな~」


 クールとエリが死んだ魚の様な目をしながら歩いている。勿論俺も同じ目をしながら歩いている。そんなことをつゆ知らずに堂々元気よく俺達の前を歩く奴がいた。そう、彼女だ。


 「俺達の後をついてきたら危険な目に会うとは言った、確かに俺は言った。けどまさか前に来るなんて思わなかった」

 「足の傷治さなかった方が良かったんじゃない?」

 「もうさ、追い払うの面倒だしあいつは俺達の仲間ってことで良いんじゃないか?」


 俺とエリは首を力なく縦に振った。もうそれで良いよ、それで。


 「となると名前が必要だな、おい、とかお前、じゃコミュニケーションが取りにくいしな」


 名前か、そういえば喋ったり書いたりできないから名前も知らなかったな。何て名前にするか……


 「ハオルシア、あの娘の名前はハオルシアにしましょう」

 「賛成だ」

 「佐藤に同じく、なら俺が伝えてくるよ」


 クールが彼女、ハオルシアを呼び止め説明をしている。彼女の表情をみる限りどうやら了承したようだ。


 「ところでエリ、どうしてハオルシアなんだ」

 「私の今はなきペット第一号の犬の名前、丁度毛が白かったから」

 「ペットの名前かよハオルシア、可愛そうだなハオルシア」


 こうしてハオルシアは俺達の仲間に加わったのであった。加わったというより無理矢理参加してきたのだった。


 

  

 

 

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