魔法対決って言われても…はい、やります。
体調不良が続いております…
さてと。
三下くんから魔法対決と言われたけど、何をしたら良いのかな?
ちなみに彼の名前を覚える気は無い。
「この練習場は上級魔法をどれだけ当てても耐えられる構造です。結界内では生命維持を優先としているので、怪我をしても回復するようになってますが……」
その男性教師の申し訳なさそうな顔に、俺はアンニュイスマイルを送ってやる。
「まぁ、彼だけのようですからね。次回はこのような事が無いようにしてくださいね」
「は、はは、はひ!」
真っ赤になった教師に、ちょっと不安になりつつも練習場に向かう。オルが音もなく背後に立つ。
「一応聞くが大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だよ。ギュンターも暴走しないように」
「……はい」
さっきからギュンターの周りの風が強い。ちなみにセシリアは餅のように頬を膨らましている。マイコは念入りに止めといたから、俺の影で相変わらず真っ赤な顔になってる。
すり鉢状で闘技場のような造りの練習場は、だいたいテニスコート4つ分の広さがある。中に入ると結界を通る独特な感覚がある。まぁこれを感じるのは俺とオルくらいだろうけどね。
三下くんは真ん中で仁王立ちしている。客席には不安そうな顔をしたクラスメイトたちがいて、大丈夫だよと手を振ると歓声が上がった。
「チッ……そうやってられるのも今のうちだ。おい!早く始めろ!」
「用意は良いですか?」
「いつでもどうぞ」
「では、魔法対決。どちらかが降参するか意識を失ったら終了です。」
三下くんは魔法を出すために何かを唱えているようだ。フライングだぞ。
それを見た教師が慌てて合図を出す。おいおい。
「始め!」
途端に彼の手から炎が出た。『炎の槍』ってヤツだ。
俺はバックステップで距離をとり氷の魔法を展開する。呪文の詠唱とか必要ないけど、一応言ってる感じを装う。
「何!?」
三下くんが慌てる。俺の魔法で炎の槍が音もなく消えたように見えたんだろう。
実際は氷の魔法プラス風の魔法で音と空気を遮断させ、温度差で生じた爆発音も消したんだけどね。
本当は空間魔法で酸素無くしてやるのが楽なんだけど、俺の公開しているのが属性魔法だったから、面倒だけど氷と風の魔法で対応したって訳だ。
「くそ!燃え上がれ燃え上がれ燃え上がれ炎!」
俺は危うく吹き出しそうになる。どこのロボアニメだよ!!三下くんもしや天才か!?
あ、影でマイコが遠慮なく笑ってる。ずるい。
「炎よ!走れ!」
ぶっはー!!ダメだ俺!!無理!!
土魔法で自分の周囲に二メートルほどの壁を作り、吹き出したのを隠した。危なかった。
もちろんただの土じゃない。炎の槍が壁に触れたと同時に、それを一気に土が包んで炎を消してしまう。
「くそ!!」
「もうやめた方が良いと思うよ。君は火の属性魔法の使い手みたいだけど、僕は全属性の魔法を使えるのだから、君が勝つのは難しいよ」
「うるさい!!」
俺はため息をつき、三下くんが再び炎を出そうとする手を氷魔法で凍らせる。
「うわあああ!!」
その氷がじわじわ肩に上がっていくように調節すれば、怯えた彼はそのままフラリと倒れてしまう。
俺の体もぐらりと傾ぐと、いつの間にかギュンターとオルに支えられる。
もちろん俺のは演技だ。
ワッと歓声が上がる。クラスメイトたちに弱々しく手を挙げると、数人の女生徒がタオルを持ってきてくれた。もしかすると例の親衛隊?
「クラウス様、お身体は大丈夫ですか?」
代表らしき緑の髪の女の子がタオルをそっと渡してくれる。
「ありがとう。情けないところを見せたね」
「そんな……っ!!」
弱々しく微笑むと、彼女は真っ赤になって首を振る。そんなに振ったら脳が揺れるぞー。
おや?
「このタオルいい匂いだね。ハーブかな?それとも君の匂い?」
クンクンしてたら、緑の髪の子が「ふぁ…」と言ってよろけて、後ろの女生徒達に支えられている。え?なに?どうした?
痛い。マイコがつねってくる。地味に痛い。
「お前……えげつないな」
「クラウス様、さすがにそれは……」
ええ!?なんだよ!!
セシリアはさっきよりも頬が膨らんでるし。
腑に落ちないまま、三下くんの魔法を解いて元に戻し、凍傷っぽくなってたのは医務室で治すとのことだったので、俺はさっさと寮に戻ることにした。
それにしても、俺は腑に落ちない。
くそう、覚えてろよ!!
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