竜族は繋がりを求めます。
毎度不定期でスミマセン。
「それはどういう事ですかな」
父様の脇に控えた宰相(ギュンターの父)が、青い竜族の青年に声をかける。
白い壮年の男は黙ったまま。赤い竜族の青年はよく見ると邪竜戦の時に会った男だった。
青い竜族の男は答えようと口を開こうとした時に、彼の視線を俺に向けさせた。竜族には分かるだろう、一瞬の威圧。俺の後ろに立つオルにも分かったみたいで「なかなかだ」と呟いた。
俺の影にいるだろう、マイコに伝言を頼む。
彼は頷いて口を開く。
「第三王子殿下クラウス様の護衛をされていた、『邪竜殺し』オルフェウス・ガードナー殿に礼を言いたく参上仕った次第。家臣の誉れは主の誉れ。クラウス王子殿下にお会いし、礼を言うのは当然かと」
頭を下げる竜族三名。
溜めていた息をゆっくり吐く。危なかった。
俺はまだ病弱でいる必要がある。赤いヤツは俺が戦える事を知ってる。だから下手なことを言わないように、マイコに影から警告を与えるよう指示した。
たぶん竜族の長は俺のやるべき事を知っているのかもしれない。後で話を聞こう。
それにしても青いのは頭の回転が早いな。
「そしてもう一つ。今回の我が竜族より生まれし邪竜は、魔族が絡んでいると思われる。これは我らだけの問題ではないと思い、中心国であるエルトーデに先ず報告をとの、長の考えである」
「竜族の方々よ、再び邪竜が生まれることは?」
「天の摂理により、魔族が蔓延り、邪気が蔓延して五十年は必要。邪気を祓っておけば年数も延びる」
「それは何よりですな。オルフェウス・ガードナー。大儀であった」
宰相は高らかにオルの名を叫ぶ。オルは一歩前に出て一礼し、一歩下がった。うん、無難な対応だ。
それからは外交の話になって、竜族の歓迎の夜会まで城の俺の部屋で待機となった。
「広い部屋だなー、さすが王子様」
「やめてよオル、とりあえず茶でも入れる?」
「おう」
音もなくマイコが茶器を持ってきて、備え付けのテーブルに準備していた。さすが俺の嫁。あ、赤くなった。
一年も離れてないのに、自分の部屋が懐かしく感じる。
「魔族……か」
オルは窓の外から見える王都を遠い目で見ながらつぶやく。
俺はそんなオルを見ながら、頭の中を整理していく。
「竜族の中に『先見の能力』を持つ者がいるんだろうな。ワイバーン討伐の時も僕に会おうとしていたくらいだから、魔王の出現も見えていると思う」
「なぜそれを謁見の時に言わなかったんだ?」
「魔王の出現条件とか時期がハッキリしない…とか、『先見の能力』を隠しているとか。そのあたりじゃないかな。知られれば能力者は各国から狙われる」
「ああ、そうか。そうだな」
予知や予見は世界を動かす。当たっても当たらなくても前世でナントカダムスとか、色々あったからな。混乱させて国の情勢を不安定にさせることだけでも、かなり厄介だと思う。
「クラウス様、竜族の方がこちらに来ようとしているようです」
「目立つと厄介だな。魔法使うって伝えてくれる?」
「はい」
マイコが影になって伝えているのが感じられる。了解を得ると同時に空間魔法を展開し竜族をこの部屋に通す。転移ではなく空間を歪めるのが俺の移動法だ。
さっきとは違い、白い壮年の長らしき男が前に進み出る。
「まずは、同胞を邪から解放していただき感謝する」
「オルの働きですよ」
「オルフェウス殿を風で上げた従者殿、土魔法で壁を作り周りに影響がいかないようにした影の方、怪我をした者達の手当に神官殿とその御子、何よりもその全員に的確な指示を与え、全てを見通すその力……」
長は俺をまっすぐに見た。
「我らは貴方を……貴方様こそが世界の理を見通す方とし、世の平定の為に尽力する所存!」
うん。
なんか大変なことになってきた。
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