基礎練習
詳しく則夫から話を聞いてみると、次の就職先は既に決まっているらしく、働き出すまでの間暇になったということだったらしい。
「なんだビックリした。一族からホームレスが出るかと思った」
「流石にそれはないだろ」
隣で聞いていた鏡也が笑いながらその話を聞き流している。
「そだな! うちの伯父さん40代で独身でアパートに一人暮らしなんだけど大丈夫だよね!」
「え? マジで?」
思っていたよりも海生の伯父、則夫の状況は芳しくなかった。不憫な奴に思えて憐みの視線を向ける鏡也。そうこうしているうちに則夫が練習着に着替え終えて練習が始まろうとしていた。
「で、どんな練習をするの叔父さん」
則夫から直接レスリングを教えてもらったことがない海生はどんな練習をするのか見当もつかない。
「き・そ・れ・ん」
則夫はくねくねと気持ち悪い動きをしながら練習内容を告げた。
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「はぁっ はあっ」
基礎練習をやるといった則夫は道場から出てすぐにあるグラウンドの隅っこを借りて短距離走を延々とさせ始めた。
海生を含めたほかの部員総勢、完全に息が上がってしまっている。
「はーいこれが終わったら道場の中で練習するから頑張ってー」
30分間ずっと短距離走を休みなくさせられていた海生達。全力疾走を要求されていたため、それを実践しているとかなり疲れる。
二人一組になって則夫の手を叩く合図で走り出す。一周してもとの位置に戻ってきたらまた手を叩く合図で走り出す。
鏡也だけは少し余裕があるようで、海生を煽っていた。
「どうした海生もう終わりか? スタミナが足りないぜ」
元サッカー部の鏡也はスタミナには自信があるようだ。試合になればずっと走り続けるスポーツだ。かなり走りこんだのだろう。
「くっそ……ブランクある癖になんでそんなに走れるんだよ」
「俺走るのだけは部活辞めても続けてたもーん」
彼女作りだけにかまけていたわけではないようだった。負けじと海生も走りに力が入る。
「彼女がいるお前には絶対に負けない。絶対にだ!」
なんだか良くわからない闘志が湧いてきているようで、海生は全力で走り続けた。




