友の入部
次の週の練習で鏡也と帆億は入部した。顧問の上地は思いがけない入部者に顔の表情が綻んでいた。
「良く来たね。大歓迎だよ」
いつものヤクザスマイルを見せる上地。その表情を見て固まる鏡也。帆億は思いのほかビビることなく堂々としている。
「特に君、君の体格はレスリングでは貴重でね。期待してるよ」
帆億の肩をポンと叩き至近距離ヤクザスマイルを見せる上地。
「ありがとうございます。期待に答えられるように頑張ります」
ヤクザスマイルを至近距離で見ても動じずに答える帆億。案外肝が据わっているのかもしれない。
紹介が終わり、さっそく基礎の練習にとりかかろうとするが、その前にトイレに行ってくるということで帆億は鏡也を連れてトイレに小走りでかけていった。
「帆億お前さ、練習前にもトイレ行かなかった?」
「うん。行ったけどさっきちょっとだけ漏らした」
上地にビビってないわけではなかった。
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海生は練習で、この前の大会の後に彰に言われたことを実践しようとしていた。
「まだレスリングを始めてそんなにたってないって事でしょうがないんだけど、まだ海生は技、技に入るときのパターンが少ないんだ」
彰の説明としてはまず使える技の種類が少ない。海生は投げ技を中心に練習していた。タックルも練習していなかったわけではないが、実は少しタックルの方が苦手なのだ。
「沖縄は競技人口が少ないから同じ相手と何度も戦うことになる。当然手のうちはほぼ知られちゃうと思っていい。だから手の内を全部知られた上で勝たなきゃいけないんだ」
まぁこれは競技を続けてればどのスポーツでも遅かれ早かれ普通に出てくる問題なんだけどと補足を加えられた。
要は沖縄でのレスリングではそのペースが速いのだ。
だから今出来る技の完成度をあげつつ、実践で使える技のバリエーションを増やそうというのだ。
実は海生は覚えたい技があった。この前の試合で見た飛行機投げという技。
組み合った際に左手で相手の腕をつかんだまま懐に滑り込みつつ右手を相手の右足に絡ませ相手の体制を崩させ、そのまま後ろに転がすという技だ。
技の入り方は片足タックルに似ているが、この技を試合で見たときになんとなく気にいったのだ。
そしてこの技の魅力は技に入った後に左手を離さず上に覆いかぶさることで、フォールに持ち込めることにある。




