そして次へ
今回の大会の全日程が終了し、バスで帰る部員達。蓋を開けてみると、団体戦は通天高校が優勝。個人戦は幸隆は三位、海生は二位という順位だった。レスリングの競技人口が少ない沖縄では、県で三位と二位ということになるわけだ。
「これで県三位とかちょっと表紙抜けだな」
「うん…… 俺なんて二回しか勝ってないのに二位だし」
隣り合った席に座った幸隆と海生。二人はそこで話をしていた。
「とっとと県で一位になって全国に行こうぜ海生」
「うん」
バスは部員達を乗せ、通天高校へと向かった。
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通天高校に到着し、ミーティングを終えて帰り支度をする中、海生と幸隆が上地に声をかけた。
「スミマセン先生、少しだけ練習して帰ってもいいですか?」
自分の車に乗り込もうとしていた上地は面食らって一瞬考え込むような仕草を見せるが、すぐにいいよと返事をくれた。
道場の鍵をあけ、練習を始める海生と幸隆。
「いいんですか? 試合が終わったばかりで体を休めた方がいいと思うんですけど」
まだ残っていたマネージャーの美優が上地に話しかける。
「少しくらい大丈夫さ。それに悔しいときはこうでもしないと気持ちがおさまらないだろうからね」
「そういうもんなんですね」
納得した美優は練習をする二人を見守っていた。
すると優香が二人に駆け寄ってゆく。
「お二人さん! 私がマッサージしてあげようか!」
「海生にしてもらうからいいです」
「幸隆にしてもらうからいいです」
「なにぃ!? 女の先輩からのマッサージを断るだとぉ!? あっでも二人でやるならそれはそれで良いかも!」
その光景を見て上地と美優は笑っていた。
練習を始める幸隆と海生。
海生は今日の試合のことを思い出していた。
試合に勝って嬉しかった。試合に負けて悔しかった。
もうレスリングを好きになっているのは間違いないだろう。
人生で無駄なことはないなんて言うつもりはない。無駄になったことだってきっとある。
でも、それでも感じたこと。
バレーボールを続けてきた経験は、自分の中で、生きている。