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フリースタイル  作者: カブリネコ
過去の後悔をふりきって
44/71

決着

 距離を取った後はまた彰から勝負を仕掛けてきた。今度は正面からのタックルだ。警戒していた海生は両腕で彰を押しのけタックルに入るのを阻止し、それ以上点を取られるのは防げた。


 だが点差を付けられているのは変わらない。こちらから動きを起こさないと時間切れ。ポイント負けで1ラウンド目の試合が終了してしまう。現在開始から一分を過ぎたところだ。

 バックを取られて一点、ローリング一回につき二点加点され、合計六点。あと四点取られてしまっても、合計十点となりテクニカルフォールで1ラウンド目の負けが確定してしまう。


 ふーっと息を吐き少し考える海生。一本背負いに入るのが早かった…そう指摘された。ふとバレーボールでも同じようなことがあった事を思い出す。


 相手からのサーブを受けるとき、オーバーハンドパス(オデコの前で両手のてのひらを上に向けてとるパス)と、アンダーハンドパス(ヒジを伸ばして、両腕で作った面でボールを受けるパス)のどちらで受けるかでうまく取れるかどうかが決まったのだ。この判断をあやまるとうまくボールが飛んでいかない。


 どこにでも手を出せる中間の位置で腕を構えておく。十分ひきつけて、どこに落ちるか分かった時点でどちらのパスで取るか決定するのだ。


 十分ひきつける。この点がレスリングでも共通している点ではないかと思えた。ひきつけるためにはどうすれば良いか。技への対処が遅れてしまうと、それだけで致命的な遅れになってしまう可能性もある。それでも、このまま戦っていれば負けは確定してしまう。海生は覚悟を決める。


 海生から彰に近づき組み合おうとした。その瞬間彰が正面タックルに入る。海生はその正面から受け止める。今の自分では彰のスピードについていけない。彰が技に入る前に技を仕掛けるのはかなり難しかった。それならば受け止めてしまえということた。そして彰のタックルは海生の右足を左手でとらえていた。


 だが次の瞬間、ぐるんと彰の体が回転した。

 海生が彰に首投げを仕掛けたのだ。少し無理な体制から強引な首投げ。それでもその首投げは決まるかと思われた。


 タンっという音と共に、投げられたはずの彰の足はマットの上に立っていた。投げられる寸前に自分から地面をけり勢いをつけ、投げられた直後に着地していたのだ。


 仰向けに着地した状態から海生の首と脇から腕を通してクラッチを組み、体を半回転させた。たまらず耐え切れずにマットに沈む海生。


 そこから抑え込まれ、フォール。

 試合は彰の勝利で幕を閉じた。

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