試合開始
いよいよ団体戦が始まる。
初戦は50kg級の匠。匠は背が低い割にかなり筋肉質で、減量の際は苦労したようだ。脂肪よりも筋肉の方が基本的には重いので、体脂肪率を限界まで減らすしかなかったのだ。
「ふう……大会まで地獄だったよ。でも……ここで負けたら意味がないからな」
飢餓状態で目が獲物を狙う肉食獣のようになっている匠。対する相手の生徒は二年生だろうか? 匠に比べると一回り小さい体にそれと反比例するように手足が長めに感じられて、ひょろっとした感じだ。
「そんな怖い目でこっち見るな。やーただでさえ苦手な相手だばぁよ」
※(お前ただでさえ苦手な相手なんだよ)
方言が少し出ている話し方だった。
ちなみに沖縄でも地方によって訛りが激しかったり少なかったりする。
海生たちの地域は訛りが少ない方だ。
言葉を交わす二人は顔見知りらしい。競技人口が少なく、一年以上レスリングをしているのであれば何度も大会で当たる事があるのだろう。
審判がマットの中心で合図をし、二人共手をあげ、白いハンカチをユニフォームの襟の方から中に入れる。
「優香先輩アレは何の意味があるんですか?」
ハンカチを入れる行為の意味が分からず優香に尋ねる海生。すると優香は少し戸惑ったように答える。
「え、えっとね……なんというかその……」
もじもじしながらはっきりしない様子の優香。優香にしては珍しい反応に首をかしげる海生。
「男の子の股間が大きくてもっこりしたりするじゃん? アレを見立たないようにするために股間に持ってくるためのハンカチ……かな?」
「えっと……優香それは違うよ?」
隣で聞いていた上地が言葉を挟んだ。
「アレはもともとケガした時に、すぐにハンカチで抑えるために入れるようになったものなんだ。
今は流血してもハンカチで手当てすることは無いんだけど、その名残だね」
「え! そうなんですか!?」
間違いを指摘されて顔を真赤にする優香。普段少し変態的な様子を見ている海生は、こういう場面では普通に恥ずかしがるんだなという感想を抱いた。
「ごめん優香。知ってたけど面白かったからあえて言わなかった」
「みーゆーーーーーっ!!」
優香と美優が掛け合いをするうちに、試合の開始を告げるベルがなった。




