後日の学校にて
「お前ら尋常じゃないくらい気持ち悪かったぜ?」
次の日での学校で鏡也に会った際にそう言われた。どうやら昨日のグランドの練習を通りがかった際に見ていたらしい。
「お前らホント尋常じゃないくらい気持ち悪かったぜ?」
「わかったから二回も言うな。俺らだって嫌だよ……先輩の好きな曲流すのが基本で逆らえないんだよ」
「お前ら男同士で寝技しながらラブソングとかホント気持ち悪かったぜ?」
「わかってるって言ってるだろこの野郎っ!」
いつもの調子で取っ組み合いを始める海生と鏡也。昨日の練習を見ていた者がクラスにも何人かいるらしく、その事情を知っている者たちが苦笑いや薄ら笑いを浮かべてこちらを見ていた。
「あぁ……あの曲のせいで大会近いのにグラウンドの練習に集中できなかったよ」
「へぇ大会近いんだ? いつだ見にいってやるよ?」
珍しいことに鏡也も見に来たいらしい。鏡也が部活の試合を見に来るなど今までなかった。
「珍しいな人の試合観に来るなんて。お前そういうの興味ないと思ってた」
「いや何かお前見てたら実際試合見てみたくなっちゃってさ。乳首出てる服着るんだろ?」
そういえばあの誤解を鏡也の前で解いていなかった。実際に言ったのは自分であるだけに何もいうことは出来ない。
「いやあの服は昔だけだったらしいんだ。冷やかしなら来るなよ?」
「そなんか。でもただ純粋な興味で見に行くだけだよ。友達も連れていくからさ」
「お前俺意外に友達いたんだな」
再び取っ組み合いを始める鏡也と海生。だがその取っ組み合いももはや慣れたもので、海生は覚えたレスリングの技を使って鏡也を簡単に組み伏せる。
「てめっ汚ねぇぞレスリングの技を使うなんて!」
「ふっレスリングをバカにしたお前が悪いんだ鏡也。取っ組み合いの喧嘩ならレスリングの右に出るものなんていないっ」
そこに次の授業の教室に向かうのであろう上地が運悪く通りがかった。
「海生素人相手に何してるの?」
素早く教室に入ってきた上地。はたから見たらヤクザが教室に乗り込んで来たように見える。
鏡也に技をかけていた海生は慌てて迎撃体制に入ろうとするが、あっけなく上地に捕まり技をかけられてしまう。動きが素早く技も完成形に近いであろう上地に手も足も出ない。
「レスリングが上達してるのは良いことだけど、素人相手に調子乗ったらいけないなぁ」
技をかけながらいう上地に反論する海生。
「素人に毛が生えた程度の俺に本気で技をかけるのはどうなんです先生!」
「海生、男は毛が生えたらもう立派な大人なんだよ」
「そういう話じゃないと思います先生」
技をかけられ続けた海生はそのままガクッと力なく落ちた。
それを見ていた鏡也は満足気に、ねぇ今どんな気持ち? と海生を覗き込みながら声をかけていた。