D-side 05
/D-Side.
大きな変化があった。
いつもの様に歩いた荒野の先で、俺は不思議な光景を見つけた。そこにあったのは廃墟。それはもうとって付けた様な廃墟が突然そこにあった。
「何だこれ?」
「廃墟」
勿論俺の背後には興味なさげなひよこ。横目で見たが、どうやら今は蟻の行列に夢中な様だ。相変わらずの意味不明ップリにちょっと安心。そして、その廃墟以外は全て何もない荒野が続いている。
「調べろって事か?」
「……さぁ?」
こんなあからさまな変化は初めてなので、流石に俺も戸惑った。しかし、RPGとかであれば、これはこの廃墟を調べないと先に進めない的なイベントの筈だ。記憶もないのに何でRPGとか解るのかは俺自身にも謎だが、今は気にしない。ひよこの言を借りるなら、俺は忘れているだけなので、何かのきっかけで思い出すこともあるらしい。と言うより、その『記憶の奪還』こそが恐らく俺の急務である筈なので、この廃墟の登場は、その『記憶』への足掛かりになるかも知れないのだ。調べない訳には行かないだろう。
ふと、頭痛と共に、頭の隅を何かが過ぎった。
「俺は……この場所を知っている?」
「………」
ひよこは何も言わない。
つまり、
「そうなんだな……」
「………」
沈黙はそのまま、俺の質問への肯定に同義だった。どうでもいい独り言や質問には、ひよこは律儀に対応するくせに、俺の根幹に関する質問……こと記憶に関する質問には、深く言及しないのだ。コイツがだんまりを決める時は、大抵それが記憶の取っ掛かりになる事が多い。
気がする。
「俺は、この場所を知っている」
そう意識すると、廃墟にしか見えなかったこの場所の見え方が変わってくる。見覚えがある気がしてくる。
「ここは?」
「………」
ひよこは何も言わない。
もしや居なくなってしまったのではと思って振り返ると、ひよこはその口をきつく結んで、じっと地面を見つめていた。泣きそうな顔で、でも、かすかに嬉しそうな顔で。
「調べよう。きっと何かがある筈だ」
「はい」
俺とひよこは、その廃墟の中に歩みを進めて行った。その先に何かがある事を信じて。
足元が不安定な場所も多かったので、
「ほれ」
「はい?」
「手、こけると危ないだろ?」
「っ!?」
差し出した手に、おずおずと自分の手を載せたひよこは、
「えへへ……」
照れ臭そうに笑いやがった。
「っ!?」
その顔が反則的に可愛くて、俺は胸のドキドキを悟られまいと、必死に別の事を考えて誤魔化そうとするのだった。
ここは何なんだろう? ここは何処なんだろう? コイツは誰なんだろう?
考えようと思えば、それこそ疑問は山程だ。でも、その中でも一番の謎は……
俺は誰なのか?
と言う疑問だった。
そして、視界が暗転した。




