D-side 04
/D-Side.
「……ん?」
再び荒野。
何だろうか、今何かを思い出した気がしたのに。
「むぅ、どうして思い出せないんだろうな」
「何を?」
「おお、居たのか」
独り言のつもりで呟いた言葉に反応があって驚いたが、振り返ればそこには少女が居た。
「な、何をしてるんだ?」
しかし、ちょっとなんと言うか変わったポーズでダンスをしていた。いや、ダンスじゃないのか? えーと、あの木の実を取ろうとしてるのか?
「え? 何が?」
「いや、お前は何をしてるんだって聞いてるんだが」
「これ、食べれるかな? って思って」
「そうだな、食べられるかも知れないが、お前のジャンプ力じゃ一生かかっても手が届かないだろうよ……」
「そんなっ! 事っ! ないっ!!」
彼女のジャンプの最高到達点から更に一メートル近く高い位置の果物を必死に取ろうとピョコタンピョコタン跳ね回っている少女。最初不思議な踊りをしている様に見えたが、結論から言って、不思議な行動には違いなかった。
俺が棒を取って来て、何とかその果物を取ってやると、嬉しそうにかぶりついてから苦しそうに吐き出した。
「うえぇ……不味い」
「まぁ、見るからに不健康そうだもんな」
「うぅ……」
オレンジとパープルの縞模様の木の実を見て食べれるかもと思ったこいつは大丈夫だろうか? なんにせよ、本当にこいつは何をしたいんだか……
口を濯ぎたいとと言うので、水場を探してそこに腰掛けて休憩をしていると随分前の俺の独り言を今更拾って話しかけてきた。そうか、こいつ天然なんだな。うん。
「何を思い出せないの?」
「夢、だよ」
「夢?」
少女では味気ないと思って何度か名前を聞いてみたが『教えられない』の一点張りだったので、仕方が無いから『ひよこ』と俺は呼ぶ事にした。本人は自覚が無いので返事をする事は無いのだが……これからはそう呼んでみようと思う。
「ああ、寝て見る方のな……目覚めると、その大半を思い出すことが難しくなるだろ?」
俺は多分夢を見ていた筈なのだ。それも、何か大事な『記憶』に関する夢だ。だと言うのに、大事だと分かっているのに、俺はその内容を思い出せない。思い出せるのは『大事な内容だった筈だ』と言う漠然としたイメージだけだ。
「どうして忘れちまうのかな……思い出せないのかな。そう思ってさ」
見渡す荒野に変化は無い。……いや、在るのかも知れない。細かく見れば確かに変化していた。何もないのは変わらないが、何と言うか、植物や木々、空を舞う鳥達、そう言うものを俺は『自然』何て言ってしまうが、そういう『自然』が少しずつ増えている様に思う。暖かさは更に増していて、春から初夏へ移り変わっている様だった。
「そう感じるなら、貴方は取り戻し始めてる」
「取り戻し始めてる?」
「そう」
「何を?」
「それは……」
「「教えられません」」
「だろ?」
「っ!?」
何となく、彼女の言う事が予想出来た。驚く彼女の顔を見て、俺は思わずしてやったりと笑うのだ。その笑顔にひよこは顔を赤らめてそっぽを向いた。その姿が何故だろうか、どうしようもなく愛しくて、
「な、なに?」
「悪い、暫くこのままで居させてくれ」
俺は、ひよこを抱きしめていた。
「別に……いいけど」
「そっか、悪い」
この胸に渦巻く感情が、どう言うものなのか分からない。けど、これも大切な何かなのだと思う。いつも通り確証はない。
「ん?」
その時気付いた。
「そう言えば」
「な、なに?」
俺の腕の中でむずがゆそうにもぞもぞ動くひよこを見下ろして、
「ここに来て、初めて歩いてないな」
「はぁ?」
そんな言葉を口にした。
そこで、
「そんな事……」
視界が暗転した。




