No.1 プロローグ
六月二十八日。
四時間目と五時間目の昼休み。
森野圭太は暇を持て余していた。
「暇だ・・・」
圭太がぼやくのを聞くと、
「お前が早く食べるのが悪いんだよ。」
外間洋介が口で割り箸を割りながら言った。
場所はフェンスに囲まれた屋上。(入るのは禁止されている)
すぐ傍には大きなケヤキの樹が伸びており、みーんみーんと蝉のオーケストラが聞こえる。
「蝉の鳴き声って聞いてるだけで暑くなるよな」
圭太が蝉の鳴き声にうんざりした様子で洋介に聞くと、
「それ、俺も思ってた」
と、口にご飯を含みながら答えた。
「・・・口に物入れながら喋ったらいけないんだぜ」
圭太はからかい半分で言ってみる。
「セン公みたいな事言うなよ。聞いてるだけで食欲が失せる」
「それもそうだな。」
「それより剛はどうした?」
「あ、剛ならさっき鬼原に連れて行かれてたぞ。
多分生徒指導室だと思うけど・・・」
鬼原というのは体育の教師で、
自分の気に入らないことがあるとすぐに暴力を振るう。
特に剛は常にケンカ腰なので、よく揉め事になる。
洋介は少し顔色を変えて、
「マジかよ・・・剛の奴、今度は何やらかしたんだ?」
「さぁ・・・鬼原の目が吊りあがってなかったから
そんなに心配してないけど・・・」
「だったらいいんだけどな。
あ、じゃあ俺達がここに居るの知らないんじゃ・・・」
洋介がそこまで言いかけた時、後ろでドアの開く音がした。
「・・・屋上も中も変わんねぇな」
ドアを開けて出てきたのは噂の男。
「剛、大丈夫か?」
「鬼原に連れて行かれたんだろ?」
と二人が聞くと、
「この成績じゃ高校は諦めろってよ。」
そう言って剛は圭太の横に仰向けになった。
「何だ成績の話かよ」
と洋介は安堵のため息を漏らした。
「俺が何したと思ったんだよ?」
「何か問題を起こしたんじゃねぇかって」
「だったらすでに俺は問題児だよ。
『こんなバカな問題児は初めてだ』ってよ。ムカつくぜ」
剛がいらついているのがわかる。
「四時間目が終わったと思ったら、
急に俺の席へ来て『ちょっと来い』って言われてよ、
それで生徒指導室に連れて行かれてずっと説教。頭が割れそうだったぜ」
剛は頭を撫でている。
「セン公からしてみれば、
成績の上がらない生徒なんて、邪魔以外の何者でもないからな」
洋介が苦々しい顔で言った。
「誰かがいい高校に入るとその担任もデカい顔ができる。
その逆もまたしかりってな」
「つまり成績の上がらないバカな俺はセン公達の目の上のたんこぶって事か。
けど洋介、さすがにバカはひどいぜ」
「違う違う。勉強以外の才能があるのに、
勉強ができないってわかった時点で問題児扱いするセン公達の方がバカだって言いたいんだよ。」
「なるほど、それなら納得だ。
つか中二の夏で何でこんなに怒られなきゃいけないんだよ・・・」
剛は空に向かってため息を吐いた。
「それより、よくここに居るってわかったな」
「あ、それは俺が剛に『屋上に来い』って言って置いたからだ。
鬼原に連れて行かれる前に伝えておいたんだ」
圭太が説明すると、
「なるほど、それなら納得だ」
と、洋介は剛のマネをして仰向けになった。
圭太、洋介、剛の三人は中学二年生。
その付き合いの始まりは十年前にも遡る。
幼稚園から小学、中学と、三人が離れ離れになったことは一度もなかった。
クラスこそ別々になる時もあったが、休み時間になるといつも三人で過ごしていた。
三人で遊んだり、三人で教師にいたずらしたり、
そして今でもこうして三人で寝転がって空を仰いでいる。
隣にはもうすっかり見慣れた顔が二つ。
天井にはもうすっかり見慣れた青空が一つ。
いつまで立っても何も変わらない。
この先もずっと三人で同じ時間を過ごしていくのだろうか。
「なぁ、俺達ってずっと一緒かな」
圭太は自然に口に出していた。
「何だよいきなり」
「いや、何となく・・・」
「そりゃずっと一緒って訳にはいかないだろうさ」
洋介の言葉がひどく冷たく感じた。
圭太達も来年は受験生である。
三人が一緒の高校に入れば問題はないのだが、
洋介は偏差値の高い泉島高校を受けるらしいし、
剛は高校は行かずに働くと言っている。
もうすぐとは言わないが、
嫌でも来年の三月には離れ離れになってしまうのだ。
「寂しい事言うなよ。まだ一年以上残ってるぜ」
剛の言葉で少し気分が晴れた。
「高校で一緒になれない分、残りの中学生活満喫しなきゃな」
「満喫か・・・」
そう言ってしばらくの沈黙の後、
「・・・じゃあ俺達で何かやるか」
と、洋介が言い出した。
「何かってなんだよ?」
「この学校の伝説になるようなデカい事をやるのさ」
「マジで言ってんのか?」
「大マジ。けどお前らがやらねぇって言うんだったらやめる」
この学校に伝説を残す。
内容はわからないが、それこそ夢のような事だ。
きっと鬼原を敵に回すかもしれない。
上級生に目をつけられるかもしれない。
だが、圭太の胸は高鳴っていた。
-おもしれぇ!
「・・・やろう!巌戸中英雄伝説」
圭太は勢いよく起き上がり、思いつきの名前を言った。
「行ってくれると思ったぜ圭太!
けど何だよその名前」
洋介は笑い出した。
「思いついたのを言って見たんだけど・・・やっぱナシか?
「いや、いいと思うぜ。その名前に一票だ」
洋介が言われると何となく自分の中に自信が湧いてくる。
「さて、どうする剛?こっちは名前まで決まっちまったけど」
洋介と圭太が剛の顔を見る。
「・・・俺が嫌って言うわけねぇだろ」
そう言って剛の顔がにやついた。
この頃、圭太はまさか自分が本当に英雄になるとは思いもしなかった。
ただ、自分の中で何かが動き始めた気がしただけだった。
初投稿です;
「こんな中学生活あったら良かったなぁ・・・」という思いを
つたない文章で書き殴って見ました。
右も左もわからぬ初心者なので、
コメント、ご指導下さると幸いですww
あと、進行ペースが遅いです・・・;




